政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」等に対する自民党提言案が党内決定されたと報じられた。
防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画は、自衛力整備の方向と限界を設定するもので、武力の発動と並ぶ政治(文民)統制の双璧と位置付けられるものと思う。提言の特色は、防衛費のシーリングをEU諸国並みの対GDP比2%以内まで増額、島嶼防衛の拠点となる多用途運用母艦の整備、F35B戦闘機の導入であるとされており、眺めてみれば軽空母若しくは強襲揚陸艦の保有を目途としたものであることは一目瞭然である。前にも書いたように海上兵力の整備には少なくとも計画から5年以上の期間が必要であり、戦闘機運用の実績・経験がない海上自衛隊としては一足飛びに最新装備と未知の作戦運用を余儀なくされる。「いづも」型護衛艦を改修・運用して慣熟を積むことになると思うが、航空機が空自機であることから艦体構造・指揮管制・用兵思想・補給上の制約が多く「改装いづも」は”浮かぶ滑走路””中継基地”的な役割しか果たせないために、空母運用の慣熟には期待できないのではと危惧するものである。あの中国にしても空母を保有するためには、改装したソ連空母で慣熟し、アメリカのカタパルト・着艦装置技術を盗用し、総力を挙げて開発しているのが実情である。残念ながら日本では、軍事技術開発に国費を投入することができない、軍事技術開発への学会の協力が得られな等、空母の運用はおろか建造すること自体に多くの制約があるのが実情である。
「防衛計画の大綱改定提案」のうち海上兵力整備について述べたが、中国の覇権主義や北朝鮮の核恫喝に対処するためには、幾多の困難があろうとも作戦の拠点・核となる海上兵力は整備すべきであると思う。先行して民意の結集と予算関連法令の改正を図り、具現化を希求するところである。