アイデンティティの欠如と空虚感は 関連があるので、
診断基準3と7を まとめて説明します。
○ 自己という感覚の欠如
大抵の人は 20代か30代になるまでに、
自己像は かなり一貫したものとなります。
40代になって、 多くの場合、 自分の好き嫌い, 価値観, 職業の選択など、
間違っていなかったと考えるでしょう。
しかしボーダーの人は 本質的な自己感がなく、 台風に見舞われた船に乗った人が、
転がり回ったり、 デッキに打ちつけられたりするようなものです。
普通の人は、 異なる状況で 異なる人々と一緒にいても、
一貫した自己を感じているものです。
この自己の連続性が ボーダーの人にはなく、
空虚感につながる 自己同一性拡散の問題になります。
患者は次のように感じています。
・ 心の中が空虚
・ 自分のものは何もない
・ 誰と一緒にいるかによって、 自分が異なる人間になる
・ どのように考え、 行動するかの手がかりを、 他者に頼っている
・ 一人でいると混乱し、 うんざりする
彼らは孤独を回避しようとして、 なりふり構わぬ 衝動的な努力をしたり、
パニックに陥ったり、 ひどい倦怠感, 解離状態に陥ることもあります。
(次の記事に続く)
〔 「境界性パーソナリティ障害=BPD」 第2版 (星和書店) より〕