ここしばらく、羊毛筆での漢字に傾注していましたら、他の筆で仮名を書きたくなりました。
フト3年ほど前に入手していた白狸筆を思い出し、これで大字仮名を書いてみました。
(半切大 映像処理によりフィルター掛け)
待人尓不有(あらぬ)毛の可ら八つ可利の 今朝なくこ衛の免づらし支可那
待人にあらぬものから初雁の 今朝鳴く声のめづらしきかな
待つ人・・・多分恋人 不有・・・辞書にも“あらず(ぬ)”と読むとあり初めて知りました
ものから・・・これも辞書に“けれども”と 初雁・・・秋に飛来 珍し・・・清新で素晴らしい
ということで、上の句の歌意は
“期待して待っていた女性(の声)ではないが・・・”ぐらいになるようです。
下の句に“今朝”とありますので夜通し待っていたのかもしれません。
先に藤原行成の白氏詩巻(集賢池など)で漢字を練習させていただきましたが、
今回はその彼の筆と伝えられる「関戸本古今集」(仮名)で、私の大好きなお手本です。
季節外れではありますが、前から書いてみたかったその中の一首を書きました。
特に、最後7文字“免づらし支可那”の部分は、桑田三舟編「関戸本古今集」 の中で、
“多字連綿”のお手本として採用されているところで、
ここにチャレンジしたくての一枚です。
筆は白狸の中筆です。
“珍しきかな白狸”です。
同筆では関戸本古今集を一枚アップしております(2018.12.10付「色も香も・・・」)が、
こんな色のタヌキがいることは、この筆を通して知りました。
ここしばらく練習してきた羊毛筆(漢字)とは全く違って、
弾力性があり穂先が利き、よく纏まるのが特徴です。
弾力性があり穂先が利き、よく纏まるのが特徴です。
今回知ったことですが、本筆は古筆(仮名)の臨書に適しているとのことで、
もっと活用してもよさそうです。
羊毛筆の漢字は正直疲れましたが、その苦労の中で少しは得るものがあったのか、
本筆では比較的気軽に臨めました。
ところで“羊毛筆で仮名”・・・となると、既に2,3枚アップはしてますが、
これはこれはで、二壁三壁ありそうです。
多分書は体全体で書くのでしょうが、やはりその先端に当たる筆先の状態は刃物に例えれば、刃先と同じですからその状態によって違いが出るのは当然だと思います。
力の抜けた自然に流れるが如く出来上がった見事な書だと思います。
雄々しく力強い羊毛筆の書も見ごたえありましたが、この書は「白狸筆の中筆」での作品とのこと、専門的なことは分かりませんが、作者の内から湧き上がる優しさを感じる作品だと思いました。