俺が中学生だった時の世界地図を見ているとユーゴスラビアという国が載っているのだが、今ではすっかり跡形も無く様々な国に分裂してしまっている。
第二次世界大戦においてはナチスに蹂躙されてしまい、冷戦時代のチトー大統領の独裁政権を経て、彼が亡き後は民族及び宗教対立がユーゴスラビアに内戦をもたらす。そんなユーゴスラビアの激動の歴史を170分という長時間で描いた作品が今回紹介する映画アンダーグラウンド。しかもカンヌ国際映画祭のパルムドール賞に輝いているように堂々たる名作だ。
日本人にとっては、ユーゴスラビアは地理的に非常に遠い場所であり、世界の火薬庫と呼ばれるように血で染まったバルカン半島に属する。しかし、核実験を行ったり、平気でミサイルを飛ばす国が近くに存在するように、今や日本が属する東アジアこそ世界中で最も戦争が起きる可能性の高い場所。そんな危険地帯に住んでいることに気付いている、気付いていないに関わらず日本人も本作から学ぶことがたくさんあるはずだ。
このように書いてみると、なんだかとても深刻でシリアスな戦争ドラマかと思いきや、実はちょっと変な奴ばかり登場してくるし、チンパンジーがその場を大いに盛り上げる。とても愉快で陽気なバンドが演奏する音楽は心地良いし、悲惨な事が起きているのに妙に明るい登場人物達のおかげで、全く湿っぽさを感じない。それどころか10分に1回ぐらい大なり小なり笑える。
ユーモアをまるで理解できない左翼に支配された日本映画の戦争映画を観ると、ずいぶん憂鬱な気分にさせられる事がある。しかし、本作を観ればユーモアの大切さがよく理解できるだろう。
さて、ユーゴスラビアの激動の50年を描き、アンダーグラウンドと言うタイトルの意味するところは一体何だろうか。
1941年、ユーゴスラビアにおいてナチスが侵攻してくる。ナチスに抵抗するバルチザンに属し、共産党員であるマルコ(ミキ・マノイロヴィッチ)は、親友のクロ(ラザル・リストフスキー)を仲間に誘い、組織内で次第に頭角を現して来る。
しかし、ナチスによるバルチザン及び共産党員狩りが激しくなるに及び、マルコ(マノイロヴィッチ)はクロ(リストフスキー)や自分の弟、更には多くの難民を隠れ家として地下室に住ませる。
やがてナチスも撤退し第二次世界大戦が終了するが、マルコ(マノイロヴィッチ)は地下室の住人には戦争が終了したことを教えずに、武器の密造を続けさせていた。しかもマルコ(マノイロヴィッチ)はクロ(リストフスキー)の彼女であるナタリア(ミリャナ・ヤコヴィッチ)を自分の女にしていた。
やがて、ユーゴスラビアにチトー政権が誕生し、マルコ(マノイロヴィッチ)はチトー大統領の側近として政権内で中枢を占めるに到る。しかし、クロ(リストフスキー)の息子の結婚式が地下室で盛大に行われた時に、マルコ(マノイロヴィッチ)にとって予想外の事が起きてしまうのだが
前半はアホっぽいコメディー調のノリがウザく感じたりするが、実は後半の怒涛の展開への伏線。親友、兄弟、恋人、そして祖国がバラバラになっていく様子は胸に迫るものがあるが、悲しむべきか笑うべきか?
途中で実際の映像が差し込まれたり、隅々まで行き届いた映像にも注目したいところだ。そしてラストシーンの御伽噺的な結末は爽やかさがあり、そして同時にかつて存在したユーゴスラビアという国について考えさせられる。
果たして、この映画にはマトモな人間が1人ぐらいは登場したのか?なんて考えたりするのも楽しいアンダーグラウンドは、かつて存在した国について興味が湧いてくる映画です
監督は自分ではユーゴスラビア人と称しているサラエボ出身の名監督であるエミール・クストリッツァ。ヨーロッパの英語圏外の国の映画監督としては、もっとも楽しい映画を撮る監督だと思います。
この人のお勧め作品は、若きジョニー・デップを見ることができるアリゾナ・ドリームも良いですが、個人的に気に入っているのはライフ・イズ・ミラクル。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景にした映画ですが、笑えます
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第二次世界大戦においてはナチスに蹂躙されてしまい、冷戦時代のチトー大統領の独裁政権を経て、彼が亡き後は民族及び宗教対立がユーゴスラビアに内戦をもたらす。そんなユーゴスラビアの激動の歴史を170分という長時間で描いた作品が今回紹介する映画アンダーグラウンド。しかもカンヌ国際映画祭のパルムドール賞に輝いているように堂々たる名作だ。
日本人にとっては、ユーゴスラビアは地理的に非常に遠い場所であり、世界の火薬庫と呼ばれるように血で染まったバルカン半島に属する。しかし、核実験を行ったり、平気でミサイルを飛ばす国が近くに存在するように、今や日本が属する東アジアこそ世界中で最も戦争が起きる可能性の高い場所。そんな危険地帯に住んでいることに気付いている、気付いていないに関わらず日本人も本作から学ぶことがたくさんあるはずだ。
このように書いてみると、なんだかとても深刻でシリアスな戦争ドラマかと思いきや、実はちょっと変な奴ばかり登場してくるし、チンパンジーがその場を大いに盛り上げる。とても愉快で陽気なバンドが演奏する音楽は心地良いし、悲惨な事が起きているのに妙に明るい登場人物達のおかげで、全く湿っぽさを感じない。それどころか10分に1回ぐらい大なり小なり笑える。
ユーモアをまるで理解できない左翼に支配された日本映画の戦争映画を観ると、ずいぶん憂鬱な気分にさせられる事がある。しかし、本作を観ればユーモアの大切さがよく理解できるだろう。
さて、ユーゴスラビアの激動の50年を描き、アンダーグラウンドと言うタイトルの意味するところは一体何だろうか。
1941年、ユーゴスラビアにおいてナチスが侵攻してくる。ナチスに抵抗するバルチザンに属し、共産党員であるマルコ(ミキ・マノイロヴィッチ)は、親友のクロ(ラザル・リストフスキー)を仲間に誘い、組織内で次第に頭角を現して来る。
しかし、ナチスによるバルチザン及び共産党員狩りが激しくなるに及び、マルコ(マノイロヴィッチ)はクロ(リストフスキー)や自分の弟、更には多くの難民を隠れ家として地下室に住ませる。
やがてナチスも撤退し第二次世界大戦が終了するが、マルコ(マノイロヴィッチ)は地下室の住人には戦争が終了したことを教えずに、武器の密造を続けさせていた。しかもマルコ(マノイロヴィッチ)はクロ(リストフスキー)の彼女であるナタリア(ミリャナ・ヤコヴィッチ)を自分の女にしていた。
やがて、ユーゴスラビアにチトー政権が誕生し、マルコ(マノイロヴィッチ)はチトー大統領の側近として政権内で中枢を占めるに到る。しかし、クロ(リストフスキー)の息子の結婚式が地下室で盛大に行われた時に、マルコ(マノイロヴィッチ)にとって予想外の事が起きてしまうのだが
前半はアホっぽいコメディー調のノリがウザく感じたりするが、実は後半の怒涛の展開への伏線。親友、兄弟、恋人、そして祖国がバラバラになっていく様子は胸に迫るものがあるが、悲しむべきか笑うべきか?
途中で実際の映像が差し込まれたり、隅々まで行き届いた映像にも注目したいところだ。そしてラストシーンの御伽噺的な結末は爽やかさがあり、そして同時にかつて存在したユーゴスラビアという国について考えさせられる。
果たして、この映画にはマトモな人間が1人ぐらいは登場したのか?なんて考えたりするのも楽しいアンダーグラウンドは、かつて存在した国について興味が湧いてくる映画です
アンダーグラウンド 2枚組 [DVD] | |
ヴィルコ・フィラチュ,エミール・クストリッツァ,ピエール・スペングラー,カール・ボームガートナー,ドゥシャン・コヴァチェヴィチ | |
紀伊國屋書店 |
アンダーグラウンド Blu-ray | |
エミール・クストリッツァ | |
紀伊國屋書店 |
監督は自分ではユーゴスラビア人と称しているサラエボ出身の名監督であるエミール・クストリッツァ。ヨーロッパの英語圏外の国の映画監督としては、もっとも楽しい映画を撮る監督だと思います。
この人のお勧め作品は、若きジョニー・デップを見ることができるアリゾナ・ドリームも良いですが、個人的に気に入っているのはライフ・イズ・ミラクル。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景にした映画ですが、笑えます
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