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本格的な梅雨に入る前に初夏の草原に咲く野花を描きました。
今回の私なりのこだわりは花の描き方です。
先に「春霞の中一斉に咲き誇る野花」(2020.4.20付)をアップしておりますが、
そこでは柴崎春通先生の「水彩で春の草原を描く」(youtube)に刺激を受け、
技法を学ばせていただきました。
その技法は、こういう群生する野花を描くとき、
下準備として、鉛筆で花の容(かたち)を象ったり、マスキングインクを使うのではなく、
最初から絵具で、一花々々の周り(葉や茎などのバック部分)から攻め、
塗り残した花部分に、あとで色を入れるという方式です。
容は不定形のままで残し、あえて何の花なのかを特定しないのが味わいがあるところでしょう。
塗り残した花部分に、あとで色を入れるという方式です。
容は不定形のままで残し、あえて何の花なのかを特定しないのが味わいがあるところでしょう。
今回の絵もお花畑(通路や遠景を含む)は、全くの想像の世界といいますか、出来上がり分の一なのであります。
この技法もやはり、より自然な表現ができるようにするには、
練習で枚数を重ねるほかないようです。
両サイド(特に左)の捌き方などは、
柴崎先生の「全体感で描く『透明水彩』 色・いろ」(グラフィック社)の裏表紙の絵を
参考にさせていただきました。
ところで「千紫万紅」、同じ“せんしばんこう”と読んで「千思万考」というのがありますが、
こちらは色の用語です。
ネットで調べていましたら、面白いのがありました。
ちょっと格好をつけさせていただけば、
谷崎潤一郎の「吉野葛(くず)」には次のように書かれた一節があるようです。
“・・・「(百花)練乱」と云う言葉や、「千紫万紅」と云う言葉は、
春の野の 花を形容したものであろうが、
此処(吉野)のは秋のトーンであるところの「黄」を基調にした相違があるだけで、
色彩の変化に富むことはおそらく春の野に劣るまい。 ”と。
谷崎氏の筆法を借りれば(・・お借りするほどのことではありませんが・・)、
“初夏もまた春の野に劣るまい。”
[緊急追記]
今月4日付のyoutubeによると、
柴崎春通先生が心臓のご手術のためご入院されたとのこと。
ご手術の成功とご回復の早からんこと、切に切にお祈りするものです。
松がアカマツではないようですから北海道方面か外国の何処かの風情を感じます。
絵の出来具合は言うまでもなくお見事で、それを通り越し絵に描かれているお家の方々の日々の暮らしとか飛び交う小鳥を想像したり、この小道を喜び勇んで駆けたり、悲しみ呉れてトボトボ歩いたり色々な思いの籠った道に見えたりします。
素晴らしい風景画ですね。
目標に向かう飽くない向上心と技能錬磨だけでない、生来の優しさが反映されるのでしょうか。
作者が工夫され描き上げた花々も見事ですが、右手前にそびえる針葉樹、芽吹いた葉から私には落葉松にも見えますがその風情は全体構成を支えているように感じました。
いつも癒しの作品をありがとうございます。