法務省は2006年、
受刑者を社会に慣れさせるため 「外部通勤制度」 を導入しました。
服役中の受刑者を、 刑務所外の民間の職場に 通勤させる制度です。
服役して9年目の男 (43) は この制度の対象になり、
塀の外に 歩いて出ました。
刑務官は付いてきません。
「まだ受刑者なのに 信じられない」
朝から商品の検品をして 夕方に帰り、 昼食時には社長と雑談もします。
社長は 受刑者の丁寧な仕事ぶりを 誉めました。
一方 社長の妻は、 「罪名などが分からないのは怖い。
女性従業員とは なるべく接触させないように 気を付ける」 と 不安を口にします。
男はこの経験から、 「この人たちのようになりたい。
早く 家族や被害者のために働きたい」 という 気持ちになったといいます。
08年までの10年間に、 仮釈放者の中で、
再犯をしたり、 仮釈放が取り消されたケースは、
無職者の場合10%で、 有職者の6倍。
再犯防止に 就労支援が必須なのは明白です。
ある会社社長は 刑務所で受刑者と面接し、
二人を出所後に 雇用することを決めました。
そのうちの一人の元受刑者 (29) は、
就職後、 ある時 店長から尋ねられました。
「レジ閉めもやれるか」
服役前は 盗みを繰り返していた自分に、
売上金の管理を 任せてくれることに驚き、 感激しました。
接客もし、 今の目標は 主任昇任試験です。
各地の刑務所では ハローワークなどと連携して、
出所前から 求職活動を始めるプログラムが 06年に始まりました。
初めは 「職を探してもらえる」 と 考えていた受刑者たちが、
自力で探そうという 気持ちに変わります。
その意識を持ってこそ、 社会に出て 生き直せるのです。
〔 読売新聞より 〕