私の大好きな短編小説「ラブレター」を書いた浅田次郎氏が、
18年ほど前に発表した作品の文庫版です。
巻末にある解説文によると、当時極道作家系であった浅田次郎氏が、
大作家として飛躍したきっかけになった一冊なのだそうです。
ストーリーは、現在価値200兆円にものぼるマッカーサーマネー、
いわゆるM資金を巡る歴史ミステリー小説のような内容なのですが、
このジャンルの定番であるハッピーエンドでは決して終わらせずに、
徹底抗戦しようとする一部の軍人達による終戦前夜のクーデター場面や
少女達の集団自決という衝撃的な結末も出てきて、
戦争を知らない我々読者に今の時期というものを
一人の日本人として改めて見直すよう
やんわりと再考を促しているようにも思える秀作でもあります。
それにしても、浅田作品は、どれもこれも
一旦読み始めたら、すぅ~と引き込まれてしまいます。
それは、浅田文学の登場人物の生き生きとした
人物描写魔術のせいなのでしょうか。
この時期、電車の中で読むお勧めの一冊です。