行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

イージーライダーで起こったことが・・・

2007-08-23 12:44:11 | 映画

 ビデオに撮っていた「イージーライダー」(1969年米国)を見た。ピーター・フォンダ、デニス・ホッパーが演じるアメリカ人ヒッピーの若者二人が主人公の青春映画である。主題曲となったステッペンウルフの"ワイルドで行こう♪"

という軽快な曲は、今でもコマーシャルで使われているくらいなので、この映画を見たこともない世代の方々でも聞いたことはある筈だと思う。

 映画の前半は、チョッパーと呼ばれる前輪の長いバイクで、アメリカ南部の美し風景と数々の音楽をバックに、ゆったりと旅するアメリカのライダーを描いた綺麗な映画なのだが、後半は、当時の南部アメリカ保守社会が持つ偏見を描いた怖い映画なのである。途中、出会った地元の有力者のアル中の馬鹿息子役のジャック・ニコルソンと共に、旅を続けるのであるが・・・。とある田舎町で、地元の人間から白眼視された上に、結局は3人とも殺されてしまうという、アメリカ映画としては、悲劇で終わる珍しい映画なのである。

 この映画から数年後の1977年頃、私は日本人の友人達と3人で、車でアメリカ南部を横断した経験がある。メキシコから北上して、テキサス州エル・パソからアメリカに入り、ニューメキシコ、アリゾナからカリフォルニアに向かったのであった。その途中、Back Eyeなる白人しか見当たらないような小さな町のカフェテリアというかレストランに、休息と昼食のために入ったのであるが・・・。

 一人を除いて、長髪でヒッピーのような薄汚い私達を店で待ち受けていたのは、カウボーイハットを被った地元の客である白人達の冷たい視線だった。「何しに来たんだ?こいつら!」とあからさまに思っているような、凍るような冷たい視線であったのだ。私は、完全に固まってしまい、椅子に座るのがやっとだった。それは、映画「イージーライダー」のシーンを思い出してしまったからだった。正直、私は殺されると思ったのである。

 そこへ、エプロンを巻いたごつい男がメニューを持って「何がほしい?」と聞いてきた時には、助かったと思ったのである。映画では、店の人間は注文さえも取りに来なかったからである。私達は、サンドイッチやコーヒーを注文し、無言で食事をした。私ばかりでなく、他の二人も怖かったからである。そうして、さっさと勘定を済ませ、逃げるようにこの店を出たのであった。

 「やばかったよなぁ!」

 「ああ、殺されるかと思ったよ」

 「俺もだ」

 「早くこの町を出ようぜ!」 

 ところが、ガソリンが残り少なかったのである。

 「どうする?ガソリンがもう無くなるぞ!」

 「次の町まで持つかなぁ?」

 「無理だな。ガス欠で途中で止まったら、今度は本当に殺されてしまうかも。」

 「そうだなぁ。仕方がないから、町外れにあるガソリンスタンドで入れて行こう!」

 てな訳で、そのガソリンスタンドに入ったのだが、店員は誰もいない。と、思ったら、どこからかスピーカーで「セルフ・サービスだ!」との声が聞こえた。事務室側を目をこらして見てみると、望遠鏡でこちらを観察している男が確かにいる。更に、よ~く見ると、その男の後ろにはライフル銃が置いてあるように見える。

 「さっさと、ガソリン入れて出ようぜ!」

 私達は慌てて、キャップを外してガソリンを入れ始めた。「カチッ」と満タンの音がして、給油ノズルを戻した途端、「XXドルだ!支払いは事務室だ!」との声が再びスピーカーから聞こえた。年長者が慌てて支払いに行き、戻って来て一言

 「やっぱり、ライフル持っていやがる。さっさと、この町を出よう。殺されちまう!」

 町を出て、しばらくは無言だった私達だったが、次の町が見えたとき、「助かったね!」「そうだ助かった!」と初めて笑いになった。

 でも、僅か数年前までのアメリカ南部は、「有色人種と犬の入店はお断り」と書かれた張り紙が所々見られたような土地なのである。勿論、今ではとても考えられない話ではあるのだが・・・。

コメント (8)
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