金銭目的で女性を殺害した 無期懲役の男 (50) は、
一日だけでもいいから 外に出て、 ご遺族に謝りたいと言いました。
刑務所に来た当初、 刑務官から
「十数年での仮釈放を目指して 頑張れ」 と 励まされました。
被害者女性の遺族に 謝罪の気持ちを伝え続け、
5年経った頃、 手紙を受け取ってもいいという 意向が伝えられました。
ところが、 目標にしていた年数になった 2000年頃から、
無期囚の仮釈放が 急に難しくなっていきました。
仮釈放を懸念する 被害者遺族の感情が、 重視されるようになったためです。
長期服役しても 心から反省できない 加害者がいることも事実で、
遺族は 新たな犯行を恐れます。
けれども この男の場合、 遺族の処罰感情も 多少和らぎ、
所内での規則違反もありません。
それでも 仮釈放は認められていません。
05~09年、 刑務所で死亡した 無期囚は61人で、 仮釈放者の2倍半。
無期囚の 「終身刑化」 が進んでいます。
以前は、 更生に励めば 早く出られるという 期待がありました。
しかし 最近入所する無期囚は、 「真面目に過ごしても無駄だ」 と 言い、
平気で反則をするといいます。
無期囚の服役の長期化は、 仮釈放者の高齢化ももたらしています。
40年余り服役した 元無期囚は、
70才目前で出所しましたが、 仕事は見つからず、
逮捕前は50円だったラーメンが 今は10倍もすることに 苛立ちを見せました。
このままでは、 40年間の刑務作業で稼いだ 百数十万円を食いつぶすだけだと、
不安を隠せません。
今後は 孤独に生きるしかないといいます。
生き直す契機としての 刑罰の意味が、 見えにくくなっています。
〔 読売新聞より 〕