ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

安易に乗らない

2005-07-10 19:27:52 | 時事
 ロンドンでの連続爆破事件から数日。朝の通勤時間に交通機関の要所がほとんど同時に爆破されるという計画性に、空恐ろしさを感じた。

 翌日、ちょっとした飲み会で、その話題になった。
「アフリカや中東の視点に立ってみなければ、背景は理解できない」
「俺がその地域に生まれていたら、いっそそういう死に方を選んだかも知れない」
 同席したのは国際経験豊富なビジネスピープル。彼らはテロを容認する立場でそう言ったのではなく、アフリカや中東やアジアの一部地域の絶望的な状況――そして、それは日本のマスメディアでは報道されることが少ない――を踏まえての発言だった。

 この事件についてうまく言葉にできなくてブログにコメントを書きあぐねていた時に、元外務省の天木さんの記事を見つけた。
テロという言葉を安易に使うべきではない
専門家よ、メディアよ。もっと本当のことを語ってくれ。もっと深刻な事実を語ってくれ。テロに屈してならないのは当然である。貧困や人権を抱える中東のイスラム社会にも民主化は必要だ。しかしその前に、まず、アフガンやイラクの治安と人権の回復が先だ。米、英の軍事占領の終結が先だ。中東問題の要であるパレスチナ問題の公正な解決の為に、イスラエルと米国の横暴さを糾弾することが先なのだ。

 この記事のメッセージが自分の今の心情に一番共感できた。

チームビルディングセッションを企画・運営する

2005-07-02 20:45:59 | しごと
 今年に入って3度目のチームビルディングセッションを終了した。

 管理人は人材開発マネジャーとして人材育成戦略の立案と社員に対する教育研修の企画立案とコーディネーションが中心の仕事をしており、トレーナーの仕事は比重が低い。今年になって初めて経験し、もう3度目になるのがチームビルディングセッションの立案とファシリテーターとしてセッションを実施するという仕事だ。今年は、もう一回、予定が入っている。合計4回のセッションは、異なる3つの部門・部署からの依頼を受けており、今回のセッションはうちひとつの部署の2回目セッションだった。

 チームビルディングセッションとは何か、というのはなかなか一言では説明しづらい。ライン部署やプロジェクトチームのコミュニケーションやチームワークを強化することによってチームの生産性を高める目的で、ワークショップやブレーンストーミングなどの話し合い、時にはゲームや演習を通じて、チームのメンバー間の相互理解や相互信頼を高め、問題解決を図るプロセス、といえばいいのだろうか。プロセスの中で取り上げられるテーマは、チームが結成されたばかりの時期には互いをよりよく理解し円滑なコミュニケーションを図るための約束事など土台づくりが中心となる。ある程度できあがったチームになると、チーム内のコミュニケーションや協力の程度を評価したり、強み弱みを評価しながら具体的な問題解決を図ったりアクションプランを立案したり、ということになるようだ。管理人の務める会社はそういうケースではないが、合併・買収によって新たに混成部隊となった組織においても、異なる組織文化の融合という目的で行われることがある。

 部署の長が行う会議でもこういう目的の会議はあると思うが、部署マネジャーが議題を立案し議長役・進行役を行う会議では、メンバーが自分の思う通りの意見を積極的に言えないこともあるだろうし、進行役であるマネジャーが会議の進行にも気を配らなければならず、ひとりひとりの意見にじっくりと耳を傾けることに集中できないということもあるだろう。

 そこで、人事部門や社外のコンサルタントにお座敷がかかる。組織開発という部署がなければ、人材開発あるいは社員教育の部署が、その案件に当たることになる。管理人の場合は、たまたま新たに部署を立ち上げることになった新任マネジャーの相談を受けて、こういう仕事をするようになった。

 考えてみれば、依頼してくれた部署のマネジャーは、別の外資系会社で仕事をしてきて、管理人が勤める会社に入ってきた人ばかりだ。外資系とはいいながら日本で事業をしてきて長い当社の生え抜きのマネジャーには、ラインの部署の問題解決はラインのマネジャーの責任という気風が強く、人事部門の介入を好まない。しかし、依頼してきたマネジャーは、おそらく前の外資系の会社で人事部門がこうしたセッションを手伝うことが決して珍しくないのだろう、抵抗がないようだ。

 それと共に、メンバー個々人が高度な専門性を持つ部署やプロジェクト、あるいはシニアマネジメント以上のチームになってくると、チームリーダーが部署の問題解決に必要な知識やノウハウをすべて持っているとは限らない中で、どうチームを活性化しながら運営していくのかという命題の大きさが依頼部署のマネジャーにはかかっていると思う。彼らはいわば、オーケストラの指揮者のように、異なる専門性や価値観を持った人々をリードしていかなければならない立場にある。チームビルディングセッションを依頼する彼らに、その分野の門外漢である私が会議の立案や進行を求められるのは、彼らが指揮者の立場を崩さないままで、個々の奏者がかなでる音をひとつひとつじっくり聞き取り、ハーモニーをつくりだすプロセスに関与することに似ている。

 第三者を入れなくても実行は可能だが、第三者である私がファシリテーターとして入ることでのメリットもある。たとえば、リーダーに不満があったり、チームへの関与の度合いが低い参加者への働きかけ。リーダーに直接言いにくいことも、ファシリテーターが第三者であることで言いやすい雰囲気になったりする。また、人材開発・組織開発の担当者として、問題解決を促すと同時に、より気づきの多いセッションの進め方が可能になる。今まで依頼を受けた部門・部署でのセッションは、この役割が大きいように思う。

 企画には、打ち合わせにたっぷり時間をかける。依頼してくれた部署やプロジェクトチームの歴史、メンバー各々のプロフィールやコミュニケーションスタイル、その部署やチームの置かれている状況や課題、コミュニケーションや協力上の問題点を聞き出した上で、セッションの内容を決めていく。会議に近い進め方の場合もあるし、研修的な要素を盛り込むこともある。たとえば今回は、チーム内の他のメンバーに行動を変えてもらいたいと伝える場合にどう建設的に言うか、意見や気持ちが食い違う時に相手の感情を損ねずにどう自分の気持ちを表現するか、という課題には、講義やディスカッション演習という要素を加えてみた。ただ、研修と違うのは、そのスキルがないからスキルを教えるというスタンスではなく、チーム内のコミュニケーションを円滑に進めたり協力を推進するためには理解とスキルを共有することが重要なのだというスタンスで伝えている。

 この分野のハウツー本は日本語ではほとんど出ていない。最近流行のファシリテーションやファシリテーターに関する本はある程度役に立つが、それは主にセッションの進行役を務める部分に役立つだけで、セッションをどう設計しどういう題材を盛り込むかという企画の役には立たない。で、主にアメリカから結構な数の専門書を仕入れ、それを参考にして、依頼する部署のニーズに合わせながらアジェンダと日程表を書き下ろすという試行錯誤をやっている。

 わずかな経験の中でしか言えないのだが、セッションを成功させる鍵は、依頼する部署の姿勢にあると思う。

 まず、企画の段階で、どれだけ依頼する部門の長がこのセッションを重要と思い、関与するかが大きい。部下にその打ち合わせを委任する場合には、そのチームのナンバー2ないしは参謀役に出てきて欲しい。リーダーの思いをよく理解すると同時に、チームの中で何が起こっているのか、今何がチームの中で問題になっているかを客観的に把握できるメンバーからたっぷりヒアリングすることで、適切なアジェンダや時間配分ができる。また、進行にあたって気を配らなければならないメンバーは誰か、発言を促さなければならないメンバーは誰かという情報も重要だ。

 また、パッケージ化された研修ではなく、議題や時間配分は会議の様子によって柔軟に変える必要があるため、依頼部門とファシリテーターの側に信頼関係が必要だ。また、その場で眼と眼で変更に合意することが少なからずあるため、会議の中でどういうグループダイナミクスが生じているかという見極めが依頼部門の長とファシリテーターの間でできていなければならない。場の雰囲気を読む力が、ファシリテーターにだけでなく、部署の長に必要だということだ。

 まだまだ試行錯誤の段階ではあるが、単なるトレーナーの仕事よりずっと奥が深く、また依頼する部署の問題解決に直接関われるだけに難易度が高く、面白い。