もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

破壊措置命令の遂行について

2018年07月03日 | 軍事

 防衛省は、北朝鮮の弾道ミサイルに対処するために執られていたイージス艦による常続的滞洋監視体制を、乗員の労度軽減等の理由から取り止めるものの、破壊措置命令は継続されることを発表した。

 これにより、北朝鮮からの突発的なミサイル発射に対しては陸上配備のPAC3のみが対応することとなる。基地港湾に停泊するイージス艦から要撃すれば?との意見もあると思うが、問題点が多く実施は困難ではなかろうかと推測する。なぜなら、イージスシステムを常時作動させて警戒監視するためには対空レーダ(フェーズドアレイレーダ)を使用する必要があり、イージス艦の高出力レーダはテレビ等の商用波に干渉・障害を起こすことが予想されるからである。更には、北のミサイル発射の前兆を得て緊急出港すれば?との声も聞こえそうであるが、護衛艦が出港するには、大多数の乗員が在艦しているという場合において全ての手続きを簡略化若しくは省略したとしても1時間で出港できれば良い方で、乗員が上陸(外出)している場合や、機関を含む装備兵器の保守点検を行っている場合には更に多くの時間が必要となる。発射後10分程度の余裕しかないミサイル対処にあっては1時間もの時間は致命的であると思う。更に考えねばならないのは、港湾からの実弾発射が容認されるか否かの法解釈である。現在の訓練射撃・発射は、遥か沖合の指定海域で訓練時間を告示して行っている。飛翔体の不具合等による近傍民間施設への被害を考慮すれば、港内からの実弾発射にはクリアすべき多くの問題があるのではとも思うものである。

 通常、護衛艦は、ガスタービン推進艦では出港時刻の約2時間前から、蒸気タービン推進艦では約4時間前から機関の準備作業に入る。以後操舵装置や補助システムの試験、推進機関の試運転を経て出港・航海の態勢を整えていることも広く知って欲しい点である。また、雲仙普賢岳対応のために停泊待機を命ぜられた際の極めて個人的な所感であるが、いつ緊急出港の命令が来るかと緊張して、おちおち家族団欒にも溶け込めない状態におかれるよりも、却って海に出た場合の方が、精神的には楽だったことをも思い出している。