小川洋子続きで、河合隼雄の対談本があったので購入。
奇しくも河合先生が急逝される直前におこなわれた対談となった。最後に「すこし長すぎるあとがき」として小川洋子の追悼文が載っている。
『博士の愛した数式』をめぐって数学者を志していた河合先生の思いとから「物語」の重要性について話は広がる。
亡くなって以来久しぶりに河合先生の話を聞く、という懐かしさもある。
小川洋子が自ら小説を書くということについてこう語っている。
私は小説を二十年近く書いているのですが、ときどきインタビュアーに「なぜ小説を書くんですか」と無邪気に質問されて、たじろいでしまうことがあります。私にはそんなに特殊な仕事をしているという気持ちはないんですね。
人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶にしていくという作業を、必ずやっていると思うんです。小説で一人の人間を表現しようとするとき、作家は、その人がそれまで積み重ねてきた記憶を、言葉の形、お話の形で取り出して、再確認するために書いているという気がします。
こういう人がつくる小説だったと改めて納得。
これは村上春樹の姿勢とも似ている感じがするが、村上春樹は「壁と卵」のスピーチとか、より大きな物語に移りつつあるような感じがする(最近の小説は読んでいないのであくまでも印象)。