「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「柳川掘割物語」(2)

2007年07月06日 20時32分40秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/48722767.html からの続き)

 たまりかねた市議会は、何の役にも立たなくなった 中小水路を、

 全て コンクリートで埋め立てるという 計画を打ち出しました。

 上下水道のなかった 柳川に、地下水をくみ上げて 水を供給し、

 水路を埋めて コンクリートの下水道を設置する という構想です。

 住民も 環境の改善を切望し、国からの助成金も 得られました。

 今や どこの都市でも 掘割は過去のものとなり、都市計画が 進められています。

 これが時代の流れ というものです。

 それでも柳川は、大きな水路が 姿を留めるだけでも 恵まれている。

 計画に反対する者は 誰もいませんでした。

 水の街・柳川から、水路が 姿を消そうとしていました。
 

 下水路計画が 今まさに着手されようとした その時、

 一人の男が 異議を唱えました。

 都市下水路 係長となった 広松伝でした。

 風采の上がらない、不器用そうな 中年男。

 頭も薄くなって、訥々としゃべる、黒縁眼鏡の男です。

 広松は 訴えました。

 水路を埋めて 地下水を無制限にくみ上げると、

 水分70%の 有明粘土層でできている 柳川の地は沈没する。

 川を清浄にし、水路の機能を 回復することこそが大事だと。

 二千年の昔から、この地に住む人々の 幾多の苦労と知恵によって、

 縦横に巡らされてきた 無数の水路。

 随所に設けられている 堰 (せき)、桶門 (ひもん)。

 長い歴史の 試行錯誤を通じて、祖先たちが作り上げた 水利システム。

 それが、いかに自然の水を 巧みに利用した リサイクルであったか、

 常に水位を保って、いかに街を救い、人々に潤いを与えてきたかを、

 彼は懇々と 主張したのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/48765192.html
 
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