ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

『モーニング』男性読者は、よしながふみ作品をどう受け止めるのかな?

2007-02-22 22:22:46 | 読書
 幼稚園に上がる頃からマンガを読んでいたマンガ読み。最近は月曜日に『スピリッツ』、木曜日に『モーニング』を買って出勤中に読破するのが習慣。

 で、先週の『モーニング』予告から期待していたのだが、いきなり、よしながふみ表紙の今週号。

今週のモーニング

 おぉっ、って、ちょっと軽い衝撃。月イチ連載とはいえ、渾身の作品と思える『大奥』と同時連載で大丈夫なのかしらん。

 もうひとつの「おおっ」は、いくら女性漫画家が活躍しているモーニングとはいえ(例を挙げるなら『働きマン』安野モヨコ、『チェーザレ』惣領冬実、個人的には趣味が合わないが柴門ふみ、『はるか17』の山崎さやか、「35才で独身で」がけっこうツボな『OL進化論』の秋月りす、少年誌を中心に活躍してきた『イカロスの山』の堀内夏子、なかなか味のあるブログ風の身の丈ワイルドライフの4コマを描いている『とりぱん』のとりのなん子、などなど)w……「ホモセクシュアルのカップルが正面に出てくる、よしながふみ作品は男性読者にどう受けとめられるのか」という意味の「おおっ」。

 私個人に関していえば、ホモセクシュアルの"夫婦"が友達にいるせいもあってホモセクシュアルそのものは恋愛の一形態として受け入れているのだけど、女性が自分のセクシャルな願望のすりかえに利用する心理に共感できず、いわゆる「ボーイズラブ」「やおい」はダメ。なので、よしながふみ作品の一部は読んでいない。

 とはいうものの、『愛すべき娘たち』『西洋骨董洋菓子店』『大奥』『愛がなくても喰っていけます』といった作品は好きだ。特に『愛すべき娘たち』と『大奥』はお気に入り。

 今回の新連載も、イケメン43才で弁護士で家庭料理の達人なんだけど、月2万5千円の食費で家計をやりくりすることに達成感を感じているというより、限られた食費で自分の才覚を最大限に発揮しておいしい夕食をつくろうとする主人公(らしい)男性に「ありえねー」と苦笑しながらも、『西洋骨董洋菓子店』に近い世界を男性誌に掲載することに恐れ入った。作家ご本人はもちろん、編集側としてもかなり冒険じゃなかろうか。

 連載第1回としては、面白かった。しかし、作品のおもしろさに加えて、男性読者によしなが作品がどう受け止められるかの方が興味尽きない。

『EQ入門 対人能力の磨き方』

2007-02-21 08:00:00 | 読書
『EQ入門 対人能力の磨き方』高山直(日経文庫) リンク先はamazon.co.jp

 EQ関係の本は下記の本をすでに読んでいる(リンク先はamazon.co.jp)。
EQ―こころの知能指数
EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方
実践EQ 人と組織を活かす鉄則―「共鳴」で高業績チームをつくる
EQマネージャー

 今回は軽い復習といったところ。4つの感情能力のトレーニング方法もついているので、落ち込んだ時にやってみよう。

 ゴールマンの最新刊『SQ生きかたの知能指数 』も購入して書棚にてスタンバイ中。単行本は通勤の時には読みにくいので後回しになってしまうのだが……。

『なぜあの人は懲りないのか困らないのか』

2007-02-18 10:17:24 | 読書
『なぜあの人は懲りないのか困らないのか 日常生活の精神病理学』笠原敏雄(春秋社) リンク先はamazon.co.jp

 レビューを書いているM子さんと似た感想を持った。

 腰帯にある「迷惑な行動を繰り返すのは? 人間心理にひそむ〈幸福否定〉のメカニズム」なる惹句に引き寄せられて、心理学の書棚から引っ張り出して購入。豊富な事例紹介にはとてもおもしろさを感じたのだが、「このように矛盾した行動を取るのはなぜか」という投げかけに対する答えがなかなか示されないのにイライラ巻。最後の方で仮説らしきものは示しているが、ぱきっとした答えという感じではなく、スッキリとした読後感はない。

 ただ、いくつか気づきはあった。統合失調症の患者の「自分の悪口が電波で世界中に放送されている」という主張に対して、臨床的にどう対応しているのかをかいま見られたところが、特にハッとさせられた。

 惹句の「〈幸福否定〉のメカニズム」については、交流分析でいう「ゲーム」の考え方に似ているところがある。ただ、なぜそういう行動を取るのかという点の説明がすっきりしない。

『のだめ』と『天上の虹』最新刊

2007-02-13 20:47:30 | 読書
 今日は『のだめカンタービレ』第17巻の発売日。朝7時から開店するターミナル駅の本屋で早速購入……およ、『天上の虹』第20巻も、発売しているではないか(リンク先は共にamazon.co.jp)。

 『のだめカンタービレ』最新刊は、個人的にミッシングリングになっていた部分がつながって、はうう~(のだめ語)。

☆★☆★

 『のだめカンタービレ』は去年のテレビドラマ化直前にずぼっとはまったのだが、『天上の虹』はもともと古事記・日本書紀の時代というか、天智天皇・天武天皇とその子孫たちの時代に興味があったので、けっこう昔から読んでいた。雑誌に連載されていた時とリアルタイムではないにしても。で、連載していた雑誌がなくなっても、こつこつと描き続ける里中真智子氏はすごいと思う。

 自分が幼稚園児の頃、マンガで文字の読みを覚えたのだが(苦笑)、里中氏はその頃『少女フレンド』でデビューした直後だった。ストーリーは覚えていないのだが「ナナとリリ」を読んでいた記憶がある。

 幼稚園児だった自分が、まぁこの歳になるのだから、その長い年月に良質の作品を創作し続ける里中氏は凄いなぁと思う。



『職場はなぜ壊れるのか――産業医が見た人間関係の病理』荒井千暁

2007-02-07 20:03:16 | 読書
職場はなぜ壊れるのか―産業医が見た人間関係の病理』荒井千暁 リンク先はamazon.co.jp

 去年読んだ『こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから』(リンク先はamazon.co.jp)と同じ著者。

 今回は新書。事例を紹介しながら、うつ病や過労による自殺などメンタルヘルス問題や職場の人間関係の問題がなぜ多発するのかを職場環境や仕事環境の変化の面から解説している。

『プロフェッショナル 仕事の流儀1』

2007-02-05 21:46:34 | 読書
『プロフェッショナル 仕事の流儀1』茂木健一郎&NHK「プロフェッショナル」制作班=編 リンク先はamazon.co.jp

 毎週きっちり見ている訳ではないが、NHKの番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』はさまざまな職業の第一線の人々が登場して、その道の達人の考え方や姿勢に感銘を受けることが多く、良質な番組だと思う。また、脳科学者の茂木健一郎氏の脳科学的な着目点も、思考と感情・情熱、人のモチベーションなどを意識せざるを得ない仕事についている自分には興味深い。

 書籍もすでに9巻出ているが、第1巻を選んだのはリゾート再生請負人の星野佳路(ほしの・よしはる)氏の回が特に印象に残っていたからだ。くつろぎの空間や時間を提供するというサービス業である旅館・ホテルをいくつも再生してきた星野氏は、経営難となった旅館・ホテルの再生にあたって、誰に対して何を提供するかというコンセプトを決めることをトップである自分の役割にしているが、決してトップダウンで決めない。データを重視しつつも、宿泊客に接する現場の声を引き出す。

 ちょうど今日アテンドした研修で、ビジョンの役割は目標に向かって希望ややる気を引き出すことで、ビジョンの正しさそのものは余り重要ではないのだ、という話があったので、星野氏の談話は、特に印象に残った。

 そして、徹底して現場に権限を委譲し、主体性ややる気を引き出す。特に接客の現場は顧客と接する瞬間瞬間が勝負であるから現場に判断を任せるというのは大事なのだという星野氏の見解は、たとえばCS(顧客満足)経営の走りであるスカンジナビア航空のヤン・カールソンの事例を彷彿とさせる。

 他に、小児心臓外科とパティシエの事例があったが、そのどれもが面白かった。人材育成を天職にしている自分には、三人三様の、部下の育成の仕方、任せ方に当然興味がそそられる。その中でも、破綻しているリゾートを再生する星野氏、患者の命がかかっている手術の現場で若手医師を指導する佐野教授の、自分にかかっている責任の重さの一方で部下を育成することの重要性のバランスを取る姿勢の真摯さにリーダーとしての存在感を感じた(もうひとりの、パティシエの杉野氏も真剣に弟子たちと向かい合っている。ただ、重要な工程を自分でやらなければ気が済まないという点では、リーダーというよりは一職人のこだわりを感じただけだ)。

 住む世界は違えど、プロフェッショナルとは、リーダーとは、ということを考えさせる好企画であると思う。中学生や高校生に、沢山の世界にいるプロフェッショナルの頂点を見てもらって、将来の自分は何になりたいかという夢や希望や意欲や情熱をかき立てて欲しいと思う。

『りんごは赤じゃない――正しいプライドの育て方』山本美芽

2007-01-24 22:18:30 | 読書
『りんごは赤じゃない――正しいプライドの育て方』山本美芽(新潮文庫) リンク先はamazon.co.jp

 ひと言でいえば、太田恵美子というスーパー美術教師のドキュメント。しかし、いろいろなことを考えさせられる。

 太田先生は最初から教師だったわけではなく、美大を出て結婚し、二児の母となった。しかし離婚して自立する必要に迫られ、子供たちを祖母に預けながら猛烈な勉強をして学校教師の資格を取った。ひとりの人間として認められないという結婚生活を経て、子供たちに対して、徹底的に、ひとりの人間として責任を自覚させると共に、ひとりひとりを認めるという教育をしている。

 美術の時間を通じて、単に美術の技術を教えるのではなく、大人の話を聞き、クラスメイトの邪魔をしないというマナーを「マナーだから」ではなくて個々の人間同士を尊重するという考え方を通じて学ばせる。「りんごは赤」などという常識にとらわれず、モノに徹底的に向かい合うことによって、その対象物を自分なりに正確に表現する色の使い方を学ばせる。そして、調査研究という自由課題に向き合わせることによって、自己責任でもって選んだ課題と向き合う時には自分が納得するまで物事を追及することの楽しさや工夫したり発想したりすることの喜びを学ばせる。そして、いくつかの課題を通じて、人類が文明の発展と引き換えに自然環境を破壊してきたことの危険性を感じさせ、その中で自分たちがどう生きたいかというビジョンをつかませる。

 簡単に「学ばせる」「つかませる」と書いたが、方法論は、そんなに簡単じゃない。枠組みは示しながらも、その中で中学生たちは自分たちなりにテーマを設定し、様々な工夫をして情報を集め、書き止め、理解し、自分たちの言葉に消化する。そのプロセスの中で、太田先生はひとりひとりの出来栄えのよしあしよりも、全力で課題と向かい合っているかどうかという姿勢を見つめ、どんなに小さなことでも褒めることを忘れない。

 要約してしまうと何となく薄っぺらになってしまうけど、社会人になってからも人は学ぶ、そのプロセスと環境に必要なことを中学校の現場でやってらっしゃるなぁという感想を抱いた。いや、ここまで徹底してひとりひとりと向き合っているだろうかと、自らを省みて忸怩たる気持ちを持つだけのスーパー教師だと思う。

 やっていることの根底にある考え方には、共感を持った。私は選抜された社員に対して自分たちで選んだ課題を分析させて提案するアクションラーニングという手法を使った育成プログラムを何回か実施しているけど、太田先生のスタンスと自分のスタンスには(プロとしての徹底ぶりには差はあるが)大きな違いはない。人は、与えられた課題に対しては「やらされ感」を払拭できないのだけど、自分で選んだ課題に対しては時間を忘れてのめり込むものだ。そして、課題の出来栄えそのものの良し悪しよりも、その課題と取り組んだ自分の姿勢から何かを学ぶのだ。

 そういうことを、中学生の時に学べるのは、何と恵まれた環境だろう。本の中に紹介された太田先生の教え子たちの中にはいろいろな軌跡を辿った人がいるが、太田先生に学んだことを忘れた人はいない。そして、その時に学んだことを、自分の人生の価値観の根っこに持っている。

 当時の教育の体制では、太田先生が必ずしも評価されていないというか、周りの教師仲間からは煙たがれたということも、リアリティをもって感じられた。特に、太田先生が教えた学校のある神奈川県ではアチーブメントテストと内申書で進学が左右される教育体制だった。その中で、相対評価をしなければならない太田先生は、その仕組みに反対を唱えつつも相対評価をしなければならないことを生徒に泣きながら謝っていたそうだ。

 信念を形に実現することの難しさ、信念と言行を首尾一貫させることの難しさとそれを徹底することによってできる生徒との信頼関係、周囲の同僚からの嫉妬や不協和音にさらされながら信念を貫くことの難しさ、そんなことも感じた。

ライバル誌で連載再開(@_@)

2007-01-22 20:25:21 | 読書
 毎週月曜日には小学館の『週刊ビッグコミックスピリッツ』を、木曜日には講談社の『週刊モーニング』を買う。

 今朝『スピリッツ』を買ったら、かつて『モーニング』に連載されていた「ブラックジャックによろしく」の主人公が表紙になっていて、ビックリ(@_@)。

 ネットで調べてみたら、ちゃんと記事になってた。

人気漫画「ブラックジャックによろしく」異例の“移籍”
 累計で1000万部を超える人気マンガ「ブラックジャックによろしく」(佐藤秀峰著、講談社刊)が「新ブラックジャックによろしく」として、新たに青年誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)から連載されることが、9日までに分かった。同マンガは05年末まで講談社の青年誌「モーニング」で連載されており、ライバル誌への異例の“移籍”となる。「モーニング」編集部では「著者の佐藤氏と条件面などで折り合いがつかなかった。残念で仕方がない」と説明、落胆の色を隠せない様子だ。

(中略)

「モーニング」編集部では「(連載再開にあたり)著者の佐藤氏から、原稿料などさまざまな条件が出されたが、編集部としては受けることができなかった。話し合いを進めてきたが、合意に至らず決裂した」と経緯を説明。その後、「ビッグコミックスピリッツ」の編集長から新連載する旨の連絡があったという。

 さらに、同編集部では「すでに、次の章の取材も行っており、うちで連載する予定だったのですが…。看板作品ですので、残念で仕方がない」と声を落とした。連載途中での“移籍”については「昔は結構ありましたが、最近ではまれなケース」としている。

 一方で、ある出版関係者は「佐藤氏がモーニング編集部の人事に介入しようとしたり、かなり高額な原稿料を要求したと聞いています。最近、ヒット作に恵まれなかった『スピリッツ』では、高額なお金を出してまでも看板作品として迎えたかったのでは」と解説した。


 『スピリッツ』は「20世紀少年」とか「ホムンクルス」とか看板の作品が一旦中断されて販売部数が落ちたのかも知れない(最近また連載再開されているが)、ここのところたてつづけに高名な作家による連載を立ち上げている。

 編集サイドと対立して出版社を鞍替えするマンガ家は過去にもいたけど(その経緯ゆえか、私の好きな新選組マンガが復刊不可能になってる……ぶちぶち)、成人向けマンガ雑誌では最大手の『モーニング』陣営(講談社)と『ビッグコミック』陣営(小学館)の間での移籍劇は大きい話だろう。

 「ブラよろ」は、登場人物の絵柄は好きではないが、医療界のタブーに挑戦するという姿勢とストーリーづくりは注目していた(精神科編は途中がちょっとグダグダという気がしたが^^;)。マンガ好きとしては、再開した泌尿器科編も、作品として面白いかどうかで見ていきたい。

『「こころ」はどこで壊れるか』読了

2006-12-16 21:55:14 | 読書
 ちょっと時間はかかったが、読了。

『「こころ」はどこで壊れるか――精神医療の虚像と実像』滝川一廣 聞き手・編:佐藤幹夫リンク先はamazon.co.jp

いろいろと考えさせられた。

 たとえば「人格障害」という概念について。それは単なる行動パターンの類型であって、精神医療の立場から見たら余り役には立たない、「正常」と「異常」の境界線を示すだけの概念だということだったり。

 少年犯による殺人事件における異常性がマスコミによって強調されているけれど、実は少年による殺人事件は戦後で50年代後半~60年代がピークで、件数としては減っていること。それにも関わらず、その個々の事件が一般的に正常とされる大人にとって理解不能さを受け止めることができず、マスコミを通じた説明しやすさによって、本質をごまかされている可能性があること

 標題の本の内容について、まだ十分に理解できるほど社会学も心理学も極めていないのだが……とても深い本だと思う。


『アイスエイジ』もんでんあきこ

2006-10-21 20:07:20 | 読書
 『アイスエイジ』第6巻が出ていたので、早速購入。

アイスエイジ 1
アイスエイジ 2
アイスエイジ 3
アイスエイジ 4
アイスエイジ 5
アイスエイジ 6 以上、リンク先はすべてamazon.co.jp

 今年私が読み始めた女性作家によるマンガ作品では『大奥』よしながふみ(リンク先はamazon.co.jp)に並ぶ名作。

 写真ジャーナリストとして世界の紛争地を駆けめぐってきた主人公・エイジがある学校の英語教師として赴任する。戦火をくぐってきて命の尊さやはかなさを身に沁みて感じてきたエイジは、生徒や同僚教師らと真正面から向かい合い、時には体当たり(苦笑)し、人々の現実に冷めた心を少しずつ変えていく。
 登場する人物のひとりひとりに人生がある。エイジと同居する従兄弟の比呂志はエイジの幼なじみで、父親に殴られて育ったエイジを見守りながら、時にはエイジの熱血ぶりに巻き込まれながら、生きてきた。インドネシアの爆弾テロに巻き込まれ、エイジをかばって車椅子生活を余儀なくされているが、罪悪感を持つエイジを責めず、淡い恋に破れる経験もしつつ、一方ではエイジとの共同生活から自立することを目指している。
 エイジの同僚となる女性教師は×イチの子持ち。暴力亭主に傷つけられたトラウマがあり、エイジに好意を抱くが恋はなかなか進展しない。
 もうひとりの同僚は、どこか無機質な感じのする数学教師。教室では淡々としているが、生徒たちの非行を防ぐために夜の町を徘徊するという一面を持っている。エイジと出会って、だんだん気持ちを表に出すようになってきた。
 他にもいろいろな同僚教師が出てくるが、この辺にして、一方で高校生たちに目を向けたい。優等生で生徒会長を務めるが、人生で何がしたいのか・何が欲しいのかがまったく見えず、生の実感を持てない少年。母子家庭で母親の恋愛関係に振り回される少女。義父の虐待を受ける少女。父親の存在が大きいばかりに「いい子」で育った一方で、初めて手に入れられないもの(同級生の少女の心)を知って荒れる少年。

 ほとんど誰ひとりとして、完全ではない。そして、その多くが、家庭に何らかの問題を抱えている。あるいは「学校」という閉ざされた世界で、問題に突き当たっている。その問題ゆえに、心に痛みを持って、それぞれに生きようとする姿が安っぽいドラマでなくて、等身大の人間のものとして描かれている。