古稀からの手習い 水彩ブログ

人生の第4コーナー、水彩画で楽しみたいと思います

こぎゃな石でん、活かしてくんしゃんなら・・・(こんな石でも活かしていただけるんなら・・・)

2011-10-31 06:49:51 | 静物(全体)
今回は、故郷の実家にあった“石”の話です。もう、半世紀以上も前の、高校時代のこと。
高校の友人のお父さんが、佐賀の田舎の我が家にきて、親父に、庭先にあった石をもらえないか、との申し出。
大きさは30~40センチ程度。そのお父さんが何に使うかは聞いたかもしれないが、失念した。
黒っぽく、ごつごつして、何の紋様も筋も入っていないこの石、我が家では、駄石といったらその石に失礼だが、
ただそこに転がっているだけの、本当に普通の石にしか見えなかった。

実は、そのときの親父の言葉、それが、今回のタイトルです。
佐賀弁で「こぎゃな石でん、活かしてくんしゃんなら、どうぞ持っていってくんしゃい」
(「こんな石でも活かしていただけるんなら、どうぞ持っていって下さい」)

戦後ひき揚げてきて、とにかく働くだけで精一杯で、およそ、美術にも石(趣味としての)にも興味を示していなかった親父。
自分もまた関心すらなかったが、その親父から、こんな言葉を聞くとは思いもせず、耳にこびりついて残ったことだった。

他人さまからは、何だ、こんなことで、とお叱りを受けるかもしれないが、
私にとっては後年、この「石を活かす」という言葉から、いろいろなことを教わった気がする。
ものを見る目の大事さ、視点の多さ、
何もなさそうなものに、価値を、光を、命を、
人を見る目もまた然り。名伯楽、名監督、名教育者、
捨てる神あれば、拾う神あり、・・・一粒の麦若し死なずんば・・・などなど、これまた挙げればきりがない。

今、絵をかじっているが、目に入るものは何でも絵にならないかと目を凝らしたり、
描く際には、その対象の良いところを最大限に引き出すよう意を用いたり(ズバリ、この絵はそうではないが)とか、
何かこの言葉に通ずるものを感じる。

この石、その後どういう運命を辿っているのはわからない。今も、誰かの、何かの、お役にたっていてくれればと、ひそかに思う。

[09.5.19 追記]
つい先日、ある友から別便のメールがあり、この絵について
「じーっと見ていると、左方の口が開いてしゃべっているようです。その上に鼻と目が。」と。
私としては全く想像もしていなかった視点。親父の顔に似ているようでもあり、本当にありがたい価値を与えていただきました。


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4 コメント

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Unknown (mori)
2011-10-31 08:31:34
良いお話ですね。色々な視点があって、そんな中でより良く生きる、より良く活かす大切さ。いまだに視点のふらついている自分を反省しつつ、このコメントを噛みしめています。
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Unknown (キンジ)
2011-10-31 10:17:48
ウヌン、何じゃこれは ”つくね”の親分?
文を読んで思わず 笑ってしまいした。今回は
絵よりも「文」が良いですね。 誰でもは「」絵は描けても文は掛けない。また方言もいいものですね。さて奥さんのご意見は? うちんにきでは「つけもん石しかならん」と・・・失礼。 いやー巧い文でした。 追伸:先般ある勉強会で報告書の「査読」を聞きました。「添削」と言えば良いものを 話を聞く若者には「渋谷語」 そして「モバイル」の時代ですが 将に齢70にして 今後は恥ずかしくて「文」がかけなくなる位 為になりました。 本人は役人あがりだったかも知れませんが 世代は変わってゆきますね。TTPほか また別便で。 タケシを笑いましょう。
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うらやましい石 (サガミの介)
2011-10-31 18:52:45
3日間岩手・陸前高田の災害ボランティアに行き30日深夜帰宅しました。被災地に流れ着いた石の多くは瓦礫として被災者を苦しめます、ボランティアに捨てられます、それに比べ何と幸せな石なんだろう、描かれている「こぎゃな石」は羅漢さんのように穏やかに存在しています、お役に立っているのです。こんな気持ちも岩手に行ったおかげでしょうか。
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Unknown (テツジ)
2011-11-12 20:33:52
故郷の訛懐し停車場の人ごみの中にそを聞きに行くの句ではないが自分の故郷はいいものです。自分も遠い昔に戻った感じです。自分の親兄弟をも想い起こす意味で味あるいい作品では。
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