記事を書く時間はないが、気になったブックレビューをいくつか貼っておく。
『生きさせろ!』、人を馬鹿にした働かせ方をするな!
~格差社会の新しい闘争論
目の前で「自己責任」と言ってみよ~『ルポ最底辺』
生田武志著(評:清田隆之)
非正規雇用という労働形態は、高度成長期の前からあった。
大阪なら釜ヶ崎、東京なら山谷。かつては「ニコヨン」と呼ばれていた(ネットで検索したら映画『ニコヨン物語』ができたのは自分が生まれるよりも前のことだった……でも、この言葉は知っている)。
今は出稼ぎ労働者という言葉を聞かなくなったような気がするが、農業だけで食べていけない(特に東北の)農家の人たちが季節労働者として働きに出てくることが珍しくなかった。
非正規労働という形態の良し悪しを言っているわけではなく、そういう労働市場のニーズは昔からあったし、そういう労働市場を選ぶ人々・そういう労働市場しか選べない人々も昔からいた。
ただ、最近の、派遣労働だったり請負労働だったりする非正規雇用は、昔と何かが違う。その違いを、もう少し考えてみたい。とりあえず、情報源確保。
『生きさせろ!』、人を馬鹿にした働かせ方をするな!
~格差社会の新しい闘争論
生きさせろ、とは何とも他人任せのタイトルだ。しかし、そうとしか言えない悲惨な状況に追い込まれた若者たちがいる。
たとえば、ひきこもれる家庭すらなく、漫画喫茶で寝泊まりする若きホームレスたち。子どもを連れて派遣先や請負先の工場を渡り歩く「子連れ請負」たち。彼らに向かって“努力が足りない”と説教するような自己責任論に、著者は激しく反論する。ワーキングプアが増えている背景には、安価で流動性の高い労働者を階層として固定化しようとする経済界の企みがあるのだと。
なぜ、こんなことになったのか。本書で詳しく触れるが、九五年、日経連(※)が明確に宣言したからだ。これからは働く人を三つの階層に分け、多くの人を使い捨ての激安労働力にして、死なない程度のエサで生かそう、と。つまるところ、国内に「奴隷」を作ろうという構想だ。なんのことはない、この状況は十年以上前から用意されていたのである。
(※編注:日本経営者団体連盟、2002年に経済団体連合会=経団連と統合して日本経済団体連合会=日本経団連)
人材が不足し始めたいまでこそ就職状況は好転しているが、ほんの数年前まで「就職氷河期」と呼ばれた時期が続いていた。そのため、多くの若者が正社員の職に就けず、フリーターや派遣をはじめとする非正規雇用の立場で働かざるを得なくなった。
目の前で「自己責任」と言ってみよ~『ルポ最底辺』
生田武志著(評:清田隆之)
「日雇い」は具体的な労働量に対してのみ賃金が発生する就労形態のため、寄せ場の人々は「仕事の多いときはジャンジャンかき集められ、少ないときは放っておかれる」という使い方をされてしまう。事実、バブル期の90年と崩壊後の93年では、求人数で約半分、最低賃金も日給1万3500円から9000円に激減している。これは正規雇用者ではあり得ない落差だろう。そうやって景気を根底で調整する損な役回りゆえ、彼らは「景気の安全弁」ともいわれているのだ。
そんな日雇い労働者の資本は体ひとつだ。1トンの鉄材の運搬、150度に熱せられたアスファルトの舗装工事、地上100メートルの足場での命綱なしの作業…それらをすべてわが身ひとつでこなさねばならない。しかも、健康を害せばたちまち収入はゼロになり、持ち金が尽きれば泊まるところすらない「野宿生活者」へと転落してしまう。
蚊が飛び交い、ゴキブリが這い回り、天候の影響をもろに受ける野宿に安眠はない。さらに恐ろしいのは“襲撃”で、2005年には若者グループが足に障害を抱える野宿者に火炎ビンを投げつけて焼死させるという事件まで起きている。これらの悪条件や恐怖がただでさえ弱っている心と体をさらに蝕む。
住所がなければ再就職は難しく、空き缶を拾い集めて換金しても1日1000円を稼ぐのがやっと。最近では廃棄されたコンビニ弁当にありつくのだってひと苦労だという。ホームレス対策として、弁当を食べられないよう水びたしにしてから廃棄する業者が増えているのだ。
〈ぼくはこの20年近くの間に、何度か死者の第一発見者になった。これは、ある程度長く野宿者に関わる活動をやっていると避けられない現実である。そして、死者は冬と梅雨期に集中する。冬は寒さによって、梅雨は仕事がなくなることによって〉
こうして「負のスパイラル」にはまってしまうと、そこから抜け出すのは容易でない。不安定就労と野宿は地続きであり、それは「死」へもつながっているのだ。この危険と常に隣り合わせであること。それが「最底辺」たるゆえんなのだ。
非正規雇用という労働形態は、高度成長期の前からあった。
大阪なら釜ヶ崎、東京なら山谷。かつては「ニコヨン」と呼ばれていた(ネットで検索したら映画『ニコヨン物語』ができたのは自分が生まれるよりも前のことだった……でも、この言葉は知っている)。
今は出稼ぎ労働者という言葉を聞かなくなったような気がするが、農業だけで食べていけない(特に東北の)農家の人たちが季節労働者として働きに出てくることが珍しくなかった。
非正規労働という形態の良し悪しを言っているわけではなく、そういう労働市場のニーズは昔からあったし、そういう労働市場を選ぶ人々・そういう労働市場しか選べない人々も昔からいた。
ただ、最近の、派遣労働だったり請負労働だったりする非正規雇用は、昔と何かが違う。その違いを、もう少し考えてみたい。とりあえず、情報源確保。