ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

『人格心理学――パーソナリティと心の構造』鈴木乙史・佐々木正宏

2006-06-10 22:29:45 | 読書
『人格心理学――パーソナリティと心の構造』鈴木乙史・佐々木正宏(河出書房新社) リンク先はamazon.co.jp

 腰帯の惹句が今いち。「人格とは、心の動きのパターンだ! このパターンを生み出す心の構造とは何だろう 心が壊れるとはどういうことなのだろう 臨床心理学と連携しながら、パーソナリティ――心の本質に迫る」……まぁ、そういう内容の本ではあるのだが、何となく薄っぺらい気がする。教養課程で心理学を学ぶ大学生向けの惹句にしたのだろうか。確かにそこそこの厚さの割に読みやすいのだが。

 パーソナリティに関連する心理学の学説をフロイトからロジャースまでわかりやすく説明した後、発達心理学になるのだろうか、赤子から老年期に致るまでのそれぞれのライフステージにおけるパーソナリティの変化に関する解説が続き、「人格が壊れる危機」と題してパーソナリティの適応と適応不全の問題を取り上げている。パーソナリティ障害に関する本を何冊か読んだ直後なので、その基礎となるパーソナリティ理論を一通り理解でき、いい入門本だと思う。

 仕事の様々な局面でパーソナリティに関連する心理学の知識が必要になってきたので、ちょうどいいタイミングでいい本に出会えて嬉しい。そして、個人的には、引用されたユングの言葉「太陽は予測しなかった正午の絶頂に達する。予測しなかったというのは、その一度限りの個人的存在にとって、その南中点を前もって知ることはできないからであ。正午十二時に下降が始まる。しかもこの下降は午前のすべての価値と理想の転倒である。太陽は矛盾に陥る」に、中年期に特有らしき、最近の様々な思いを振り返ることになった。

『パーソナリティ障害』岡田尊司

2006-06-01 07:00:36 | 読書
『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』岡田尊司(PHP新書) リンク先はamazon.co.jp

 パーソナリティ障害personality disorderとは、「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態」。
 「物事の受け止め方や行動の仕方には、当然個人差があって、ある程度までは『個性』や『性格』として尊重されるべきものである。(中略)そうした傾向は、人それぞれであり、いいとか悪いとかいうことではない」。
 「(中略)パーソナリティ障害とは、バランスの問題であり、ある傾向が極端になることに問題があるということである。パーソナリティ障害かどうかのポイントは、本人あるいは周囲が、そうした偏った考え方や行動でかなり困っているかどうかということである。ただし、本人は案外困っていないことも少なくないので、いっそう周囲は困ることになる」。

 「本書では、適応上差し支えのない範囲のものを、単に『パーソナリティ』、病的なレベルのものを『パーソナリティ障害』として区別した」。

 ということで、わかりやすいパーソナリティ障害解説と「接し方のコツ」「克服のポイント」が以下続く。

 紹介されているパーソナリティ障害は以下の10種類。
1. 境界性パーソナリティ障害
2. 自己愛性パーソナリティ障害
3. 演技性パーソナリティ障害
4. 反社会性パーソナリティ障害
5. 妄想性パーソナリティ障害
6. 失調性パーソナリティ障害
7. シゾイドパーソナリティ障害
8. 回避性パーソナリティ障害
9. 依存性パーソナリティ障害
10. 強迫性パーソナリティ障害

☆★☆★

 この本を読むきっかけとなったのは、「パーソナリティ」か「パーソナリティ障害」かの判断はつかないが、自己愛性パーソナリティ傾向の強い人のケースにぶつかったから。

 しかし、よくよく自分が過去に出会った人たちを振り返ると、仕事の面で優秀とされていて早く昇進したけど対人関係などでトラブルを起こして挫折する人のケース(「脱線」=ディレールメント)は、考えてみると自己愛性パーソナリティ傾向の強い人だったりする。
 サイト「モラル・ハラスメント対策室」でも、モラルハラスメントの加害者は自己愛性パーソナリティ傾向が強いという指摘がなされている。
 引き続き、「自己愛性人格障害」または「自己愛性パーソナリティ障害」については勉強を続けるつもり。

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 家族の中に「回避性パーソナリティ障害」で「うつ」の家族がいる。この本にも指摘されていたところでは、小中学校の時にいじめを受けていたことがトラウマのひとつになっている。また、幼少の頃から親に「褒められたことがほとんどない」、家庭が父親を中心に回っていて「父親の自己愛の奉仕者として組み込まれ」ている、という点も当たっている……(汗)。

 私が分析するところ、父親に振り回されながらも家族の間を繋ごうとする母親の世話焼きがさらに拍車を掛けてしまっているんだろうなぁと思う。私はいったん家を離れることで自分を立て直したけど、その家族は親の支配下にあって引きこもることを選んでしまったわけで。

 「回避性パーソナリティ障害」の項を読み終えて、これから先のことを考えて、溜息をついた。気長に付き合うしかないんだけど。

『自己愛性人格障害』町沢静夫

2006-05-19 19:22:17 | 読書
『21世紀カウンセリング叢書 自己愛性人格障害』町沢静夫(駿河台出版社) リンク先はamazon.co.jp

 ちょこっと感想を交えながら、めもめも。

第一章 自己愛性人格障害
第三節 ミロン(Milon, T.)による自己愛性人格障害の下位分類

以下、項目のみ引用。

・道徳心を欠いた自己愛性人格障害
・自己補償的な自己愛人格障害
・好色的自己愛性人格障害
・エリート的自己愛性人格障害

第四章 自己愛性人格とモラルハラスメント

冒頭
 自己愛性人格ないし自己愛性人格障害の人たちは共感性が乏しく、あるいは人を動かし自分が中心でないと気がすまない。いつもほめられなければ安心できない。
 そのために強引な力の論理や、さまざまな対人関係の技術を使って、多くの人を犠牲にしつつ自分の立場を高めようとしていく人たちである。
 このような自己愛的な人たちの相手になる人たちは、言葉の上でも情緒的なレベルでもさまざまな被害を受け、PSTDに近い精神状態になることもある。
 自己愛性人格障害は実際、社会の上では極めて少なく、日常われわれが目にするのは、だいたい自己愛性人格である。つまり横柄で、力を駆使して人を軽蔑し、自己中心的に動こうとして、共感性に乏しい人たちである。つまりここで自己愛性人格とは、このような自己愛性人格障害の主たる特徴を持っているが全部は持っていない、という人たちを指すものとする。このような人を自己愛性人格の人たちとするならば、われわれの身の回りにも実に多いものと言ってよいものである。
 この自己愛性人格の人たちは、夫婦の関係、親子の関係、会社内の人間関係といったところで目立つことが多い。つまり相手を無力化し、相手を思うがままに動かし、相手が加害者であるかのごとく役割を押し付け、その相手の弱みの上に自分が権力を握る。支配し続け、そしていじめることそれ自体が快楽となっていると思える形となる。


 う~ん、深刻なケースとなると、かなり強烈だ。

 そして、思った通り、この「自己愛性人格障害とはいえないまでも自己愛性人格の人」と、パワーハラスメント・セクシャルハラスメントは関係がありそうだ。

同 第二節 日本の企業とモラルハラスメント

 企業では、上司は部下を侮辱し、力によっていじめるということは実によく見られるものであり、ある意味で当たり前と言ってもよいものである。上のものが部下を叱ったり侮辱したりするのは、通常の日本の組織の姿だといってよいものである。
 しかしわれわれの社会は、いかに封建的なものがバックグラウンドにあったとしても、民主主義の社会であることは憲法に記されているものである。したがって、上のものが下のものを平然として侮辱し叱り付けるということは、あってはならないものであるが、これもまたあまりに当然なために、周りもそのことを問題にすらしないといえるものである。
 このような上司は、自分も昔は上からいじめられてきたという悪しき伝統を、そのまま新しい地位の下の部下に行使するものである。まるでチェーン現象のように、このモラルハラスメントが延々と続くのである。自分がやられた、だから下の者にやる。そしてまた下の者も、自分もやられた、だから下の者にやる、と延々と上位の者が下の位の者をいじめるという姿は、日本の会社にはよく見られる姿である。
 このようなチェーン現象が続くには、単に上・下の地位の違いがはっきりしているだけではなく、上の者が下を思うようにいじめ、力任せに罵倒するということは、その素質の中に自己愛性人格がなければ出来るものではない。


以下、カウンセリング事例。

同 第三節 企業とセクシャルハラスメント

 カウンセリング事例の紹介。ただしセクシャルハラスメントを訴える被害者のカウンセリング事例で、加害者の自己愛性人格の特徴に直接斬り込むものではない。先日読んだ『壊れる男たち』金子雅臣(岩波新書)の事例にこそ加害者に共通する自己愛性人格が色濃く表れているので、そちらをお勧めしたい。

 かくて彼女の問題は解決したのであるが、やはりこの日本の会社組織の封建制はきわめて大きな問題であり、そこで一人男女平等と叫んでも、あっという間にもみ消されてしまう社会ではある。しかし今この現代に至ってなおかつ男女平等が成立しないというのは、多くの他の人たちが「強いものには巻かれろ」という形で自己愛的な上司に逆らわず、封建体制を無言のうちに支えているという風土が日本にあるから、このような問題があると考えられる。


同 第四節 病院とモラルハラスメント

 ところで医者の世界も、きわめて封建制が強いものである。各大学の派閥争いは、まるでやくざのように繰り広げられているのが現状である。そしてそのトップに立つ人たちは、医者というよりも政治家といった方がよい人たちが多いものである。


 ……そこまで言っていいのかしらん(苦笑)。まさにマンガ『医龍』の世界って感じですが。

 以下、仮名による事例紹介。凄いので一部だけ引用。

 この医局長の性格は、きわめて眼は鋭く、歩き方もまるでやくざのように横に広がる歩き方となり、「俺の言うことを聞かなければ、どこへでも出してやるんだ」というばかりの雰囲気であり、まさに自己愛性人格の典型であると言えるものであった。実際その医局長は、自分自身が結局能力はなく医局長どまりで、どこかの大学に赴任するなどということはまったくなかったのである。単に政治や権力欲に身を包んだ、自己愛性人格としていたに過ぎなかったのである。
 医学という科学の先端を身につけて働かねばならない場で、科学こそ平等な事実を求める社会であるにもかかわらず、封建的なやくざのような人間関係を続けている医学というのはいかなるものかと疑問にもつものであるが、今もって日本の医学部はこのような学閥主義、権力主義に基づいて人事が動いており、日本人はいつまでたっても本来の民主主義、科学的公正というものに近づくことはなく、権力を笠に着て人事が動いていくという自己愛性性格の人たちが医局を牛耳っている世界なのである。


 ……この節こそ、著者の舌鋒が一番鋭い節だった(滝汗)。

 おおよそわかってきたが、もう少し理解したいので類書を注文した。

『上司と部下の深いみぞ パワー・ハラスメント完全理解』岡田康子

2006-05-19 13:23:48 | 読書
『上司と部下の深いみぞ―パワー・ハラスメント完全理解』岡田康子(紀伊国屋書店) リンク先はamazon.co.jp

 「パワー・ハラスメント」という言葉を造語したクオレ・シー・キューブ代表取締役による著作。

 以下、役に立ちそうなところを抜書き。

著者によるパワー・ハラスメント定義
・職権などのパワーを背景にして
・本来の業務の範疇を超えて
・継続的に
・人格と尊厳を傷つける言動を行い
・就労者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること

パワハラの四段階

第一段階……最初は仕事のミスを指摘したり、なんとなく肌が合わない。コミュニケーションがうまくとれない、といった小さなことから始まります。この段階はどこの職場にもあることで、パワハラとはいえません。

第二段階……同じことを何度も指摘するといった「繰り返し」があらわれると、パワハラの始まりです。また直接の業務内容ではなく、「あいさつができない」「口のききかたが悪い」といった「態度」を攻撃するようになり、その攻撃のしかたが、たった今のその態度ではなく、「お前はいつもそうなんだ」「まったく何をやらせてもダメなやつだ」「だいたいお前は」といった、「いつも」「どこでも」という注意のしかたに変わってきます。また、過重な労働や高度すぎる仕事を与えたり、反対に誰でもできる雑用をやらせたり、存在自体を無視したり、といったことが始まります。

第三段階……本人が直そうとしても直せないこと、たとえば出身や学歴、身内のことなどを非難するようになります。また、その人の「行動」を注意するのではなく、「お前の性格が悪いんだ」という非難のしかたが始まります。仕事を与えず、無能扱いしたり、「俺の言うことをきけないのなら、今すぐ会社をやめろ」「ノルマが達成できないのなら、窓から飛び下りて死ね!」といった脅迫や暴力も出はじめます。こうなれば、完全なパワハラです。

第四段階……被害者に心身の不調があらわれはじめます。仕事が手につかなくなるので、ますます無能のレッテルをはられ、辞職を強要されたり実際に解雇されたりといったことも起こります。ここまで来るともう修復不可能の段階といえます。

パワハラの四つのタイプ

攻撃型……このタイプの加害者は、「他の社員たちの前で怒鳴る」「一人だけ呼び出して怒鳴る」「机や壁などを叩いて脅す」「ねちねちと嫌みを言う」「肉体的暴力をふるう」など、業務の範疇かどうかにかかわらず、被害者に対して直接的に攻撃を行います。周囲の目があるかないかはおかまいなし、その時の気分で行動する傾向もあります。

否定型……このタイプは「仕事のすべてを否定する」「人格を否定する」「能力を低く評価する」「病人扱いをする」など、その人の存在そのものを軽視し「被害者の職場における存在を否定する」傾向にあります。陰湿な嫌がらせを通して被害者を追い込む傾向があり、爆発型と違って職場の雰囲気が一変するような緊張感はありませんが、反対に周囲にはっきりわからないところでジワジワと攻撃するので、被害者は孤立しやすく、ダメージも大きくなります。

強要型……このタイプは「自分のやり方を無理矢理押しつける」「責任をなすりつける」「サービス残業を強要する」といった、上司という権限・威厳を誇示したがる傾向が強いパワハラです。独善的なワンマン経営者や、過去の自分の偉業にすがりつき、そのやり方に間違いなどないと信じきっている人もいます。

妨害型……このタイプは「仕事を与えない」「必要なものや情報を与えない」「辞めさせると脅す」「休ませない」など、被害者の仕事そのものだけでなく、仕事に向かう意欲や向上心も妨害しようとするものです。仕事熱心で一生懸命な人が、その熱心さのあまりに上司から疎まれ、被害を受ける場合もあります。

あなたの「パワハラ加害者度」チェック
1. 出来の悪い部下ばかりを割り当てられる気がする
2. 目障りに感じる部下がいる
3. 部下の仕事の内容を把握していないことがある
4. 部下によく説教をする
5. 部下を叱るとき、人前かどうかは気にしない
6. 部下の人間性まで攻撃することがある
7. 部下は自分の顔色を見て行動する
8. 自分に異を唱える者はいない
9. 病気がち、休みがちな部下が多い
10. 何人か一緒に辞めた部下がいる

パワハラをしやすい人
・性格が攻撃的
・威厳の誇示をしたがる
・嫉妬深い
・自己中心的
・しつこい
・潔癖症
・自己保身に走る

環境要因
・ストレス過多
・自分もパワハラを受けてきた
・リストラがらみ
 

『ダイヤモンド・ガイ』かわみなみ 久し振りにマルロと遭遇♪

2006-05-12 13:20:03 | 読書
『ダイヤモンド・ガイ』かわみなみ(白泉社) リンク先はamazon.co.jp

 本日発売。腰帯の惹句が「ドイツに行けない貴方に……♥」だ。ドイツW杯の年に初めてコミックに収録された、約20年前のサッカーマンガ『シャンペン・シャワー』の番外編。

 ちなみに、本編は4年前のW杯の時に文庫版で復刊された。

『シャンペン・シャワー』第1巻(白泉社) リンク先はamazon.co.jp
『シャンペン・シャワー』第2巻(白泉社) リンク先はamazon.co.jp
『シャンペン・シャワー』第3巻(白泉社) リンク先はamazon.co.jp

 少女マンガ雑誌『LALA』に連載されたのだが、主人公がプロのサッカーチームに入団した少年で、同じ市内の因縁のライバルチームとの戦いあり、国の代表チームに選ばれて強化合宿(笑)そしてW杯予選から本戦出場、と、女っ気の少ないマンガだ。

 しかし、一番人気は主人公の少年ではなく、ライバルチームのベテラン選手マルロ・タリオーニとその後輩アンドレ・クレモンだった。そのふたりを主人公にした番外編が『ダイヤモンド・ガイ』。 本編に収録されなかった番外編の出版リクエストはナンと559票にも上った。

復刊ドットコム『シャンペン・シャワー番外編 ダイヤモンド・ガイ』

 ……懐かしいなぁ、『シャンペン・シャワー』読んでメキシコW杯の試合をテレビで見て、一気にサッカーにのめりこんだんだもの。

 マルロとアンドレは70年代のイタリアの代表チームにいた選手をモデルにしている。

 主人公の所属するチームのキャプテンで国の代表チームのキャプテンも務める優しい先輩ディッコは、日本代表のジーコ監督の若き日の姿(ただしプレーヤーとしてはベテラン)をモデルにしている……あの頃は、あのジーコが日本でプレーしたり代表チームの監督をしたりするなんて夢にも思わなかったよなぁ。

 20年前のサッカーシーンをしみじみ思い出しつつ読んだ。あいかわらず笑えるマンガだ。


『医龍 Team Medical Dragon』にどっぷりハマる!

2006-04-24 20:57:29 | 読書
 この4月からドラマ化されて木曜日に放送されているということは知っていたのだけど、あいにく見ていなかった。しかし、昨日たまたまコンビニでソフトカバー版の第1巻が出ていて、読み終えたらたちまち、全巻読みたいと思った。

 で、今日の日帰り出張帰りに、東京駅の書店で今コミック化されている全11巻を買って、のぞみで新大阪駅に着くまでに10巻の途中まで一気に読み切った。帰宅するまでに、全11巻を読み終えた。最初に読む時はストーリーを把握したいのでががっと速読みするのだが、これは今日中にもう一度じっくり読み返したい。

 マンガ読み歴ウン十年なのだが、こういうハマリ方をする作品はそうそうない。現在進行形のコミックで言えば、『風雲児たち 幕末編』みなもと太郎、『JIN~仁~』村上もとか(不定期連載だけど……次はいつ再開されるのだろう、どきどき)、『PLUTO』浦沢直樹(月刊誌掲載中で、コミック化されるのが一年に一回ぐらいなんで、ハラハラ)の3作品だけ。それでも、もう一作品加わるのであれば、近年にない大豊作の時期かも知れないと思う。

 医療をテーマにした作品としては、去年完結した『ブラックジャックによろしく』も読み応えがあった。若き研修医が医療の現場の現実に直面してもがきながら自分なりの答えを手探りで見いだして成長する等身大の青年像としてのストーリーがよかった。

 対して『医龍』は海外の戦場で活躍した天才外科医が主人公。そういう意味ではややフィクションがかっているのだが、彼にこき使われて成長する研修医あり、彼を招聘して大学病院の体制に風穴を開けようとする野心家の女性助教授あり、と、群像劇としてのおもしろさがある。そして、組織と人の専門家である私には、ドリームチームがつくられていく過程も面白いし、老獪な医局の教授を相手にしてきれい事では済まされない局内の力関係を打ち破ろうと立ち向かう女性助教授(その老獪な主任教授に「魔女」って言われてる^_^;)という政治劇もエキサイティング。主要なキャラクターも、プロとしては超一流だが、多くは弱みも含めて個性的で、その言動にリアリティがある。

 目下の悩みは、テレビドラマを見るかどうかだ。原作に入れ込んでしまうと、たいていテレビドラマを見た時にがっかりさせられるので……(汗)。

☆★☆★

追記。私の大好きな鬼頭先生がテレビドラマ編では夏木マリさん演じる女医さんになっている……しくしくしく。テレビドラマ編を見るモチベーションはだいぶ下がっているが、とりあえず一回だけ見ようかとは思っている。

 あと、現在ハマっている作品に『神の雫』を入れておかんといかん。ストーリーもペンタッチもワインに関するウンチクも好きだ。

『その言い方では、人はついてこない』原孝

2006-04-21 08:00:15 | 読書
『その言い方では、人はついてこない ~やる気を確実に引き出す「感情表現」スキル~』原孝(PHP文庫) リンク先はamazon.co.jp

あとがきより。
人は、年齢が高くなるにつれ、知識を得るにつれ、「論理」で他者を動かそうとする。そして、「論理」で動かない他者に対して、さらなる「論理」を動員して、屋上屋を架そうとする。

(中略)

 本書で紹介した「感情表現」戦略スキルは《論理を生かすためのもの》である。《人を束ね、組織を動かす》感情表現スキルは決して姑息なものではない。口先だけのスキルでもない。


 思っていた以上に良書。部下を持つ管理職にお勧めしたい、ということで、近々予定されている管理職のコーチング研修の事前読み物に一部を入れようと考えている。

 

『きょうも、いいネコに出会えた』岩合光昭

2006-04-13 20:47:16 | 読書
『きょうも、いいネコに出会えた』岩合光昭(新潮文庫) リンク先はamazon.co.jp

 猫が好きだ。好きな動物を挙げる時、そこには人の願望があると言われているけど、私の場合は「何にも媚びず、自分のペースで生きている」猫の生態に願望を見いだしているのだろうな……もっとも自分の場合は、かなりそういう人生を送っていると思うので、隠れた願望というよりは「地」に近いところがあるような気分(笑)。

 この文庫は、動物カメラマンの岩合さんが日本の各地を旅して出会った猫の写真集。何とも個性的な猫たちの姿。どの猫も日本の町の風景に溶け込んで、人の営みの中で自分のスペースをしっかり得ているような印象。

 しかし、一番印象的な写真は、「海《かい》ちゃん」だった。ネットで調べてみたら、岩合さんが家族の一員として共に暮らしてきたメス猫ちゃんだった。岩合さんが「一番印象的な猫」という質問に「海ちゃん」と答えていて、その「海ちゃん」の横顔をとらえた一枚の写真が凄く目に焼き付いた。

 生後3ヶ月ぐらいだろうか、幼い目で世界を見つめている無垢な視線が何とも素敵なのだ。ネットで調べたら海ちゃんの生涯を写真集で出しているそうなので、早速、2冊ネット書店で取り寄せることにした(苦笑)。

『毒になる親』

2006-04-02 19:47:02 | 読書
 金曜日に店頭で見つけて、すぐさま買った本。

毒になる親――一生苦しむ子供』スーザン・フォワード(講談社+α文庫) リンク先はamazon.co.jp

 ショッキングなタイトルの本だ。でも、レビューを書いた方々が全員5つ星だということが、この本の重みを伝えてくれる。

 組織と人の育成が専門という仕事柄、対人関係で問題を起こしているケースにも出会うこともある。そうしたケースを見聞きするにつけ、対人関係で問題を起こす人の育ち方というのが気になるようになった。幼少期から青年期にかけての対人関係での経験、とりわけ家庭における親との関係は大人になってもその人の対人関係に意識的・無意識的に影響を与えているのではないか、と思う。

 親や近親との関係で何らかの問題があったり身体や心に傷を負った人間がすべて問題を起こすとは思っていない。しかし、対人関係で習慣的にトラブルを起こす人は、親や近親との関係で何らかの問題があったり身体や心に傷を負ったことを長い間抑圧し、その抑圧された思いが他人に対する攻撃に出たり自分を責めたりすることになっていることが、しばしばあるようだ。

 この本を手に取った自分も、おそらくはAC(アダルト・チルドレン)に分類されるであろう父親との不安定な関係に苦しんだ被害者であると同時に、同じ近親者がそれ以上の苦しみを受けてきたことを見過ごしてきた傍観者であり、また、そのストレスから近親者に苦しみや怒りの吐け口を求めた加害者だ。組織と人を自分の仕事のテーマにしたのも、その経験と関係がないわけではないと思う。

 自分は思いあまって親元を離れて生活し、ひとりで自分の過去と向かい合い、時には過去の幼少の経験を忘れられないこと・水に流せないことにのたうち回りながらも、何とかひとりの職業人として自分の足で立てるようになった。仕事の折々に、幼少期から青年期の自分の被害者・傍観者・加害者という三重構造の経験に向き合わざるを得ないこともあるわけだけど、それでも生きてきた。

 『毒になる親』を読んで、かつて自分の最も身近にいた、被害者になってきた近親のことを思う。傍観者でもあり加害者でもあった自分は、今後その人に何がしてやれるだろうか……その記憶を背負って生き続けることが、とりあえずは今できることだと思ってはいるのだけど。