目から鱗が何枚も落ち、何度も膝を打って膝が痛くなり、という本。
著者の村上智彦氏は、夕張市の地域医療の再生に従事した医師(詳しくはwikipedia参照)で、地域医療に限らず医療制度全体の問題点を指摘しています。
医療については、行政や医師側だけでなく、利用者の患者の意識も大きな問題であること、そして利用者に誤ったインセンティブを与えている現行制度の問題を鋭く指摘しています。
著者は「戦う医療」から「ささえる医療」への転換を提唱します。
それは予防医療の重視、高度急性期医療に重点を置いている現在の医療機関の資源配分の見直しであり、それへのインセンティブを与えるための保険制度の見直しなどを通じて、医師のみならず歯科医や看護師などとも連携した地域医療の在り方へ制度を変えていこうというものです。
新書版に現行制度の問題点と将来への改善策、そして著者の怒りまで凝縮された好著です。
PS
社会保障制度改革国民会議のサイトを見ると、問題意識としては本書と同じ方向を向いているようにも見えます。
「これまでの議論の整理」(参照)では
病院で治す」医療から超高齢社会に合った「地域全体で、治し・支える医療」へ転換することが必要である。
という記述もありますし、たとえば医療の資源配分についてはこちらの14,15ページ前後に触れられています。
医療関係者だけでなく負担の増える利用者からの抵抗も大きいでしょうが、このままでは遅かれ早かれ破たんしてしまうので、きちんとした提言と実行に期待したいです。