一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

生殖医療と司法の役割

2006-09-05 | よしなしごと

死後生殖を認めず 凍結精子認知訴訟で最高裁判決
(2006年 9月 4日 (月) 22:20 朝日新聞)

夫に先立たれた西日本在住の女性が凍結保存していた精子による体外受精で出産した男児(5)について、夫の子として認知できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決が4日、最高裁であった。第二小法廷(中川了滋(りょうじ)裁判長)は「死後生殖について民法は想定していない。親子関係を認めるかどうかは立法によって解決されるべき問題だ」と述べ、立法がない以上父子関係は認められないとする初めての判断を示し、認知を認めた二審・高松高裁判決を破棄。女性側を敗訴させる判決を言い渡した。  

判決は、死後生殖によって生まれた子が認知されることによって、いまの民法の下でどのような法的メリットを得られるのかを検討。「父から扶養を受けることはあり得ず、父の相続人にもなり得ない」と指摘した。  

法律上の親子であれば存在するこうした「基本的な法律関係」がないことを踏まえ、「立法がない以上、死後生殖による父子には、法律上の親子関係の形成は認められない」と結論づけた。  

第二小法廷は、今回のようなケースで父子関係を認めるべきかどうかは「生命倫理、子の福祉、社会一般の考え方など多角的な観点から検討を行った上、立法によって解決されるべき問題だ」と法整備の必要性を指摘した。  

女性の夫は白血病で、放射線治療で無精子症になる恐れがあって精子を保存。99年に死亡した。  
女性は「この子に父親がだれかを教えてやりたい」と訴えていた。

最高裁判決は、そのとおりだと思います。

親の死亡時に胎児ですらない精子(卵子でも)は相続人になりようがないですし(逆に相続権を認めてしまうといつまでたっても遺産分割ができなくなってしまう)、逆に第三者提供の精子により人工授精した子と精子提供者との関係などにも影響を与えてしまいますから。

具体的な事情はわかりませんが、「この子に父親がだれかを教えてやりたい」という思いは、ほかの方法でも達することができるのではないでしょうか。
少なくとも裁判所は自らはルールを変えてまで保護する役割にはない、ということを明らかにしたわけで、その判断は正しいと思います。


人工授精や生殖医療についてはまったく知識がないのですが、生命倫理の話を横に置いたとしても、死亡した精子/卵子提供者の意思を要件とするか(しない場合は第三者提供とどう区別するか)、意思確認の方法、意思の有効期限はないのか、など、いろんな問題がありそうですね。

また、生殖医療において冷凍保存してある精子/卵子にはどの時点まで「動産」として扱うのか、また他の動産と全く同じ扱いでいいのか--所有者は事由に管理・処分できるか(極端な話、担保設定や競売も可能なのか)などという点は現在どういう整理をされているんでしょうか。

(ろくに調べもしないで脊髄反射的なエントリですがご容赦を)


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