グローバル・スタンダードとは、結局は投機だけを目的とした国際的なファンドマネーや、株式を単なる投機目的としか見ないハゲタカファンド達、いわゆる投機マネーが国境の壁を無くして移動し易くする為だけの国際基準であったような気がするのです。
彼等の非生産的で、横暴で、かつ傲慢な考え方によって、アメリカ、英国、日本を初めとする先進工業国の法律家や政治家をその豊富な資金で操り、懐柔させて自分たちの都合の良い法改正をさせた結果のような気がしてなりません。
1929年の大恐慌も、結局はアメリカの経営者達が株や不動産投資に明け暮れて本業である物を作るという基本を忘れて安易な儲け話に夢中になった事が原因でした。20年ほど前に日本で起こったバブル経済もまったく同じでありました。そして、今回起きた世界金融不安の発端も、サブプライムローンとそれを金融工学によって複雑に隠蔽して組み込んだジャンクボンド(クズ債)に多くの企業の剰余資金や年金資金などが、楽をして儲けようと高配当を目指して群がった結果だったのでした。
そして、それらすべての原因に銀行、投資銀行、証券会社といった金融機関が必ず絡んでいたのでした。
本来、金融は事業の取引決済機能と拡大投資の為の融資機能を持った産業の補助的機関であり、子会社や関連会社を通じて投機に加わってはならない筈です。また、株式市場とは、株式の発行により事業資金や生産財などの投資資金を調達する為のものであり、投機マネーによって成り立つ市場であってはならない筈です。まして、自らが”手張り”(自己資金で投資する事)などは行っては絶対にいけない筈なのです。
ところが、投機マネーは目先の利益である短期スパンによる利益や配当しか考えませんから、企業の中長期的な経営計画などを到底認める筈も無く、「利益を出せ!配当額を上げろ!」と経営陣に迫るだけの強欲な目先の利益だけを追求する集団なのです。ですから、アメリカや英国では、かつて存在していた多くの優れた世界的な製造メーカーが結果としてどんどんと消え去ってしまったのでした。
このような方向に進もうとしている今の日本政府と日本の一部製造メーカー、それに英米方式の経済倫理を立法面から支えた一部政治家の皆さん方にも責任の一端はあるように私は思うのです。幸い、日本はまだまだ多くの世界的な製造メーカーを沢山残しており、その製造メーカーが成長するのを皆が期待し、歓迎し、育成しようとする文化的な土壌が残っていますから救いようがあるのですが・・・。
しかしながら、英米系の投機ファンドマネーを税制面で優遇させて、株価を復活させようなどと、強欲な金融ファンドに感化されている一部の政治家、著名なエコノミスト、そして企業家がまだまだ台頭していますから、日本からも優れた製造業が消え去る運命は未だに否定できないと私は考えています。
実際、今年4月から株式投機によって得られる利益、つまり株式譲渡益に対する実効税率を現行のおよそ40%から無税にするのだそうです。確かに、この優遇税制を行えば世界の投機マネーを一時的に日本の株式市場に呼び込むことができるでしょう。そして、一時的には株価は上がるかもしれません。しかし、中長期的に見れば、結局はその投機マネーは、儲けるだけ儲けて、さっさと国境を越えて逃げて行く運命にあるのです。日本の地に根付くような投資マネーでは絶対に無いのです。ましてや、大量の投機マネーが何かの拍子に一気に逃げ出せば、日本株と日本円は暴落し、投機マネーによって日本経済が大混乱することもあるかもしれないのです。
このような短期スパンしか考えない強欲な株主を持ってしまう企業は、中長期的な経営戦略を組むことが出来なくなり、巨大な国際弁護士事務所とのとてつもない高額な法務コンサルタント契約を結ばざるを得なくなります。そして、M&A対策やら株主対策やらに追われ、怯える日々が続き、企業本来の物を作るという本質から次第に遠ざかってしまうのです。そしていずれは・・・・なのです。
例えば、仮に1年目1兆円、2年目に2兆円、3年目に4兆円、4年目に8兆円といった倍々ゲームのような投機資金が流入したとします。もし、株式譲渡益を無税にすると、これからはこの15兆円の投機マネーは、儲けるだけ儲けて、税金さえも払わずに一夜にして日本から逃げ出すことが出来るのです。ですから、これらの投機資金を呼び込む事は、一過性の株価高の効果はあっても、最悪のシナリオでは、株価は大暴落し、企業は潰されるといった日本という国家そのものの存亡さえも揺るがしかねない事態にならないとも限りません。
そんな事態は絶対に避けなければなりません。今現在、株価は更に暴落しており、この株価安値を何とかしようとする産業界からの要望もあり、この対処療法を望む声は多いと思いますが、これはまさに日本亡国への最悪のシナリオです。もし、この株式譲渡益無税化を許してしまえば、日本産業、日本経済は必ず崩壊します。
では、一体どうしたら良いかと言いますと、先ほどの例での投機マネーの流入に対して、例えば1年以上のスパンで運用させる投資資金に変えさせれば、2年目に逃げ出せる資金は最大でも7兆円に抑える事ができます。更に、この投資運用スパンを2年に引き上げると、15兆円の累積投資資金のうち、最大でも僅か3兆円、つまり最大でも投資残高の僅か20%の資金しか突然に逃げ出す事ができない仕組みが生まれるのです。これに合わせて、譲渡益の優遇度を累進的に上げて行けば良く、5年以上の投資をしたマネーに対して、始めて無税という特権を与えても良いと思うのです。
例えば、1年未満の投資(投機)資金に対しては現行の40%の譲渡益課税を堅持し、1年~2年では30%、2年~3年で20%、4~5年で10%、5年以上で無税とすれば至って簡単です。つまり、儲けるだけ儲けて逃げる資金に対しては”それなりの税金は払って下さい!勝ち逃げは駄目ですよ!”と警鐘をを鳴らすことが出来るのです。ところが、もし株式の譲渡益課税を完全無税化すると、莫大な国際間の投機マネーが1銭の税金を払うこともなく、日本経済を食いものにするだけした上で、さっさと逃げて行くという、悲惨でまったく馬鹿げた結末だけが待っているのです。
以上の事から、現在の自由な国際的な資金の流入に関しては、今後は少なくともすべてを届出登録制にして、流出に関しては許可制(1~2年間、確実に流入資金を運用したかの確認だけの審査で済むような簡単な許可制度で構わないと思います。)にしなければとても危険だと思います。そうしないと、国家間の巨額な投機マネーの動きを牽制することが出来ません。また、このような制度があると少なくとも投機マネーの多くは衣替えをして、数年間は投資先で運用するような、結果として本当の投資資金に変わらざるを得なくなります。そして、このようなに健全化した本来の国際的な投資資金のみが、国境を自由に往来出来るような秩序のあるグローバル化した投資経済になって欲しいと私は望む次第なのです。
この規制を行うには、今のような株式市場が低迷している時期が絶好のチャンスだと思います。市場経済の保護主義化との意見もありましょうが、私はそうとは思いません。非生産的で横暴、かつ傲慢で、そして暴走する投機マネーに対する単なるルール作りなのですから。
もし、今年2009年中に彼等の様に暴走する投機ハゲタカマネー達の国際間の往来を法的に健全化できなければ、おそらく何年後か何十年後かの未来に、私達はまた再び同じ過ちを繰り返すと私は思うですが・・・。
おっしゃるとおりですね。本末転倒ですね。
日本の昔話に1日に1個しか生まない金の卵を産む鳥の腹を割いて、もっと金の卵を取り出そうとして鳥を殺してしまった、強欲爺の話があります。、投機的な株主は、この強欲爺に似ているような気がします。
が、一度おいしい思いをすると人間はそれを続けたがるものなのでしょう。
難しい問題だと思います