Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#304 シーズンオフの風物詩

2014年01月08日 | 1983 年 



夏場の幽霊話の様に毎年オフになるとプロ野球界では「長嶋復帰説」が現れては消えて行く。今年も野球中継やテレビCMでもお馴染みの有名野球解説者が「巨人・藤田監督が王助監督に監督の座を禅譲する事で長嶋の巨人復帰は無くなり、長嶋が来年の大洋の監督に就任する事がほぼ確定。中日は近藤監督が辞めて高木コーチが昇格して、安泰なのは西武の広岡ぐらいだ」とラジオ番組で発言して注目を浴びた。さらに昨年の暮れに大洋担当のスポーツ新聞記者の結婚式に出席した大洋・関根監督が祝辞を述べたがその中で「来年の今頃には大洋球団からビッグニュースが提供されると思います」と語った事で「大洋・長嶋監督」が俄かに現実味を帯びてきた。

では当の長嶋氏本人の胸中はどうなのか?今の日本で一番忙しい人は日産自動車・石原俊社長で二番目が長嶋氏だそうだ。何しろローマ法王に謁見する事が許されるほどの国際人で超殺人的なスケジュールで世界中を駆け回っている。その長嶋氏が2月4日、沖縄県浦添市で交通遺児の為のチャリティイベントで講演を行い心境を吐露した。午後5時に始まった講演で地元市民の口笛や指笛の熱烈歓迎ぶりに長嶋氏も気分が高揚したのか昔話にも熱がこもった。「私は野球で立教大学に入学しました。つまり推薦入学です。だから野球で大学に還元する、恩返しするという意識で4年間を過ごしました。大学卒業後はプロ野球に入りましたがプロは社会人ですから今度は社会に還元する、それは一人でも多くのファンに喜んでもらう」 「だから三振をするのでも『格好いい』と思わせなければならなかった。見逃し三振なんて論外だと思ってプレーしていました」

場内の熱気に押された長嶋氏は自らの去就についても言及し始めた。「私は自分の意志で浪人生活に入った訳ではありません」と言う事はやはり不本意ながら讀賣に解任されたのが真相で巷間伝えられている辞任ではないのか…続いて「その浪人生活も今年で最後と決めました」と語ると場内は静まり次に発せられる言葉を待った。噂通り大洋かそれとも日ハムか、またまた巨人の名が飛び出すのかと聴衆は固唾を飲んだが「充実した1年にしたいと思っています」と見事に肩透かしを喰らった。

会場には各マスコミの記者も駆け付けたが予め主催者側から取材は拒否されて長嶋氏の会見は無し。しかし手ぶらで帰る訳にはいかないと一言でもコメントを取ろうと会場出口で待ち構えていたが敵もさるもの、送迎用の車を2台用意し陽動作戦を敢行して長嶋氏をマスコミから逃れさせた。長嶋氏周辺がそこまでピリピリする事は従来無かっただけに何かしらの変化が起こっているのではないか、と推測する向きは多い。長嶋氏の本音は巨人復帰が第一なのだが長嶋氏の代名詞とも言える「90番」が今年入団した堀田徹外野手(京都商)に与えられたり、巨人軍応援団と言われて球団人事にも少なからず影響力を持つ財界人で組織する「無名会」が次期監督に王助監督を推していて長嶋氏は既に過去の人間扱いされるなど読売グループ内では「長嶋離れ」が着々と進行中だ。3浪が終わる10月21日まであと8ヶ月余り、次の機会にはどんな発言が飛び出すか注目だ。ちなみにこの日寄せられた募金は20万18円、長嶋氏の講演料は100万円也だそうだ。
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