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映画 深夜の告白(1944) フィルムノワール映画のはしり

2024年12月15日 | 映画(さ行)
 1930年代から1940年代初めにかけてハッピーエンドな作品ばかり制作されてきたハリウッド映画。見知らぬ男と女が出会って何時の間にやら仲が良くなって結ばれる映画が多かった。しかし、そんな映画も第二次世界大戦を経ると世の中の人に暗い影を落とすようになると廃れていき、やがて主流は犯罪映画になっていく。その中でも男が女性の野心に破滅していくタイプのサスペンス映画が多くなる。そのような女性を犯罪映画の分野においてファムファタールと呼び、犯罪映画そのものをフィルムノワールと呼ぶことになる。女優もカワイ子ちゃんだけで売る時代も終わり悪女役も登場するようになってくるのだが、今回紹介する映画はフィルムノワールのはしりであり、とてつもない悪女、ファムファタールが登場する古典的名作である深夜の告白。モノクロ映画ではあるのだが、犯罪の香りを漂わせるシャープな描写はフィルムノワールに欠かせない。
 ちなみに本作は「郵便配達は二度ベルをならす」の原作者であるジェームズ・M・ケインの小説「倍額保険(Double Indemnity)」を原作とする。ここで本作の原題にもなっている倍額保険の意味を説明しておこう。損害保険の一種なのだが、列車に乗っている最中での事故など稀なことであり、もしもそのような状況で事故死が起きた場合に通常の保険の倍額が保険会社から払われる保険のこと。この原題の意味を知って本作を見ると非常に理解しやすい作品だ。

 フィルムノワールのはしりであるだけでなく、その代表する映画のストーリーの紹介を。
 怪我を負った状態でフラフラになりながら保険会社に戻ってきたウォルター・ネフ(フレッド・マクマレイ)。彼は自ら犯した罪を録音機に向かって告白するシーンから始まり、場面はその数カ月前からの出来事にさかのぼる。
 やり手の保険業のセールスマンであるウォルターは顧客の実業家であるディートリクスン(トム・パワーズ)の自宅を訪れる。彼は留守だったのだが若妻であるフィリス(バーバラ・スタンウィック)に見とれてしまう。フィリスは内緒で夫の障害保険を掛けようと提案してくるのだが、きな臭いことを感じたウォルターはその場で断るのだが、ウォルターはどうしてもフィリスの美貌が忘れられない。するとフィリスの方からウォルターの住んでいるマンションを訪れてきて、彼らはアッサリ不倫関係になる。
 もはや離れがたい二人はディートリクスン氏が知らない内に倍額保険の手続きを済ませて、完全殺人犯罪の計画を立て、実行するのだが思わぬ綻びが生じることになり・・・

 保険金からみの殺人事件など小説や映画だけでなく現実にも起こっている。それだけに真新しさはないのだが、ファムファタールの美女によって、すっかり破滅させられていく様子に興味が惹かれる。倍額保険などと、殺人に及んでも更に欲がくらんでしまう馬鹿さが凄いし、その強欲さに惹きつけられる。
 そして、登場人物でウォルターの上司であるエドワード・G・ロビンソンが演じるキーズ保険調査員の頭脳が本作を際立たせている。この保険調査員が居なければイカサマの事故でも保険金を払ってしまい、そんな保険会社などは直ぐにでも潰れてしまう。しかし、キーズ調査員の推理小説の名探偵以上に勘が鋭いのが本作をミステリーとして非常に出来の良い作品に仕立てているし、全編に渡ってキースとウォルターの友情を感じさせるシーンが多く、ラストシーンは熱いものを感じさせる。
 そして、ちなみに本作の脚本を担当しているのがフィリップ・マーロウが活躍する探偵シリーズで有名な推理小説作家であるレイモンド・チャンドラー。所々で格好いい台詞が飛び出してくるが、それは彼の力によるところが大いにあるだろう。
 そして、フィリスを演じるバーバラ・スタンウィックの悪女っぷりが凄い。利用できるものは義理の娘やその彼氏も利用。旦那殺しと保険金に恐ろしいほどの執念を見せる。こんな女を愛してしまうだけでなく、愛されてしまうとは何たる不運。犯罪映画なんてものは悪女が強烈であればあるほど面白いことが本作を観ていたらよくわかる。
 1940年代のハリウッドの犯罪映画に興味が惹かれた人、悪女が登場する作品が好きな人、ビリー・ワイルダー監督と聞いて心が躍る人等に今回は映画深夜の告白をお勧めに挙げておこう

 監督は前述したとおりビリー・ワイルダー。僕が最も好きな映画監督です。本作と同じサスペンスならサンセット大通り、アル中の恐ろしさを描いた失われた週末、コメディとサスペンスの融合なら第十七捕虜収容所、完全なコメディならアパートの鍵貸します等、お勧め多数です









 

 






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