褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 近松物語(1954) 男女の逃避行

2025年01月27日 | 映画(た行)
 今年は外国映画ばかり紹介してないで、日本の映画も当ブログで紹介しようかと思っている。1950年代の日本の映画の面白さに気付いたことがその理由。今まで日本の映画と言えば黒澤明監督作品ばかり見ていたが、他にも素晴らしい映画監督が日本にも居ることを気づかせてくれたのが、自分にとっては良い経験になった。今回紹介するのがフランスのヌーヴェルバーグの映画人にも評価が高い溝口健二監督の映画近松物語。タイトル通り近松門左衛門の人形浄瑠璃を下敷きにして、色々と脚色されているらしい。
 本作は江戸時代の主に京都を舞台にしているが、昔風の商人が話している関西弁が個人的にはツボ。極道の妻たちにおける関西弁は力が入り過ぎて違和感があるが、本作における少しばかり間の抜けたトーンは心地良い。

 台詞回しは楽しいが、男女の一途な想いを感じ取れるストーリーの紹介を。
 江戸時代の京都。大名からも一目置かれている商家において、使用人の茂吉(長谷川一夫)が奥方のおさん(香川京子)からカネの工面を何とかならないかとの相談を受ける。茂吉はおさんのためにひと肌脱ごうと店の金を着服しようとするが、思いなおし主人の以春(進藤英太郎)に頼み込むことにする。しかし、以春は金を貸すことは許さず、茂吉と妻のおさんの仲を疑うようになる。どうしようもなくなった茂吉とおさんは2人で逃げることになってしまい・・・

 この時代の習わしとして説明しておくと、男女の不義密通は京都の町を引きずり回されて死刑になってしまう。そして、この場合だとおさんと茂吉の不義密通がバレたら、おさんの旦那の以春の商家にまで影響を受けて取り壊しになってしまう時代。現代社会とは異なる背景が本作を面白くさせている。
 商人の以春は勢力が大きく威張り散らし、しかも女中には手を出しており、大名たちにもカネの影響を与えており、カネの事に関してはドケチ。おさんは使用人の茂吉ではなくて主人の以春にカネの工面を頼めば良いのだが、彼のドケチさは嫁に対しても変わらない。それが何事にも真面目で面倒見の良い茂吉に頼んでしまったから事件?が起きてしまったわけだ。そして、茂吉とおさんが不倫をしているのかと勘違いさせる場面がコントを見ているようで、俺は大爆笑した。本来はシリアスドラマなので笑ってしまうシーンではないのだが、まるでコントの王道を行くようなパターンだったので笑わざるを得なかった。
 そして、茂吉とおさんが2人きりになって心中しようとする場面が中盤で訪れる。その時に茂吉は『実は私は前々から、おさん様のことをお慕いしておりました』と告白してから、おさんが急に心変わりをして、おさんも茂吉のことを好きになって心中を止めるところは感動させると同時に、不謹慎ながらもまた笑けてきた。そこからは2人の愛の逃避行になってしまう。
 しかし、以春の強欲なプライドが凄い。とにかく2人を部下を使って捜索させるのだが、自分のお店が第一主義。おさんと茂吉を別れさせて、おさんだけを何事もなかったように連れてくるように命じるのだが、これは俺も噴き出した。極めて悲惨な状況に陥っているストーリー展開なのに笑いながら見ているのは俺ぐらいしか居ないのではないだろうか。だいたい、前述した社会背景からしてあまりにも現代と違い過ぎて笑えてしまう。これを今の時代に当てはめると、本当に毎日のように死刑が行われてしまうではないか。
 しかし、本作が凄いのが商家のセット。奉公人がたくさん居るのだが、それだけの人数を収容するだけのセット組は凄いと感じさせるし、またそれを映し出す流暢なカメラワークも凄い。昔の映画は本当にスタッフの真剣さが伝わってくる。これぞプロの仕事だと画面から伝わってくるのが本当に何度も言うが凄い。
 それにしても茂吉とおさんの恋愛は本物だ。しかしながら、そんな2人の関係を当時の社会が許さない。元はと言えばコントのような勘違いの騒動がとんでもない事件に発展してしまうのだが。しかし、ラストは意外にも幸せを感じさせるのだ。
 昔の封建社会による恋愛の不自由さ、男女の逃避行、カネに強欲な人間、人を陥れる人間、親子の情け、もう少し音声が良ければと思うのだが聞き心地の良い関西弁、巧みなセットなど見所が満載のコメディ、ではなくてシリアスな人間ドラマとして今回は名作近松物語をお勧めに挙げておこう

 監督は世界の溝口健二。先日投稿した西鶴一代女、そして人間の業の深さを感じさせられた雨月物語がお勧め、他にも面白い映画がたくさんあると思います

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