「人が死なない」という前提だと、大きく分けてラブ・ストーリー、おバカコメディー(たまに死ぬ)と中高年ががんばる話になるのですが、一番最後のカテゴリーを選ぶ傾向にあるのは歳のせいかもしれません。
さて、この作品は旧ソ連時代に共産党からのユダヤ系演奏家の排斥の指令を拒絶したため解雇され、劇場の掃除人として働いているボリショイ交響楽団の元主席指揮者だったアンドレイ・フィリポフが、キャンセルの代役公演を探していたパリの劇場からのファックスを見て、昔のメンバーでオーケストラを再結成しボリショイ交響楽団になりすましてパリに乗り込む。そしてフィリポフが指名した若手女性ソリストとは実は・・・という話です。
そして最後の公演のところで大団円を迎える、というきちんと定石を踏まえたうえで、かつ魅力あふれる作品になっています。
登場人物の造形がユーモアと皮肉たっぷりで、ロシア訛りのフランス語(字幕はがんばっていますがフランス人は大笑いなんだろうな)や楽団員のユダヤ人やジプシー(って言葉使っていいんだっけ?)のふるまい、パリの劇場の支配人や元共産党員、ロシアの成金などポイントごとの配役が効いています。
このへんの脇役の生かし方はさすがフランス映画です。
苦難や悲劇を乗り越えた先に希望がある映画、いい選択でした。