「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

許された死 …… 「生死命の処方箋」 (67)

2011年01月03日 19時33分58秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」

(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ 淳一の光線治療の部屋

  光の中。

  美和子と トランクス姿の淳一が、 サング

  ラスをかけて居る。

淳一 「 …… そう …… そういうことだったのか

  …… 機械が故障しただなんて言って …… 」

美和子 「許して …… また、 嘘ついた …… 」

淳一 「何だい、 しおらしくなっちゃって」

美和子 「(微苦笑) 形無しね …… 」

淳一 「でもまあ、 お互い一人じゃなけりゃ、 

 何とかやってけるよな」

  淳一、 美和子の肩に手を回す。

淳一 「心を支えることなんて できないけど、 

 肩を支えることなら できるから」

美和子 「医者が 患者に慰められちゃった…

 …」

淳一 「オレのほうがベテランだよ、 しんどい

 ことにかけちゃ」

美和子 「 …… この部屋、 すごく落ち着く …… 

 ジュンはずっと この中で過ごしてきたんだ

 ね …… 光の中で ……。  何だか、 時間が止ま

 ったみたい …… 」

淳一 「 ……… 」

美和子 「 …… ねえ、 あたしも 裸になってい

 い ?」

淳一 「あ ?」

美和子 「光、 浴びたいの、 全身で」

淳一 「女医のポルノ、 売れるかもね」

  美和子、 下着姿になる。

  二人、 並んで横になる。

美和子 「 …… いい気持ち …… 」

淳一 「 …… 人間だから、 うまくいく時もある

 し、 そうでない日もあるよ。  いいことも悪

 いことも、 一緒にあってこそ 素敵なんだ …

 … 喜びも悲しみも、 生も死も、 みんなまと

 めて抱きしめたい …… なんて」

美和子 「 ………… ピンポーン …… 」
 

○ 同・ ICU

  平坦な脳波計。

  止まった人工呼吸器。

  横たわっている安達。

  モニターのスイッチが 切られていく。

  静かに座っている杏子。

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする