行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

上陸特別許可(シリーズ第20回)

2009-03-24 01:40:55 | 行政書士のお仕事

 入管法の第5条には、いわゆる入国拒否に該当する外国人について書かれてあります。例えば、以下のような外国人は入国(上陸)を拒否されます。

 1.政令の定める感染症患者

 2.省令が定めるものが随伴しない著しい精神能力の不十分な者

 3.貧困者、放浪者で地方自治体の負担のおそれのある者

 4.1年以上の懲役又は禁固刑に処せられた事のある者

 5.麻薬、大麻、覚醒剤、向精神薬等の取締に関する法令に違反して刑に処せられたことのある者

 5の2.フーリガン

 6.麻薬、大麻、覚醒剤、向精神薬や吸引器具を不法に所持する者

 7.売春又はその斡旋、勧誘業務に従事したことのある者

 7の2.人身取引等を行い、又はこれを助けた者

 8.銃刀法などを不法に所持する者

 9.イ.上陸拒否者で、拒否されてから1年間経過をしていない者

   ロ.退去を強制された者で、退去から5年経緯かしていない者

   ハ.第24条により退去された者で、退去から10年を経過していない者

   ニ.出国命令により出国した者で、出国から1年を経過していない者

 9の2.窃盗などの刑法犯で、判決確定日から5年を経過していない者

10.24条4号の政治的な破壊活動もしくは暴力活動により退去強制された者

11.政府を暴力により転覆・破壊することを主張する団体の構成員又は結成者

12.公務員を暴行・殺傷したり、公共施設を損傷・破壊したり、或いは、安全保持施設の運行を妨げるような団体と関係を有する者

13.政府転覆目的の印刷物、映画、文書などを作成し、頒布することを企てる者

14.その他法務大臣が公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる者

 以上に該当する外国人は、原則として日本への入国を拒否される事になります。しかし、日本人と婚姻しているような場合で、かつ、法務大臣(実際は、入国管理局の担当官ですが・・・)が、特別に上陸(入国)を許可すべき事情があると認めるときには、法律では入国(上陸)が出来ない外国人に対してでも、特別に入国を許可する事があります。それを担保する証明書がこの赤字で7-1-4と加筆された在留資格認定証明書です。

Img081030

 この証明書を根拠に、在外日本大使館で査証(ビザ)の発給を受けることができます。この赤字の意味は、入管法第7条第1項4号にある”当該外国人が第5条第1項の各号にいずれも該当しないこと。”つまり、前述の上陸(入国)拒否理由に該当しませんよ!という意味なのです。どうしてかと言いますと、上陸拒否者は当然に拒否者リストに掲載されていますから、たとえ入国管理局から在留資格認定証明書が交付され査証(ビザ)を発給してもよい旨の指示が出ていたとしても、上陸拒否者ですから明らかに法に矛盾します。そこで、そういった入国審査上の混乱を避ける為に、敢えて赤字で加筆して”入管法12条の上陸許可を出しますから、5条1項各号の上陸拒否者にはもう該当していませんよ!つまり7条1項4号対象者ですよ”という注意書きなのです。

 更には、入国(上陸)の際に入国審査官とトラブルとならないよう、予め該当上陸者のフライトスケジュールを入国管理局に知らせることになっています。

 法律上は、入管法第5条第1項の各号が定める上陸拒否理由を立てにして入国拒否もできるのですが、特別な事情があれば認めるという柔軟な判断をして貰える、ある意味では話の分かる役所でもあるのです。但し、ほんの6~7年前までの入国管理局は、世界的にも至って評判の悪かった事を考えれば、ある意味では今現在は大変柔軟性のある官庁に変身したような気がしています。

 以前、とある弁護士さんは、入管は裁判で負けそうになったら許可を出してくる、などと言っていたのを思い出しました。しかし昨今では、逆に最高裁で原告側が敗訴し、国(入管)側が勝訴したケースでも、入管当局が自主的に再考して、特別に原告外国人に許可を出すケースもときどき出ているように、昨今の改善されたお役所としては、私個人としては最も評価の高い官庁です。

 なお、入管法50条を根拠とする「在留特別許可」や、やはり同50条が根拠なのでしょうか、明らかに入管当局の情けをお願いするという「再審情願申請」など、法令に一切書かれていない手続を通じて、法律上は強制退去処分となる外国人を法務大臣(実際は、入管当局)が特別に斟酌する事情があると判断すれば、特別に在留を許可することが出来るという、ある意味では外国人に対して、超法規的な処分さえも下せるのが入国管理局という官庁なのです。それが国家の自治権であり、裁量の範囲内であるという、良い意味での通説になっているようです。   

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