昨春、朴槿恵大統領の罷免要求デモ多発時に韓国軍部内で戒厳令の発動が検討されていたと報じられている。
戒厳令とは、非常事態において司法や行政の権限の一部を一時的に軍が掌握・代行することによって個人の権利をも制限して社会秩序を維持するものと理解している。日本では帝国憲法下の2.26事件の際に首都圏に限って発動されたことがあるだけで、現在の日本には法的に存在しないものの外国の例では軍事クーデターと同時並行して発令されるもので、そう珍しいものではないと思っている。韓国の例に戻ると、騒擾の拡大に備えて軍内部がケーススタディーしていたもののようで、最高指揮官の命令に即応すべき軍隊組織としては極めて妥当な対応である様に思われるが、”積弊清算”として前政権の完全否定が慣行とされている韓国ではそのようには受け取られていないようである。かって、社会党が唱える非武装中立・自衛隊違憲が大手を振って横行していた時代、防衛出動発令時の行動を勉強していた陸自の「三ツ矢研究」がクーデター準備として物議をかもしたことがあったが、今にして思えばお笑い種の主張であったものの社会党政権誕生が現実味を帯びていた世相では、社会党が軍事クーデターを恐れたのはやむを得ない側面があったように記憶している。現在戒厳令的に個人の権利を制限するものとしては地震災害等に対する高速道路の使用制限に関する特例法があるだけのようであるが、東日本地震災害や今回の広域水害では、避難して無人となった住居に対する空き巣被害等が報じられていることを思えば、日本でも夜間外出禁止令くらいは準備しておくべきではないだろうか。厄災や騒擾時に善人と悪人を見分けることは不可能で、夜間に横行するものは十把一絡げに悪意を持った人間とみなす非常手段も許されるのではないだろうか。
有事法制の必要性が叫ばれるものの一向に進まない一方で、テロの危険性は日増しに増大している現実を考慮すれば、日本にも戒厳令に関する法整備は必要なのではないだろうか。”転ばぬ先の杖””泥棒を見て縄を綯う”と古人は戒めていると思うのだが。