平成20年に行われた行政書士試験の合格発表がありました。合格率は全国平均で6.47%、合格者数は4,133人だったようです。10年前平成10年に私が受験した時がそれぞれ5.85%、1,956人で合格率がほぼ同じですから、10年前と比べて受験者数、合格者数が約2倍という結果のようです。
合格できた方、先ずはおめでとう御座います。そして、独立開業をお考えの方、この前の第1回目に遡ってご覧頂ければ幸いです。また、あと一歩及ばなかった方、どうか諦めずに頑張って下さい。そして、合格するその日の為の準備としてお読み下さい。
さて、行政書士としての専門性を見つける話の前に、これから行政書士として独立開業しようとお考えの方々に、最初にどうしても申し上げたい事が3点ほどありますので、それを先に書きたいと思います。
先ず第1点目ですが、他士業の法律が禁止している業務を、決して業務として侵犯しないことです。裁判所手続の代理及び裁判所に提出する答弁書などの書類作成、金銭貸借や債権回収、慰謝料・損害賠償等に関わる交渉の代理、特許・意匠登録・実用新案の申請の代理、登記・供託の申請の代理、所得税・消費税の申告の代理、社会保険・労働保険の申請の代理等々です。
これらの業務を行うと、弁護士法、弁理士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法にそれぞれ違反し、最悪の場合には逮捕・起訴されて、行政書士として失職します。
しかしながら、行政書士は、上記の他士業法が定めた独占業務以外は扱えるのです。更に驚くことに、上記の他士業法他が定めた独占業務とその非独占業務以外すべての行政手続が行政書士の独占業務となるのですから驚きです。
このように、実に恵まれた環境にあるにも関わらず、年間数人かの同業は、弁護士法違反などで逮捕・起訴される者が後を絶たないようです。誠に残念な事です。
ここ数年、社労士さん、司法書士さんなどでも、行政書士試験に果敢に挑戦して合格されて登録される方々が急増しています。また、税理士さんの行政書士会への登録入会も昨今急増しています。それは、我々行政書士の職域がとてつもなく広い事を、他士業である社労士さん、司法書士さん、税理士さん達は良~くご存じだからです。
ですから、何もお隣の芝生の色を気にしたり、羨ましがる必要などまったくありません。先ずは、自分たちの膝元にある業務が何なのか、何ができるのかを知ることが最も大切なのです。それさえも知らずに、ダブル・トリプル資格を持っていても猫に小判、豚に真珠となること間違いなしです。まして、無資格で他士業の独占業務に侵犯する違法行為などは言語道断です。
第2点目ですが、虚偽の申請を決してしないことです。”すこしだから良いだろう”、とか”今回だけはやむを得ない事情なので目をつぶる”とかいう考えから、2度3度と罪を犯して行くのです。かつて、東京都行政書士会の某支部長を務め、東京都行政書士会の会長選にまでに立候補した御仁もおそらくそうであったのであろうと想像されます。しかし、虚偽申請は、有印私文書偽造などで立件・起訴される立派な犯罪です。たかが1回だとか、ちょっとだけなどと思ったら、もう士業としては完全な失格者です。
依頼人である、一部の中小企業の経営者中には「まともにやって申請ができねぇんだからよ!おめぇらみてぇな代書屋に金払って頼むんだよ。法律がどうのこうの言うんだったら馬鹿でも言えるんだよなぁ。だからよ、そこを何とかするのがプロって言うもんじゃねぇのか?」なんて、とんでも無い事を平気で言う輩がいます。
そんな時には、「あははは・・・、面白い事をおっしゃいますね。確かに1億円程頂戴できれば、やるだけの価値はあるかもしれませんねぇ。まさか数百万円程度のハシタ金でやってくれなんておっしゃる訳じゃないんでしょうねえ?数千万円貰ったって、退会処分になったら割は合いませんよね!社長。」なんて、途方も無い金額を言ってやりましょう。どうせ、払える筈も無い訳だし、そんな仕事を受けるつもりも無いのですから、からかってやりましょう。実際に昔あった話ですが、偽装結婚の相手を紹介してくれたら200万円払う用意がある、なんて電話で言って来た外国人がいましたが、2億円貰ってもやらないよ馬~鹿!と言い返した事が本当にありました。
最後の第3点目として、士業の資格を金儲けの道具として考えて欲しくないという事です。金儲けをするのであれば、士業としてではなく、会社を経営するなりして、そこで営利追求すべきだと私は思います。行政書士法をはじめとする各士業の法律では、私達士業者に対して特別な職務権限が与えられています。それは、決して私たちの利益や権益保護の為では無く、私達を利用する依頼者である利用者の利益保護の為の職務権限である筈です。
ですから、私達士業者は、依頼者の為にその与えられた特別な職務権限を、自分自身の金儲けのためではなく、依頼者の為に使うべきなのです。ところが、意外にそこを勘違いしている方々が多いと思うのです。この与えられた権限を金儲けだけに使おうと画策する人々が残念ながら未だに多数いるような気がしてなりません。XXの資格で000万円稼ぐ方法!とかの文字が躍っているのを見る度に、こういった勘違いしている人々が、この業界で何年も生き延びてゆけるような士業界であってはいけないと、いつも思うのです。
正直に申し上げれば、この行政書士の仕事による私の収入は、未だにサラリーマン時代より少ないのが現状です。しかし、こんな素敵な仕事はありません。なぜかって?それは、必ず「先生、この度は本当にありがとございました」と心からお礼を言われて報酬を頂戴できる仕事だからです。それは、サラリーマン時代では決して味わうことの出来なかった感動なのです。なかには、涙ながらにお礼を言われ、未だに年賀状やお歳暮を頂戴する方々も多々いるのです。ですから、こんな素敵な仕事に就けて、私は本当に幸せだと思っています。もしあなたが、お金儲けだけをお考えであるのならば、この行政書士の仕事、いや士業の仕事には不向きである、と私は思うのです。また、そうあって欲しいと思います。
少なくとも、私はサラリーマン時代に比べれば、この仕事に就いてからは、もしかして地獄へではなく、天国へ行かせて貰えるのではなかろうか、などと本気で思っているのです。
まあ、冗談は兎も角として、次回からは独立開業には欠かせない、行政書士としての専門性に関わる具体的なお話をして行きたいと思います。
私も今年脱サラ開業を目指している者です。
中村さんの言うとおりだと思います。
私も開業の際には肝に銘じて頑張りたいと思います。
中村先生がいつも言われていること、そのままだと感じています。
「コンプライアンス」「顧客価値の最大化」
それを肝に銘じて業務を遂行していかねばなりません。
人から感謝をされて報酬を得る・・・素晴らしいことです!
私も、中村先生が思い、言われるような行政書士になりたい!!
そう強く感じました。
お久しぶりです。行政書士として理念にご賛同頂きありがとうござます。是非お仲間になって下さい!お待ちしています。
私も11年前まではサラリーマンでした。今思えば、人間的にはまったく失格だったかもしれません。
この仕事、決して最初からこうしようと思って始めた訳ではなかったのです。しかし、結果として人の為になる仕事が幾度もあって、私の人生観を変えてくれました。それがこの行政書士という素敵な仕事だったのです。