立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
第96回 「女性は子供を産む機械」発言で湧き出る安倍「大政奉還」論
「自分の知恵には限りがあるが、人の知恵を使う限りにおいて、これは無限である。人使いのうまい人が、天下無敵なのは、この故にである。いかにして人の知恵をうまく統合して使うか、上に立つ者の要訣は、これに尽きるようである」……いい言葉ですね。リーダーシップの本質を突いていると思います。
うーん、「大政奉還」もアンチ小泉派の自分には嫌だなぁ。かと言って、野党にも今は共鳴できるところがないのだけど。強いていえば「アンチ与党」であるところではあるのだが。
第96回 「女性は子供を産む機械」発言で湧き出る安倍「大政奉還」論
柳沢伯夫厚生労働相の「女性は子供を産む機械」発言は、安倍内閣に取り返しのつかないダメージを与えることになると思う。
このところ、どの世論調査を見ても、安倍内閣の支持率は落ちる一方で、支持と不支持がほとんどならぶところまできていた。
それでもかろうじて不支持を支持が上まわっていたのは、もっぱら女性層の支持によるものだった。男性層だけをとれば、とっくに不支持が支持を上まわっていた。まだ柳沢発言を反映した世論調査の数字は出ていないが、まちがいなく、不支持の数字がはね上がるだろう。
(中略)
首相になったばかりのころは、まれに見るほど高い人気をほこっていた安倍首相の人気がなぜかくほどまでに落ちるばかりなのか。
第一にあげられるのは、人間として面白くないということだと思う。小泉時代と同じように、毎日のテレビのぶら下がり会見で、記者に問われるといろいろしゃべるにはしゃべるのだが、その言葉が上すべりするだけで、人をひきつける要素がさっぱりない。国会の演説、あるいは答弁で語るときも同じである。とにかく何を聞いても、つまらないの一語につきる。
私の家には91歳になる母親がいて、ときどきいっしょにテレビのニュースをみるのだが、ついこの間も、安倍首相が語るのを聞いていて、「この人は何もない人だねえ」とつくづくいっていた。
安倍人気が落ちるばかりの第二の理由は、安倍首相が選んだ党と内閣の要人たちの多くがダメ人間で、めざましい業績をあげられないだけでなく、失言、不適切行動の連続というところにある。
安倍首相の人を見る目の無さが露呈するばかりなのだ。柳沢厚労相、本間税調会長だけでなく、つい先だっては佐多行革担当相を辞任のやむなきにいたらしめた政治資金の処理問題もある。同じ問題で、松岡農相、伊吹文科相、久間防衛相らも、次々と国会で追及を受け、陳謝することの連続である。
大きな組織で人の上に立つ立場の人間にとって、何よりも重要な能力は、人を使う能力である。人を使う能力の前の問題として、人を見る目を持つということである。
最近「文藝春秋」が「文藝春秋の85年」というなかなか面白い私家版(売ってはいない)の社史を刊行した。パラパラめくっていたら、戦後最大のジャーナリストといわれた、二代目の社長の池島信平氏が書いたこんな文章に出会った。
「自分の知恵には限りがあるが、人の知恵を使う限りにおいて、これは無限である。人使いのうまい人が、天下無敵なのは、この故にである。いかにして人の知恵をうまく統合して使うか、上に立つ者の要訣は、これに尽きるようである」
この通りだろう。安倍首相は、この上に立つ者として最も大切な能力、「人の知恵をうまく統合して使う能力」が欠如しているといわざるをえない。
「自分の知恵には限りがあるが、人の知恵を使う限りにおいて、これは無限である。人使いのうまい人が、天下無敵なのは、この故にである。いかにして人の知恵をうまく統合して使うか、上に立つ者の要訣は、これに尽きるようである」……いい言葉ですね。リーダーシップの本質を突いていると思います。
最近、政界の一部からは、安倍首相の「大政奉還」論が出ていると聞く。
安倍首相に政権をゆずり渡して引退した小泉前首相に、「私は未熟でした」といって、政権を返還し、再起を期すべしというのである。
しかし、政治には時の勢いというものがある。
大政奉還でいこうとしてもウロウロモタモタしているうちに返還すべき大政が手の中から消えてしまうということだってある。
うーん、「大政奉還」もアンチ小泉派の自分には嫌だなぁ。かと言って、野党にも今は共鳴できるところがないのだけど。強いていえば「アンチ与党」であるところではあるのだが。