南座のかへりに、一杯の珈琲求めて、四条の北側辺り。
古い店で昭和9年創業。趣味のいいクラシックが流れていた。
カタコンベのような暗く老朽化した店内だが、これは無造作に構えていてはこうは残らない代物で、時代に背を向け、確信犯のような頑固さなくしては生き残って来なかったと思われる。
店員は白のワイシャツにボウタイ。床のワックスの匂い。
椅子は木製のビロード張り。
すべて昔ふうを押し通している。
ここの珈琲は生クリームの入る、ウインナーコーヒー。
仄かに甘い。
青の時代のような喫茶店は「ソワレ」。
西木屋町の方に、グレーの制服もゆかしき「フランソワ」。
みな、一筋縄ではいかない、そこにあることによって街の落ち着きに
つながる名店ばかり。
古い喫茶店はそこの空気の一部になったように、じっとしていられる。
何にも考えずに、ただじっと。
そんな贅沢な時間の使い方ができる店。
ハイケンスのセレナーデが聴きたくなった。
「築地」 京都市中京区河原町四条