Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

日本三百名山回顧№119長野・富山県境、五竜岳(百名山)

2023年08月28日 | 三百名山回顧

 五竜岳は白馬岳、鹿島槍ヶ岳と共に、北アルプスの後立山連峰を代表する名峰です。東山麓の安曇野からは、五竜菱と呼ばれる岩壁を纏った勇壮な山容を眺める事ができます。

 私が五竜岳を登ったのは、昭和52年の夏に白馬岳から針ノ木岳まで縦走した時に山頂を踏んだのが最初でした。その後も昭和54年の9月、昭和60年の4月、平成20年の5月、平成22年の8月、最後は令和3年9月と、過去に何度も訪れています。

 これらの山行の中で最も印象深かったのは、昭和60年5月連休に岳友のF君と二人で歩いた、五竜岳~鹿島槍ヶ岳~爺ヶ岳の雪山縦走でした。当時の山岳会会報に私が書いた山行記録が残されていたので、概略を転記してみます。

         記

昭和60年5月3日(金)~5日(日)    メンバー= Y/F、  H/F、 男2名

5月3日(金) 快晴

08:00 テレキャビン山頂駅→ 08:40地蔵の頭→ 09:50~10:00小遠見山→ 10:15大遠見山→ 13:10五竜小屋前

5月4日(金) 快晴

05:15五竜小屋前発

06:07~25五竜岳

 

 ロープウェーに乗って、一汗も掻かずにテレキャビン山頂駅へ着いた。これから登る遠見尾根が白銀の背骨をウネウネと白岳へ突き上げているのが真っ青な空の下によく見える。

 五月連休の会山行は北アの五竜岳~鹿島槍ヶ岳となり、結局参加者は言い出しっぺの私とF君の二人だけになった。何とも淋しい限りだが健脚の彼となら互いに気をつかわずに済むし、何より残雪に輝く雄大な山々がそんな気持ちを吹き飛ばしてくれる。

 しっかりしたトレイルを辿り身体が馴染まぬまましばし急登に喘ぐと小遠見山に到着、ここから眺める鹿島槍は、北壁を正面に息を飲む迫力だ。山に来た喜びを噛みしめる。

遠見尾根、白岳直下の登り?

 遠見尾根のゆったりとした起伏を辿り五竜岳が間近になると、その東壁の各ルンゼから絶え間なく雪崩が生じ、轟音が谷間に響き渡る。白岳への長い急登を頑張ると、屋根だけ現れた五竜小屋へ到着した。テントを張り終え、まずはビールで乾杯。それから夕刻までの長い時間は雪上の日光浴としゃれこんだ。

五竜小屋テント場から望む五竜岳

 2日目、快晴。朝冷えでクラストした雪面にアイゼンがよく効いて、急な斜面を気持ちよく五竜岳へ登る。山頂へ登ると視界が広がり鹿島槍までの稜線が手に取るように見える。今冬の積雪が少なかったせいか稜線西側はほとんど地肌が露出している。・・・

五竜岳山頂直下の痩せ尾根

五竜岳山頂から鹿島槍ヶ岳

鹿島槍ヶ岳山頂から五竜岳

岳友F君と私(冷池小屋幕営地で)

・・・・・その後の記録は、次回の三百名山回顧「鹿島槍ヶ岳」で掲載します。

      

 ※平成20年の5月連休にも雪の五竜岳を登ったが、その山行記録が古いホームページに載っていたので、下記に転記してみたいと思います。

        記

平成20年5月2日(土)~3日(日)     単独

5月2日(土) 天気=晴れ 

08:35~09:00テレキャビン山頂駅→ 10:22~35小遠見山→ 10:53中遠見山→ 12:21西遠見山→13:08五竜山荘(幕営)

 連休の渋滞を覚悟していたが、AM2時半早朝出発が功を奏して花園ICで小渋滞にあった他はスンナリ走ってAM7時過ぎ、五竜遠見スキー場に着いた。山麓に殆ど雪はないが、稜線にはタップリ残雪があるようだ。運行前のテレキャビン山麓駅には登山者が約30~40名、スキーヤーはその倍以上列を作って待っている。

 8時15分運転開始で、テレキャビンに続々と客が乗り込んでいく。山頂駅に着くと慎重に装備を点検準備して出発する。地蔵ノ頭下まで、リフトに乗って行った登山者達もいるようだ。

 歩いて数分もすると額から汗が滴り落ち、雪面からの照り返しが強烈だ。今回セルロイドの中敷板を自作して、登山靴とアイゼンの間に付けている。雪の付着防止用で中々歩きやすい。ただ薄いので最後まで保つか自信はない。又、アイゼンのサイズが大き過ぎて、前後に動くのが不安だ。ガッチリ固定したから外れる事は無いと思うけれど。

小遠見山山頂

 1時間半で小遠見山到着。鹿島槍や五竜岳の展望が素晴らしい。これから進む遠見尾根が中遠見、大遠見、西遠見のピークを経て白岳に突き上げている。五竜小屋まで先は長い。

長々と続く遠見尾根と五竜岳

 だんだんと調子が出てきた。日本縦断歩き旅の成果だろうか、足の筋肉に余力がある。先行する登山者達を次々抜いて行く。中遠見山の標識は出ていたが大遠見山、西遠見山は雪に埋もれ地形で察するのみだ。登るにつれカクネ里から鹿島槍北壁の眺めがヒマラヤ峰を見るように雄大だ。

大遠見山から望む鹿島槍ヶ岳

 最後の登りは白岳経由ではなく、五竜山荘目指して山腹を横切るようにトレイルは刻まれている。「雪崩が起きないだろうか。」とヒヤヒヤしながら登った。

西遠見山から白岳への登り

 稜線のテント場に着くと、さっそくテンのト設営に掛かる。すると突然支柱がポッキリ折れてしまった。山荘の人から粘着テープを借り、1時間掛けて何とかテントを設営できたが、すっかり気落ちしてしまった。もう15年以上使った物だから寿命なのか。今夜強風が吹かないで欲しいと祈るばかりです。午後のビールは、砂漠に落ちた水のようにアッという間に飲んだ。

五竜小屋前でテント泊

5月3日(日) 天気=晴れ

05:55五竜山荘→ 06:49~07:05五竜岳→ 07:51~08:36五竜山荘→ 09:01~11西遠見山→ 09:58中遠見山→ 10:14~26小遠見山→ 11:06テレキャビン山頂駅

 時折風は吹いたが、テントは一晩持ち堪えてくれた。ラーメンだけの朝食を終えると行動食を持ち五竜岳へ出発する。登るにつれ傾斜が強くなり、トラーバスや雪壁の登りで緊張感が高まる。早朝の硬い雪面に一歩足を滑らせれば谷底へ真っ逆さまだ。

 20年以上前の5月、F君と二人鹿島槍へと縦走した時、ここはアイゼンとピッケルが効いて快適な登りだったという印象だったが、それは若さ、それとも岳友がいる心強さだったのだろうか。

五竜岳山頂直下の痩せ尾根

 ナイフリッジのピークを越えて、最初に着いたパーティと入れ替わるように誰も居ない五竜山頂へ着いた。素晴らしい展望が広がる。西は黒部川越しに剣岳から毛勝山塊へノコギリ歯のような稜線が連なり、北は唐松岳、不帰岳を経て白馬三山が望め、南は鹿島槍がキレット越しに聳え立ち、オイデオイデと誘っているように見える。いつまでも飽きない眺めだ。

五竜岳山頂

山頂から鹿島槍ヶ岳

 後続のパーティが登って来たので山頂を後にする。続々登ってくる登山者に幾度か道を譲りながら降る。テント場に着くと山頂を振り仰いでしばらく休憩する。テントの撤収を終えると下山にかかる。

 降りは快適だ。西遠見山で振り返ると白岳の大斜面を登山者達が点々とアリのように降っているのが見える。一人スキーの登山者がアレヨアレヨという間に滑り降りて来る。彼には大遠見山付近で簡単に抜かれてしまった。

 小遠見山で五竜岳と鹿島槍ヶ岳に別れを告げ、スキーヤーの舞うゲレンデを突っ切りAM11時過ぎテレキャビン山頂駅へ戻って来た。

 テントの支柱や雪付着防止の靴中敷板が壊れたりと幾つかのアクシデントもあったが、二日間好天に恵まれて、実に楽しい山行でした。下山後、白馬村「岳の湯温泉」で湯船に浸す顔が真っ黒でヒリヒリする。これが私にくれた雪山からのお土産です。

・・「五月晴れ、雪崩絶えまぬ五竜岳」・・

 

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