服部龍二氏著作の広田弘毅-「悲劇の宰相」の実像」(中公新書)
を読み返してみて、中国共産党政府や人民解放軍が、
戦前の日本政府や旧日本軍と同じような道を
歩んでいるように思えてきた。
本書の内容は、「満州国成立の正当化」という日本の旧軍部による世論操作や対中国強硬姿勢政策に始まった潮流に、当時の首相であった広田弘毅だけではなく、マスコミなどのメディアを含めて多くの国民までもが流されてしまい、ついには国際社会の中で日本という国が国際的に孤立し、強硬姿勢を貫くという選択肢しか無くなってしまっていたという社会風潮を作り上げしまった様子が詳細に描かれている。
この状況が、今の中国政府や人民解放軍の対日強行姿勢政策で、日本に対して行っているやり口に非常に酷似しているのである。むしろ、かつての日本が誤ってしまった歴史上の愚行を、中国政府や人民解放軍が繰り返そうとしているようにも思える。
沖縄までもが、中国の領土だと日本国民が住む日本国領土にまで、明らかに侵略国の挑発的な暴論を平然と述べてみたり、南方の南沙諸島のベトナムやフィリピンに対しても同様な威圧と軍事行動を繰り返し行うなど、戦前の日本政府や旧日本軍の中国侵略や南方進出を彷彿させる言動と行動である。
戦地にも行って従軍経験のある老父が、
数年前に「昭和初期のいや~な雰囲気に似ているなぁ・・・」
と呟いていたことを思い出した。
ちなみに、ご存じのとおり、戦前の日本は、こういった政府や軍部の対中強硬姿勢に加えて、報道機関としての報道の自由やその独立性さえをもまったく喪失しており、現在の中国の報道や言論の統制なども戦前の日本に非常に酷似している。
当時の日本の新聞やラジオなどのマスコミの報道は、今のTVよりも絶大な影響力を持っていたことで、日本国民総意の世論となってしまい、あの戦争に突入したと言えるであろう。
今の中国は、まさに自国民である中国国民に対し、対日強硬姿勢を公言し、公器であるTVや新聞などのメディアまでもが、公然と反日報道を繰り返し、従来の反旧日本軍教育に加えて中国国民に向かって今現在の日本に対しても強硬姿勢を伝え始めたばかりなのだ。
今日の日中両国民は、戦争をまったく知らない50代の私をはじめ、終戦当時まだ幼児であった70歳程度の方々を含め、戦争を知らない世代が、もう既に社会の大多数を占めている。そんな中で、日中両国民が、日本が過去に於いて破滅的な戦争に邁進してしまい、結果として数百万人もの人命を奪い、日本のみに留まらず近隣諸国までをも荒廃させてしまった歴史の経緯を正しく検証し、それこそ中国政府自らが自国民に対して、その愚行を真似せず、暴走をしないように正しく次なる若い世代に正確にその真実を伝えることは大変重要な事であると痛感するのだが。
報道機関としての最も大事な報道の自由や独立性の全く無い中国では、今現在でも政府によってすべての新聞、TV、インターネットなどが管理統制され、また政府自身が発信するプロパガンダ報道や統制強要された反日教育が今でも続いている未開国家なのである。
こんな、野蛮とも言える自由と民主主義の無い中国という未開国家が、自らの国民に対して隣国諸国に対して強硬姿勢を示すことを当然だという強いメッセージを流し続ければ、一気に戦争に突入して行こうという国内世論があっという間に形成され、それが結果として日本がかつて犯してしまった破滅への道程を辿る可能性は皆無とは言えないのだ。願わくばそうならぬよう心より願うばかりだ。
戦争とは、この様に時流、潮流を一旦作り出してしまうと、その狂気の中では、もう誰もが理性を持ってして止めることが出来なくなる程の国論が形成されてしまい、結局は知らず知らずの間に突入してしまうのだという事が、実に良く分かる貴重な一冊として是非お勧めする書籍である。