6月11日(火)
最近見た世界のニュース映像の中で、一番驚かされたのが世界最高峰エベレストの登山者渋滞映像だ。山頂へ続く険しい岩尾根に鈴なりの人が群がっており、一瞬何かのCG画像かなと思った。
昨秋カラパタールトレッキングで生のエベレストを仰ぎ見て、その神々しい威容に震えるような感動を覚えたが、この現実を見るとチョット興ざめた思いがする。
エベレストは登山家達の野望を何度も退け犠牲を強いた後に、66年程前に第7次英国登山隊のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイによって初登頂がなされた。
その頃の登山家達が、この凄まじい賑わいを見たらどんな思いがするだろうか。1975年に女性で初めて登頂した田部井淳子さんは、山頂へ続くナイフリッジ状の岩尾根を見た時、「果たしてこんな所を登れるのだろうか」と恐怖心に打ち震えたというが、今はそこにビッシリとロープが張り巡らされ、ハイシーズンの穂高や剣岳みたいに登山者が鈴なりになっている。
この登山者達はそれぞれに、一人100万円の登山料を払っているそうだ。ツアー登山の参加者は、およそ一人1千万円の参加費を支払っていると言う。この人達は世界最高峰の頂へ立つ為に生命と大金を賭けており、ある意味凄い人達だなと思う。
エベレストがこのままドンドン変わっていけば、66年後には一体どうなるんだろうか。もしかすると標高7900mのサウスコルにヘリポートとサウスコルロッジが建ち、標高8500mの中間地点と山頂には快適な山小屋が営業して、一般の登山者が気軽に登れるような時代が来るかもしれない。
だったら私のような者でも、世界最高峰へ登る事ができるかも知れない。でもそんなエベレストは幻滅だし見たくも無い。できれば初登頂時代以前の孤高のエベレストに、戻って欲しいものだと強く思います。