(前の記事からの続き)
○ 東央大病院・ 淳一の光線治療の部屋
光の中。
美和子と トランクス姿の淳一が、 サング
ラスをかけて居る。
淳一 「 …… そう …… そういうことだったのか
…… 機械が故障しただなんて言って …… 」
美和子 「許して …… また、 嘘ついた …… 」
淳一 「何だい、 しおらしくなっちゃって」
美和子 「(微苦笑) 形無しね …… 」
淳一 「でもまあ、 お互い一人じゃなけりゃ、
何とかやってけるよな」
淳一、 美和子の肩に手を回す。
淳一 「心を支えることなんて できないけど、
肩を支えることなら できるから」
美和子 「医者が 患者に慰められちゃった…
…」
淳一 「オレのほうがベテランだよ、 しんどい
ことにかけちゃ」
美和子 「 …… この部屋、 すごく落ち着く ……
ジュンはずっと この中で過ごしてきたんだ
ね …… 光の中で ……。 何だか、 時間が止ま
ったみたい …… 」
淳一 「 ……… 」
美和子 「 …… ねえ、 あたしも 裸になってい
い ?」
淳一 「あ ?」
美和子 「光、 浴びたいの、 全身で」
淳一 「女医のポルノ、 売れるかもね」
美和子、 下着姿になる。
二人、 並んで横になる。
美和子 「 …… いい気持ち …… 」
淳一 「 …… 人間だから、 うまくいく時もある
し、 そうでない日もあるよ。 いいことも悪
いことも、 一緒にあってこそ 素敵なんだ …
… 喜びも悲しみも、 生も死も、 みんなまと
めて抱きしめたい …… なんて」
美和子 「 ………… ピンポーン …… 」
○ 同・ ICU
平坦な脳波計。
止まった人工呼吸器。
横たわっている安達。
モニターのスイッチが 切られていく。
静かに座っている杏子。
(次の記事に続く)