DSMは BPDの男性の割合を 25%としていますが、
実際はもっと高いかもしれません。
BPDの男性について よく分かっていないのには、 幾つかの理由があります。
・ 専門家の援助を求める 男性は少ない
男性は うつ病など 深刻なメンタルヘルスの問題にも、
治療を求めない傾向があります。
傷つきやすさや見捨てられ不安など、
感情を認めることを 「男らしくない」 と考えているのです。
・ 臨床家の偏見
メンタルヘルスの専門家が 患者を見るとき、 症状は女性と同じでも、
男性に対しては BPDを正確に診断できなかったことが 明らかになりました。
女性が怒ると、 不合理だ, 逆上している, 感情的すぎると評価されます。
一方 男性の怒りは、 強さや積極性と 見なされることがあるのです。
・ 文化的影響
男性は、 感情的な脆弱さをあらわにしないように 社会化されています。
孤独やうつ, 恐れを抱えていても、 感情を見せてはいけないことになっています。
しかし 怒りは許されています。
・ BPDを持つ男性と家庭内暴力
見捨てられ不安や、 自分に価値がないことを 恐れる感情は、
どこかにはけ口を求めます。
自殺の脅しをしたり、 多くは薬物で 自分自身を麻痺させます。
激怒や攻撃性など 外に向かう行動化を引き起こしたり、
支配的でストーカー的な 行動をする人もいます。
このような攻撃性は、 しばしば反社会性パーソナリティ障害,
思春期ならば行為障害と 誤診されることもあります。
結果として 適切な治療を受けられず、 代わりに彼らは投獄されるのです。
・ 性的な行動化
BPDの男性はしばしば、 買春やマスターベーションなど、
依存的で強迫的な 性行動に携わります。
危険な性行動を 自傷の方法に用いる男性は、 次のように言っています。
「自分に苦痛を与え、 堕落させる必要があったのです。
パートナーに危険を与えて 途方もない罪悪感を感じ、
自分が粉々に壊れてしまいました。
内側にある孤独は とても強く、
それを鎮めてくれるのは セックスだけだったのです。」
〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」 ランディ・クリーガー(星和書店)
〈監訳: 遊佐安一郎〉 より〕