monologue
夜明けに向けて
 

  


京都市内の路地裏の家に住んでいた頃、夏には燕がよく飛んでいた。それは飛びかたが格好よくてわたしが大好きな鳥だった。近所の家の屋根の軒下に巣を作っているのをよく見かけた。玄関の上に隙間のあったわたしの家の中まで入ってきて天井の下の軒のあたりに巣を作って子供を育てていた。その子供たちが大きくなって巣立ってゆき翌年また帰ってきて同じところに巣を作って子供を育てた。毎年帰ってくるのが楽しみだった。あの燕達の子孫は今はどこに巣を作っているのだろうか。

   そしてロサンジェルス時代、借りていた家の裏にあった使用していない石の暖炉に名も知らない小鳥がやってきて巣を作って子供を育てた。わたしたちの存在をチラチラ警戒しながらもそれが暖炉であることは知らず丁度いい穴だと思ったらしい。その翌年やって来た次の世代にとってはその暖炉が自分達の元からの巣なのでべつにわたしたちを怖れることもなく淡々と子育てして飛び立っていった。代が替わってもやってくるのがなんだかうれしかった。みんな生物の大きなサイクルの中で生きていたのだ。人もまた…。
fumio

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