ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

読書三冊

2006-09-19 20:10:08 | 読書
 旅行の行き帰りを利用して読んだ本が3冊。いずれもリンク先はamazon.co.jp。

『下流社会 新たな階層集団の出現』三浦 展
『格差社会の結末 富裕層の傲慢・貧困層の怠慢』中野 雅至

 2001年刊行とちょっと古いが、この「格差社会」に至った経過のストーリーとして、下記の新書も読んだ。
『こんな人が「解雇(クビ)」になる―リストラされた78人の教訓』 夕刊フジ特別取材班

 自分の親の世代を含めてもう少し長いスパンで見ると……。

 高度成長期、大企業に勤めていたブルーカラーはホワイトカラーと同様に長期雇用の保証(本当に保証されたかどうかは別にして)と年功序列賃金制度によってグレーカラー(疑似ホワイトカラー)として組み込まれ、それが日本の中流階級というか中流意識を持つ層として日本の中間層を形成してきた。それが、90年代のリストラと雇用形態の変化を経て、職種ではない別の要因によってアッパーミドルとロウアー(ロワーか)ミドルに再度分割されつつあるのではないか。そして、雇用形態の変化によって、求められる能力や資質や職務経験・年齢とのマッチングを果たせない層の一部が先鋭的に働く意欲はあっても雇用と賃金の仕組みが市場の要請と合わない「ワーキング・プア」層を生み出しているのではないか。

 そして、アッパーミドルとロウアーミドルを分ける別の要因とは何だろうか。個々人のケースを見ていったとしたら異なる要因が出てくるだろうとは思われるけど、大きく見ていくと、「持続的に企業に雇用される能力」=エンプロイアビリティという概念につながるのではないかと、まだ理論構築は十分ではないが、一応言ってみる。

高橋俊介 エンプロイアビリティとエンプロイメンタビリティ

中国でも『銀英伝』が人気と聞いて嬉しい

2006-08-23 21:04:34 | 読書
 日経BPに、ちょっと嬉しいエッセイが。

人民日報も認める『銀英伝』。
中国で「愛される理由」は


 『銀英伝』に出会ったのは、およそ20年前になるか(汗)。勤めていた会社で同期の子が勧めてくれて、読み出したら止まらなくなった。当時はまだ5巻か6巻ぐらいまでしか刊行されていなくて、完結するのをリアルタイムで見届けられたのが私のちょっとした喜びだった。

 私は普段この手の小説を読むことはまずないのだが、10年以上前、広東省に出張していた際、夜ホテルで特にすることがないのでテレビをつけていたら、たまたま日本の衛星放送で深夜に放映していたのがアニメ版「銀英伝」だった。わずか30分の番組だったが、やたらと面白いうえに音楽も美しく、今で言うところの「はまって」しまった。

 ストーリーの中身については深くは触れないが、物語の状況設定や登場人物の個性、各戦役の展開など数多くの点で「三国志演義」や「水滸伝」など中国の歴史小説の影響があるとの指摘が多くのファンからなされている。そのあたりの歴史小説的深みが中国でも強く支持される大きな理由だろう。確かに感覚的にはSFというより司馬遼太郎の小説のような趣がある。『坂の上の雲』がお好きな方などは恐らく面白く読めると思う。


まさしく、その通り。多少のSF作品も読むけどディープなSFファンではない私がこの作品に惹かれたのは、まさに歴史小説の楽しさがあったからだ。

 今は外交関係がぎくしゃくしているけど、中国の『銀英伝』ファンと作品の楽しさを語り合える日が来るかも知れない。



早く逢いたい……『逢いたくなっちゃだめ』板東 寛司

2006-08-10 12:33:28 | 読書
『逢いたくなっちゃだめ』板東 寛司(あおば出版) リンク先はamazon.co.jp

二週間ほど前に、書店の店頭に平積みだった。

 猫好きな私の視覚を直撃する子猫たちの写真が満載なところにもってきて、さまざまな恋を十七文字で語るさまざまな俳句の数々。

 すごく刺激的な本だったが、なぜか衝動買いすることがためらわれた。

 そして、その日一日、買わなかったことを何度も後悔した。

 翌日、その本屋の店頭に行ったら、平積みになっていた写真集が消えていた。何度も棚を探したが、一冊も残っていなかった。

 ネット書店で探そうにも、書名も著者名も覚えていない(イグアスの滝汗)。「猫・写真・俳句」などと検索をかけてみたが、出てこない。

 あの写真集をまた目にすることはないのだろうかと、本屋を覗くのが日課になって約二週間。

 ふと、ネット書店でなく、グーグルで「猫・写真集・俳句」と入力して検索してみた。

 すると、写真家のサイトがヒット。

 そして、この表紙とまた出会えた。あぁ、これだこれだ、探していたのは。

 『逢いたくなっちゃだめ』とは、また何と、小憎らしいタイトルだろう。

 書名と著者と出版社がわかったところで、ネット書店に注文を入れた。

 早くこの本に逢いたい……逢いたいんだよぉ(ぢたばた)。

『上司の頭はまる見え』川崎貴子

2006-08-10 12:32:31 | 読書
『上司の頭はまる見え』川崎貴子(サンマーク出版) リンク先はamazon.co.jp

 腰帯の惹句は「女が言うことを聞かない理由、上司はなぜか気づいていない。」25歳で起業し、人材紹介・人材派遣会社の社長として1万人以上の女性と接してきた著者(写真を見ると綺麗な方ですが、本の中でご自分の性格を「おっさん」と表現しています)による、女性社員への接し方指南本。

 一番印象に残った箇所が「女に『怒鳴ってしかる』方法が通用しない本当の理由」という章。

 女性は大声を出されると「怒鳴られた私」の防御に関心が行ってしまい、思考停止におちいってしまうのです。

 こうなると、怒ることはまったく意味をなさなくなります。

 たとえは悪いかもしれませんが、男性と女性の違いは犬をしかる時と猫をしかるときの違いに似ていると思います。

 犬は悪いことをしたとき、飼い主がその場でしかり、言って聞かせれば、ある程度"してはいけないこと"を理解できます。納得できれば、しかった飼い主を恨むようなことはありません。

 一方、猫はしかられると、飼い主が自分を"いじめている"と思います。そのとき自分が何をしたかということに思考が及ばず、飼い主からひどい目にあわされたという恐怖だけが残ります。

 その結果、しかればしかるほど飼い主への不信感がつのり、言うことを聞かない猫になってしまうのです。

 ですから猫をしつけようと思ったら、しかるのではなく、"天罰方式"にするしかないそうです。つまり飼い主が直接しかるのではなく、テーブルの上に乗ると、突然紙つぶてが飛んできたり、大音響が響くなどの災難が降りかかるようにしておければ、テーブルに乗る→災難が降りかかる→だから乗らない、という具合になると言います。

 女性にもある程度仕事をまかせ、一、二度失敗させて、自分で痛みを実感させることが大切なのかもしれません。


 この箇所だけでも、本の代金の価値があった。このネタ、管理職研修で使わせていただこう。

速読2冊

2006-08-03 20:03:54 | 読書
 仕事の合間にぱらぱらっと、流し読み。

ムカッ!ときたときのとっさの対処術 植西 聡 (扶桑社文庫) リンク先はamazon.co.jp

 感情、特に怒りの感情への対処は、特に部下を持つマネジャーにとっては、自分自身の怒りへの対処、得意先や部下の怒りへの対処、という二面において重要だと私は思う。

 対処術のうちいくつかは「呼吸法で神経を落ち着ける」「目をつぶって数を数える」というオーソドックスなものだ。

 でも笑ってしまった対処法もある。「脱力系のキーワードをつぶやく」だ……これ、次の機会があったら試してみよう(笑)。

☆★☆★

なぜか同じ失敗を繰り返してしまう人たち 芦原 睦 (扶桑社文庫) リンク先はamazon.co.jp

 わかりやすい交流分析の解説書。「親の心」「大人の心」「子供の心」の三つ(「親の心」と「子供の心」はさらにふたつに分かれる)のバランスと、バランスが崩れた状態。そして、交流分析の中で「ゲーム」と呼ばれる、本人は自覚していないが無意識に人間関係を壊す行動を繰り返す人のパターン。

 ちょっと胸を突かれたのが、この一文。

「人は、陽性のストロークが不足すると、陰性のストロークを集め始める」


 身近な家族のことを思い出した。まさに、このパターンを何十年も繰り返している……(水不足だがイグアスの滝汗)。


『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン

2006-08-02 07:01:05 | 読書
『EQ―こころの知能指数』 (文庫) ダニエル・ゴールマン リンク先はamazon.co.jp

 管理職に部下との接し方を教える以上は必読の書でした……パラ読みしていたのですが、もう一度ちゃんと読み直しました。

 英語ではEmotional Intelligenceという言葉が充てられているところを「EQ」「こころの知能指数」と訳した翻訳者の土屋京子さんのセンスも光ります。

 大人の社会で成功するには、IQは2割、残りの8割はEQ、というのはあながちウソではないと思います。特に人事の世界に身を置いていると、一面では優秀でも、自他の情動(emotions)とうまく折り合えないためにチームリーダーとして成功できない・チームメンバーとして問題児となってしまうケースに出会うことがしばしばです。

 ひとつだけ難点を挙げるならばIQ以外の思考と情動すべてをEQとくくってしまって、その構成要素が何であるかが今ひとつはっきりしないところでしょうか。それは、この本の後に続く類似の本が明らかにすべき分野であろうとも思いますが。

 ビジネスの世界で人と接する機会のある人にも、子供を育てる親にも、子供・学生と接する教師にも、読んで欲しい本です。

『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析』小此木啓吾

2006-07-02 00:59:38 | 読書
『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析 パーソナリティそのミクロな狂い』小此木啓吾(新潮OH!文庫) リンク先はamazon.co.jp

 この手の本は随分読みましたので余り新しい発見はありませんが、「イビリ君」とか「タテマエ部長」とか具体的な事例とネーミングがグーでした。

 新しい発見がゼロというわけでもなくて、筆者があとがきで書いているように「DSM-IIIRの境界パーソナリティ障害の位置づけに私は好意的でないので、むしこの項目の記述内容をすぴっつぁーの本来の不安定型パーソナリティ障害に戻して用い、境界パーソナリティ障害という用語は、不安定型、依存型、自己愛型、演技型……それぞれのパーソナリティ傾向の持ち主がパーソナリティ障害と呼べるほどのパーソナリティの機能の狂いをあらわす状態として用いることにした」という点が発見でした。やはり、説によって「境界パーソナリティ障害」の定義が違うのね。

 引用したいのは236ページ。「性格は性格防衛によって成り立っている」という章からの一節。

 たとえばW.ライヒは、『性格分析』という本で「性格防衛」という考えを述べた。性格防衛というのは、心の中の超自我や欲望との葛藤について、それをうまく処理する心の働き(防衛)であると同時に、それが親子の間柄や社会生活の中での適応にも役に立つ。そのような防衛と適応が一致したのが、その人のパーソナリティの働きで、それはいつもある程度継続的に、どんな時と所でも発揮される。性格というのはこのような性格防衛によって成り立っていると言う。


 言葉を換えれば、外部環境からの刺激に対してある程度一貫して示される適応反応や防衛反応がパーソナリティということかな……何となく納得。

『上手な怒り方』佐藤綾子

2006-06-28 20:05:51 | 読書
『上手な怒り方』佐藤綾子(PHP研究所) リンク先はamazon.co.jp

 管理職向けの研修プログラム開発のために読んだ。いわゆるアサーティブネス(相手と自分の人格を傷つけることなく自己主張するスキル)のハウツーのひとつだと思えばよい。

 感情に任せて怒ると相手を攻撃したり傷つけたりすることがある。無理に自分の感情を押し殺すと、不満がたまっていつか爆発したりすることもある。

 というわけで、怒り方にもハウツーがあるのだ。

 入門書としては具体的なハウツーがいくつも示されていて悪くないと思う。そんなに深い本ではないが、具体的なハウツーは何種類もあって、それなりに使える感じがする。

『機能不全家族』西尾和美

2006-06-15 21:09:52 | 読書
『機能不全家族』西尾和美(講談社)単行本版
『機能不全家族』西尾和美(講談社)+α文庫版 いずれもリンク先はamazon.co.jp

なんと日本の家族の80%が機能不全!!何が原因なのか斎藤勇氏(家族機能研究所代表)が絶賛!!
「子どもとの間違ったコミュニケーションが、家族を不幸にしている。違っていたら、やり直せばいい。人生に、家族に、遅すぎることはない」

私は長いあいだ、アメリカと日本で何千人という人たちの精神療法にたずさわってきました。(中略)カウンセリングをしながら、いつも思うのは、なんとかこのように心に傷がついて後遺症が残ることを防げないだろうか、ということでした。(中略)
そこで、私のところへ相談に来る人たちに、自分が育った家族で、どういうことが傷つき体験になり、どういうことが自分の人間形成に役に立ったかをインタビューしつづけてきました。
それをもとに、機能する家族とはどんな家族か、そういう家族を築くにはどうしたらいいかを考えることにしたのです。そうした中で、浮かび上がってきたのが、父親業、母親業の「仕方」なのです。──「まえがき」より抜粋


 腰帯の惹句と「まえがき」引用より。

 読んでいて、何度も苦しくなった。私自身も機能不全家族で育ったから、フラッシュバックを経験した。幼児期から青少年期にかけて抑圧してきた思いが、よみがえってきた。

 辛かったが、出会うべくして出会うべき本だったと思う。人と向き合うのが仕事である以上は、自分自身とも向き合って過去のトラウマを整理しておかないと前に進めないから。

祝・『仁―JIN―』連載再開

2006-06-13 13:06:12 | 読書
 この一年間くらいは「週刊スーパージャンプ」に不定期連載だった『仁―JIN―』村上もとかが毎号連載となって再開された。嬉しい。

 現代の大学病院で脳外科医をやっていた主人公・宗方仁がある夜運ばれてきた身元不明の急患(怪我で入院したのだが、驚くべき持病を脳に抱えていた)を手術して間もなく、病院から脱走を図るその男を引きとめようとした時に階段から落ちて、そのままタイムスリップ。そこは幕末の江戸だった。

 そして、当時の西洋医学の知識がようやく少しずつ入ってきたばかりで、まだウィルスの知識も抗生物質の精製方法もない時代に、仁は歴史改変のリスクを感じつつも現代の医学知識を幕末の江戸で応用していくことで人々の命を救おうとする、という話。

 連載再開となった今回はタイムスリップのエピソードをなぞっていたが、謎の急患が仁に伝えた言葉が、今回ようやく明らかになった……ネタバレになるのでそれ以上は踏み込まないが、想像していた通りだ。いずれ、頭痛を引き起こしていたアレと仁との関係、そしてタイムスリップを引き起こした異常な現象の説明もあるのだろうが、それらが出てくる頃には最終回だろう(涙)。

 今はとにかく、幕末の時代の人物たちと仁との出会い、そしてその出会いが歴史上の出来事にどう関係していくのか、あるいは改変につながるのか、ということと、幕末の時代に奇跡を起こす医療ドラマとしての面白さに注目していたい。そして、仁をめぐる女性たち、武家の娘で母親に勘当されながらも仁の助手として生きていくことにめざめてしまった橘咲ちゃんと、一世を風靡した吉原の花魁ながら乳癌が見つかって仁の手術を受け、仁のもとで病に苦しむ苦界の女たちを何とかしたいと思っている野風の今後に注目(他の村上作品でもそうだが、描かれる女性たちは自分の生き方や社会との関わり方を模索し、安易に恋愛に逃れないところが魅力的)している。