ここのとことても寒いので、特に出かける用事がないときは家に引きこもっています。
おかげでためていた録画をまとめて観ることができました。
録画しているのはNHK-BSの世界のドキュメンタリーが多いのですが、印象に残る作品が多かったです。
三つ星シェフが挑む料理改革~機内食編~
イギリスの三ツ星レストランのシェフが「まずい料理」を改善して回るシリーズ。
(このあとに小児病棟編もあります)
実は機内食は地上のキッチンで調理された状態では(多少お世辞もあるのでしょうが)おいしいのだけれど、機内の機材で再加熱することで味が損なわれてしまうこと、そして、そもそも機内の低気圧・超低湿度(約20%と砂漠以下らしい)では人間の味覚が鈍くなってしまうことなど新たな発見があります。
そして、機内食は「おいしい」だけでなく限られた時間に限られたスペースと機材で加熱し、盛り付け、配膳できるものでなければならない、という制約があり、そのなかでどう新メニューを作るかを追いかけます。
この三ツ星シェフ、探究心だけでなく機内食調理会社のスタッフやCAの巻き込み方に人柄があらわれていて、好印象。
私の土地は渡さない ~コロンビア~
金などの鉱物資源が豊富なコロンビアの山間部で、採掘許可を得て、土地所有者である貧しいアフリカ系住民を不当に追い出そうとする大企業に抵抗し、法廷闘争で勝利した住民の話。
コロンビアも他の多くの南米諸国同様米国に資源を供給するとともに対外債務によりその収入は国内の一部の権力者・富裕層にわたる以外は米国に還流するというエコノミック・ヒットマン(本も読了しましたが感想は後日)的なメカニズムに対する抵抗でもあります。
クリントン国務長官のコロンビア訪問時の演説が挿入されているのが、地元の人もそのメカニズムを知っていることを示唆していて印象的。
ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~
最近注目され始めた地中の岩盤から取り出す天然ガスシェールガスの採掘に伴う環境汚染問題を取り上げた番組。
シェールガスは採掘技術の進歩で採算に乗るようになったのですが、その技術である水圧破砕法に使われる化学薬品が広範囲な環境汚染、特に河川・水道水の汚染をもたらしているものの、大企業は口を閉ざし、そこから税収を得ている地方自治体もきちんと取り合わないという現状を取材しています。
外国だけでなく自国でも利益の追求のためには八方手を尽くすというあたりは、資本主義の本家の面目躍如ではありますが、それへの反対の動きもまた強力になりつつあるところもアメリカらしい。
甘いチョコレート 苦い現実
チョコレートの原料となるカカオ豆のほとんどを生産するコートジボワールとガーナでは、過酷な児童労働が今も横行しています。
一方で欧米の企業は自社製品には児童労働に関与した原材料の使用を否定するものの、農家から買い付ける卸業者はほとんどノーチェックである実態が明らかになります。
またフェア・トレード認証についても、認証団体は契約農場に児童労働の禁止を義務付けてはいるものの、現地を取材すると認証団体の契約農場でも児童労働が行なわれており、認証団体が発見すれば契約を打ち切ってはいるもののいたちごっこになっている実態もわかります。
企業のコンプライアンスとかCSRとしてどうあるべきなのかを考えさせられます。
児童労働に関する国際協力NGO"ACE"のサイトでも、この番組への反響が大きかったのかこんな記事があります。
お知らせ : 12月17日放送 NHK-BS1『甘いチョコレート 苦い現実』をご覧になったみなさまへ
フェアトレードとして取引されているカカオ豆の生産地で児童労働が見つかる、という場面もありましたが、フェアトレードが児童労働を予防し、貧しい農民たちによりよい価格や生活を保障する、今選択できるひとつの方法であると認識しています。
チョコレートに関わる企業も少しずつ取り組みを進めています。この度、森永製菓株式会社様には、ACEを「1チョコ for 1スマイル~あなたが食べると、もう一人がうれしい」キャンペーンの支援パートナー団体として選定していただき、ガーナでの支援活動「スマイル・ガーナ」プロジェクトをご支援いただきます。また、チョコレートデザイン株式会社様にも継続的なご支援をいただいております。
現地でも、まだ課題はたくさんありますが、政府や自治体がすでに取り組みを行っており、ACEも地域住民を含む関係者と連携して活動を進めています。
NGOであれば「完璧ではないかもしれないがやらないよりははるかにいい」という論理は十分説得力を持ちます。
ただ昨今妙に完全無欠を求められる企業としては、どう対処すべきかは悩ましいところだと思います。
アパレルにおける縫製工場のように現場が限定されているものなら100%管理することも可能かもしれませんが、途中で仲買人を通すような農産物は100%契約農場にする(それは供給安定にとってはリスクでもあります)というのも現実的には難しいのではないでしょうか。
自分がその企業の立場だったらどう判断するのだろう、と考えてしまいます。
内戦を終わらせた女たち ~リベリア~
権力と資源をめぐる独裁体制と反政府勢力の武力抗争によって多くの市民、特に女性や子供たちが犠牲になっていたリベリアで立ち上がった女性たちの市民運動の話。
粘り強い抵抗運動は最後には内戦の停止と民主選挙に結びつき、運動の指導者と選出された初の女性大統領はノーベル平和賞を受賞することになります。
運動は最初はキリスト教会の女性たちから始まったのですが、集会に参加したイスラム教徒の女性がした演説が印象的
「私はイスラム教徒ですが、同じ神を信じるものとしてこの運動に参加したい」
伝達経路(といっては怒られるか)が違うものの信じる対象の神は同じということはリベリアでは常識なんだなと妙なところで関心しました。
(中東でも以前は各宗教が共存して仲良く生活していたようなのでこちらが本来の姿なのかもしれませんが)
たぶんアメリカの中西部あたりだと神も違うと思っている人のほうが多いんじゃないでしょうか。
日本人としてはセム的一神教同士が変な形で団結されるとそれはそれで困ったことになるのですが・・・