中國海軍空母の2番艦「山東?」の試験航海が始まり、来年には就役かと観測されている。
本日は、海軍若しくは海事関係用語の解説です。四方を海に面している日本で、余りにも海事関係用語が等閑にされている現状を残念に思っていましたので、ご参考までにお付き合いください。艦艇の建造は、海軍工廠(軍の施設)で行われる場合を除いて、官(海軍)の監督の元に造船所が建造に当たり、代表的な例では大和型戦艦の1番艦「大和」は軍指揮下の呉海軍工廠で建造され、2番艦の「武蔵」は三菱重工長崎造船所で建造されました。表題の「海上公試」ですが、建造所の如何を問わず、建造された艦艇が官の要求性能を満たしているか否かを実際の航海において試験するもので、官の検査官(海事協会の代行自衛官)が同乗して行われます。官の検査官の審査を受ける前に、建造所が社内独自で試験する場合もありますが、その場合は「海上確認運転」若しくは「確認運転」と呼称されます。さらに「公試」は、試験する対象別に、武器(火器)公試、電波公試、運転公試(機関・船体・運動性能の確認)等に分けて使用される場合もありますが、総計で1年ほどかけて数十回行われます。公試中の艦艇は国有財産ではなく建造所の所有物であるため、航海中は艦尾に自衛官旗ではなく国旗を掲げて国際法の定める軍艦ではないことを表示するとともに、海技資格を持つ造船所員によって運行されています。この公試で得られたデータで艦艇としての適格性を審査する就役条件審議の判定を経て引き渡し・自衛艦旗授与式が行われ艦艇は国有財産として自衛艦に編入されることとなります。商船にあっても監督官が日本海事協会に代わるだけで同じ手続きで建造されます。
中国の建造・就役手続きの詳細は分かりませんが、類似の方法が採られているものと思われます。それ故に、報道でも試験航海ではなく「公試」という言葉が使用され、視聴者も艦艇建造の進捗度を正確に把握できるようになって欲しいと願うところであります。