日経ビジネスオンラインに自分の仕事に直結する特集コーナーが設けられ、刺激的な記事が次々とアップされている。
人材沈没に悩む日本企業を救う
経営リーダーの育て方
ひとつひとつの記事を熟読して感想をアップしたいのだが、あいにく、ここのところ出張続きだったりして、落ち着いて記事を読むことができない。よって、感想をブログに上げることも出来ていない。
愚痴を言っても始まらないので、ひとつふたつ、記事を読んで雑感を書いてみることにしよう。
自分は日本に資本がある日本企業でなく、グローバル企業の日本法人に勤めているので、リーダーの育成に対するニーズとその意味は日本企業とは少し違う。その最たる違いは、グローバル企業のCEOを日本で働いている社員から育てる責任はないことだろう。ただ、市場の特殊性(たとえば、自分のいる医薬の産業では、薬の処方と精算には国民健康保険に代表される健康保険制度が関わっていて行政や医師会の影響力が強いこと、BtoBの他産業では販売代理店という位置づけになるであろう卸・特約店の全国ネットワークが強くてメーカーによる直接販売が事実上不可能であることなど)もあり、日本でのビジネス経験がない方が事業部トップや社長になると市場の仕組みを理解することに時間がかかったり、その特殊性に対応した決断ができるまでに時間がかかったり(最悪、資質や価値観の問題もあって理解してもらえなかったり……)、日本語が喋れないと(そして、日本のビジネス文化がわからないと)有力な取引先や影響力のあるドクターとのコミュニケーションに支障をきたしたりする。
だから、日本の市場の特殊性に対応できるリーダーを育成するニーズは日本企業とは違った意味で存在する。また、グローバル企業からの要請として、アジア出身のエグゼクティブがもっと出てきて欲しいというニーズもある。
14年前にこの会社に入った直後、とりあえず目標として、日本からアジア太平洋を初めとする別の地域の事業部でトップを務められる人材(そして、やがて日本に帰ってきて、日本法人の社長になれる人材)を育成しようということを考えた。それから、初めての日本人の社長が誕生する場面には出会えたが、残念ながら、他企業での経験を積んで中途で入社された方なので、自分たちが何らかのサポートをして育った社員ではない。だから、まだ、自分が立てた目標は達成できていないわけだ……ただ、その初の日本人社長のおかげで、この4年間、日本人社員を計画的に育てていこうという方針に助けられて、ほとんどゼロだった状態から、いくつかの仕組みと研修プログラムを展開できるようになった。そういう意味では、ちょっとだけ、進展した。
米国系企業だと、本社から、この研修プログラムをこういう対象者に対して実施しろという指令が降りてきて、現地法人はその適切さに疑問を感じつつも問答無用の実施に追われることになるらしい(勝手なイメージなので、米国企業に勤めている方から反論があれば、聞いてみたい)。自分の勤めているヨーロッパ系企業は、もともと人事関係については(雇用など日本の特殊事情もあったろう)あれこれと指示を受けることが少ない。それもあって、見習うべきグローバルの仕組みや研修プログラムを自分たちで選んで日本で展開しつつも、ローカル特殊のニーズに応えるサービスの提供ができている(もっとも、来年から再来年にかけては、グローバル規模で人事部門の組織やサービス内容が再編されるかも知れないので、自分たちがやってきたことが、今後もこの状態が続くかどうかわからない)。
閑話休題。
“ソニーユニバーシティー”で経営トップとビジョンを共有
グループの幹部候補を育てる
いくつかの記事の中で、一番自分の関心事に近く、また自分の仕事上のニーズも近かったのが、ソニーのやっていることだった。
当社の日本法人におけるローカル人材は、そんなに簡単に他社に移ったりはしないのだが、日本人または日本の顧客・市場・文化をよく理解する人材を育成するローカルのニーズがあるという意味では、ソニーの現地法人ニーズと近いかも知れない。
これが、ちょうど、自分が経営委員会に対して準備中の作業に当たる。日本の各組織にどんな人材がいるかを洗い出し、後継者計画に照らした時に現有の人材で埋められるかどうかのギャップを明らかにし、リーダー候補には育成計画を、後継者育成計画で社内の人材で埋められないギャップには外部からの採用を、準備する。6~7年前から定期的に実行しているプロセスだが、人事本部長が本気になっていることもあって、単に書類を埋めるだけではなく本気で取り組まなければならない課題だという理解は共有されてきた。
そして、そこで名前を挙げられたリーダー候補には、仕事を通じての育成計画と、研修プログラムを通じての育成計画が個別に立てられる。研修プログラムにはおのずと限界があるが、ソニーほどではないけど、当社も、事業経営に必要な知識や視点(たとえばマーケティングや財務)に重点を置いたプログラム、現実の経営戦略を見直して現在の経営陣がカバーしていない課題に対して提案を行うプログラムなど、いくつかを展開している。
ただ、競合他社との統合が進行中で、組織が大きく変わったこともあり、事業部トップや日本法人のトップに求められるリーダーシップやコンピテンシー(能力・行動)は変わってきている。仕組みとしてまだ手つかずのところを今後どうしていくかを考えるのが、自分の仕事だ。
人材沈没に悩む日本企業を救う
経営リーダーの育て方
ひとつひとつの記事を熟読して感想をアップしたいのだが、あいにく、ここのところ出張続きだったりして、落ち着いて記事を読むことができない。よって、感想をブログに上げることも出来ていない。
愚痴を言っても始まらないので、ひとつふたつ、記事を読んで雑感を書いてみることにしよう。
自分は日本に資本がある日本企業でなく、グローバル企業の日本法人に勤めているので、リーダーの育成に対するニーズとその意味は日本企業とは少し違う。その最たる違いは、グローバル企業のCEOを日本で働いている社員から育てる責任はないことだろう。ただ、市場の特殊性(たとえば、自分のいる医薬の産業では、薬の処方と精算には国民健康保険に代表される健康保険制度が関わっていて行政や医師会の影響力が強いこと、BtoBの他産業では販売代理店という位置づけになるであろう卸・特約店の全国ネットワークが強くてメーカーによる直接販売が事実上不可能であることなど)もあり、日本でのビジネス経験がない方が事業部トップや社長になると市場の仕組みを理解することに時間がかかったり、その特殊性に対応した決断ができるまでに時間がかかったり(最悪、資質や価値観の問題もあって理解してもらえなかったり……)、日本語が喋れないと(そして、日本のビジネス文化がわからないと)有力な取引先や影響力のあるドクターとのコミュニケーションに支障をきたしたりする。
だから、日本の市場の特殊性に対応できるリーダーを育成するニーズは日本企業とは違った意味で存在する。また、グローバル企業からの要請として、アジア出身のエグゼクティブがもっと出てきて欲しいというニーズもある。
14年前にこの会社に入った直後、とりあえず目標として、日本からアジア太平洋を初めとする別の地域の事業部でトップを務められる人材(そして、やがて日本に帰ってきて、日本法人の社長になれる人材)を育成しようということを考えた。それから、初めての日本人の社長が誕生する場面には出会えたが、残念ながら、他企業での経験を積んで中途で入社された方なので、自分たちが何らかのサポートをして育った社員ではない。だから、まだ、自分が立てた目標は達成できていないわけだ……ただ、その初の日本人社長のおかげで、この4年間、日本人社員を計画的に育てていこうという方針に助けられて、ほとんどゼロだった状態から、いくつかの仕組みと研修プログラムを展開できるようになった。そういう意味では、ちょっとだけ、進展した。
米国系企業だと、本社から、この研修プログラムをこういう対象者に対して実施しろという指令が降りてきて、現地法人はその適切さに疑問を感じつつも問答無用の実施に追われることになるらしい(勝手なイメージなので、米国企業に勤めている方から反論があれば、聞いてみたい)。自分の勤めているヨーロッパ系企業は、もともと人事関係については(雇用など日本の特殊事情もあったろう)あれこれと指示を受けることが少ない。それもあって、見習うべきグローバルの仕組みや研修プログラムを自分たちで選んで日本で展開しつつも、ローカル特殊のニーズに応えるサービスの提供ができている(もっとも、来年から再来年にかけては、グローバル規模で人事部門の組織やサービス内容が再編されるかも知れないので、自分たちがやってきたことが、今後もこの状態が続くかどうかわからない)。
閑話休題。
“ソニーユニバーシティー”で経営トップとビジョンを共有
グループの幹部候補を育てる
いくつかの記事の中で、一番自分の関心事に近く、また自分の仕事上のニーズも近かったのが、ソニーのやっていることだった。
ところが、現地法人が次第に大きくなり、組織もしっかりとしてくると、現地の優秀な人材がどんどん入社してくるようになった。その一方で、技術やノウハウはすぐに陳腐化してしまう。次々と登場する新しい技術やノウハウを日本から海外へ広めるには、日本人の赴任者を短期間で入れ替えなければならない。日本人社員が「骨を埋める」覚悟で赴任する必要はなくなった。
こうして海外法人の現地化が進んだ結果、人事を巡る新たな課題が浮上してきた。海外の現地法人で働く優秀な人材の活用である。
当社の日本法人におけるローカル人材は、そんなに簡単に他社に移ったりはしないのだが、日本人または日本の顧客・市場・文化をよく理解する人材を育成するローカルのニーズがあるという意味では、ソニーの現地法人ニーズと近いかも知れない。
そこで手始めに、ソニーのグループ内にどのような人材がいるのかを調べ、将来の幹部候補をリストアップした。それぞれの国や地域で頑張ってもらう社員と、グローバルに活躍することを期待する社員とを選別。全世界で150の重要なポストを決めて、3~5年後にそれらのポストに就任する可能性のある社員のリストを作ったのである。
実はこうした人材のリストアップは10年ほど前から行っていた。しかし、実際の人事には必ずしも活用されてこなかった。こうした過去があるにもかかわらず、改めてリストを整備した背景には、先ほど言及したように、差異化の要素がハードからソフトやサービスに移ったという事業環境の変化がある。
加えて、海外の現地法人で採用できる優秀な人材の数自体が増えた。さらに、ここ数年の最優先課題とされてきたエレクトロニクス事業の立て直しが進み、人事の改革にも力を注げるようになった。10年前に比べれば、人材の情報を集める仕組みもより精緻になっている。3年後には、ノン・ジャパニーズを含めた人材のグローバルな適材適所がかなり実現できているだろう。
これが、ちょうど、自分が経営委員会に対して準備中の作業に当たる。日本の各組織にどんな人材がいるかを洗い出し、後継者計画に照らした時に現有の人材で埋められるかどうかのギャップを明らかにし、リーダー候補には育成計画を、後継者育成計画で社内の人材で埋められないギャップには外部からの採用を、準備する。6~7年前から定期的に実行しているプロセスだが、人事本部長が本気になっていることもあって、単に書類を埋めるだけではなく本気で取り組まなければならない課題だという理解は共有されてきた。
そして、そこで名前を挙げられたリーダー候補には、仕事を通じての育成計画と、研修プログラムを通じての育成計画が個別に立てられる。研修プログラムにはおのずと限界があるが、ソニーほどではないけど、当社も、事業経営に必要な知識や視点(たとえばマーケティングや財務)に重点を置いたプログラム、現実の経営戦略を見直して現在の経営陣がカバーしていない課題に対して提案を行うプログラムなど、いくつかを展開している。
ただ、競合他社との統合が進行中で、組織が大きく変わったこともあり、事業部トップや日本法人のトップに求められるリーダーシップやコンピテンシー(能力・行動)は変わってきている。仕組みとしてまだ手つかずのところを今後どうしていくかを考えるのが、自分の仕事だ。