褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 恐怖の報酬(1953) メガトン級のスリルを味わえます 

2016年11月04日 | 映画(か行)
 俺が最もハラハラドキドキ感を味わった映画が今回紹介する恐怖の報酬。手に汗握る映画を撮るのに最先端テクノロジーなんか使わなくても、演出の腕があれば充分に撮ることができることを証明している映画だ。ニトログリセリンを一滴垂らして爆発させるだけで、観ている者にその威力のイメージを植え付けて、恐怖とスリルを極限状態にまで高めてくれる。
 こんなことを書いておきながら、前半は全くスリルなんか感じない。どいつもこいつも暑いだの、腹減っただのグダグダ言う奴ばかりが登場する。お前ら少しは働けよ!と言いたくなるが、実は街自体がボロボロの状態で働きようがないし、劣悪な環境。どん底状態に陥ってしまった人間が流れてくる場所だということが直ぐにわかる。
 このように前半は観ていると全く楽しくないし、なんだか息苦しくさえ感じられたりするが、これが怒涛のメガトン級のスリルを味わえる後半へ向けての前フリ。とことんボロボロに陥ってしまった人間の性格描写が丹念に描かれることによって、少々気が狂ったように思える男達が、目的に向かって邁進する姿にスリル、興奮、ド根性、笑い(?)に疲労など、観終わった後に様々な感情を起こさせてくれる映画だ。

 すっかり命よりも大金に目が眩んでしまった男たちの意外な運命は果たして?それでは簡単にストーリーの紹介を。
 南米の国のある街において。そこはすっかりボロボロに陥ってしまった人間が流れてくる場所になってしまっているが、マリオ(イヴ・モンタン)もその1人。なんとか極貧生活から抜け出したいと思いながら、ダラダラした生活を続けていた。そこへ文無しでありながら態度が横柄なジョー(シャルル・ヴァネル)がやって来る。彼らは故郷が同じフランスであることを知り、直ぐに仲良くなる。
 そんなある日のこと、500キロメートル離れた街で油田が爆発するという大惨事が起きる。石油会社は大火災を消すためにニトログリセリンの爆風を利用して消火することを思いつく。大量のニトログリセリンを安全装置のないトラック2台で運ぶことを、2000ドルの大金を褒賞として運転手を四人募集することを決定。
 一発逆転の人生が向こうから転がり込んで来たことに、喜び勇んでマリオとジョーは手を挙げて、他にルイージ(フォルコ・ルリ)とビンバ(ペーター・ファン・アイク)の2人で、トラック2台に分かれて、大量のニトログリセリンを運びだすのだが・・・

 後半はドキドキの連続。ボロボロのトラックでニトログリセリンを運ぶだけでも恐怖なのに、途中の障害がまた凄い。特に途中でドデカイ岩がトラックの行く手を邪魔しているシーンには、俺は一瞬笑ってしまった。手に汗握るスリルが楽しいのは勿論だが、大金にすっかり魅了されてしまった人間の本性の描写が凄い。単にハラハラドキドキするだけの映画なら掃いて捨てるほどあるが、そこへ人間の欲望をこれほど意地悪く描いた映画はなかなか見られない。特に命知らずの強者だと思われていた男が、急にショボイ奴に成り下がっていく様子はアリャ?と思いながらも、けっこう身近にも居ることに気付いたりする。
 全体的に汗まみれ、泥まみれ、埃まみれで清潔感のない映画だが、もっと汚いのが強欲さ。このような映画を観ると、何でもホドホドが良いよね~という事に気付かしてくれる。

 まあ2時間半ぐらいの長い映画だが、細かいところでの演出は楽しめるし、後半の怒涛のスリルの面白さは文句なし。そして、観終わった後に極度の疲労感に襲われるのはドMの人間にはたまらない。モノクロで昔のフランス映画だと聞くと退屈に思われる人が多いと思うが、こんな面白い映画をそんなことで見逃しているとすれば非常に勿体ない。今回は超お勧め映画として恐怖の報酬を紹介しておこう。

恐怖の報酬 CCP-174 [DVD]
イヴ・モンタン,シャルル・ヴァネル
株式会社コスミック出版


 監督はアンリ=ジョルジュ・クルーゾー 。フランス映画を代表する偉大なる名匠。他にお勧めはどんでん返しの妙を感じさせる悪魔のような女、やたらラストシーンが強烈な情婦マノン、個人的にはかなりの推理サスペンスの傑作だと思っている犯罪河岸が良いです。




 

 

 







 
 
コメント (2)
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