中国が、年間40兆円に及ぶ対米貿易黒字を22兆円圧縮する案を米国に提示したと報じられている。
貿易黒字の圧縮は農産物や天然ガスの輸入拡大によるものと報じられているが、農産物の単価や米国のエネルギー政策を考えれば現実的ではないと観測されている。過去の日米貿易摩擦では鉄鋼製品や自動車の輸出削減、農産物の関税引き下げと・規制緩和とともに、日本が提案したアラスカ産原油の輸入拡大提案は拒否されたために、海自イージスシステムと空自戦闘機の購入で解決した経緯もあることから、中国の輸入拡大、特にエネルギー資源の大規模拡大は不可能と予想される。中国の輸入拡大策として残るのは日本が次善の策とした高価な重・軽工業産品の輸入であるが、軍需品はもとより軍事転用可能な民生品(デュアルユース)やハイテク機器の輸入については、安全保障上の制約があるのみならずアメリカ(全世界?)が危惧する知的財産の漏洩に繋がるものであり、この面での輸入拡大も不可能であると思われる。しからば、中国が実現不可能が確実視される輸入拡大案を臆面もなく提示でき、アメリカも一定の理解を示しかと云えば、米朝首脳会談の実現のための強力な切り札を中国が握っていることを米国に示した結果ではなかろうかと推測できるものである。いま北朝鮮は、南北閣僚級協議の中止や核実験施設の廃棄における韓国報道機関の拒否等で韓国を揺さぶっている。時を同じくして、同根の中国がアメリカに働きかけることは充分に考えられることであると思うのだが。
日本の報道機関は、アメリカにおける昨今の動向のすべてを中間選挙と結び付けているが、共和党・民主党のどちらが議会の主導権を握ったとしても、議会はアメリカの利益と国威のためには大統領を支持するものであり、中間選挙を過大に評価しがちであると思う。中間選挙は再任を狙う大統領にとっては重要であるが、外交の全てに決定的な影響を与えるものではないと思う。米国民主党=立憲民主党と考えがちであるが、ベトナムに介入したのは民主党政権下であることでも明らかなように、民主党と雖も武力行使に躊躇しないことを知るべきであると思う。