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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 416 寄せ集め

2016年03月02日 | 1984 年 



それにしてもまぁ、これだけのベテランを掻き集めたものである。6人の大量移籍入団。彼らの平均年齢は実に34歳である。ドラフトが全くの思惑外れだったなら分かるが安藤監督は「先ずは狙い通りの補強が出来た」と言っていたのだ。彼らには失礼だが誰が考えても信じられない補強である。その裏には何があるのか?


関西のスポーツ紙のN紙とD紙は球界の話題をテーマに漫画を掲載している。活字に表現しにくい話題も漫画でユーモラスに描き読者にも選手にも好評を博している。しかし先日、両紙は読者から抗議を受けた。「新聞はワシらの仕事にケチをつけているのか?まるで差別しているみたいじゃないか」と。両紙が偶然にも同時期に安藤監督を廃品回収業者になぞらえ笑い者にしたのだ。『御家庭で不要になったクズ鉄、古新聞はございませんか…』と街中を行き来する安藤監督。怒りの主は大阪の廃品回収業者たちで真面目に働く人間を笑いのネタにしている事への抗議だった。両紙の担当者は平身低頭で謝罪し一件落着したが実は当の安藤監督には大受けだった。安藤監督が運転するトラックの荷台には山内、稲葉、太田の3つの「クズ鉄」が積み込まれていた。こういった陰口は早くから出回っていたが誰も表立って声にしていなかっただけでそれをズバッと漫画で取り上げて拍手喝采だった訳だ。

昨年オフに降って湧いたようにエースの小林が現役引退を表明し是が非でも先発ローテーションを任せられる投手が必要となった。実は小林は球団に対しシーズン途中から引退したい旨を伝えていたが安藤監督はじめ首脳陣は引退を翻意させられると思っていた。慌てた阪神は抑えの山本和をタマに大型トレードを画策する事となる。小林の引退で球団はなりふり構わない補強を迫られたがトレードは成立せず山本と首脳陣間の不信感が残ってしまった。トレードがダメなら…となった球団は " 信じられない補強 " をせざるを得ない状況に追い込まれていった。先ず安藤監督と慶応大学の先輩・後輩の関係でもある藤田監督(巨人)にお願いして太田投手を獲得。巨人は無償トレードでOKとしていたが阪神が太田のプライドを傷つけまいと鈴木投手との交換トレードとなった訳だが鈴木にとってはとんだトバッチリである。

小林の穴を太田一人で埋められる訳はなくトレード担当の西山・藤江の両編成担当が動き出すが11月過ぎとあって他球団は既に来季の編成はほぼ終えておりトレード話は難航した。「あの時の阪神さんの慌てぶりは凄かったね。とにかく余った投手なら誰でもいい、という感じだった(在京パ球団フロント)」と。時機を逸していたので在阪球団に絞って交渉をし始めた。同じ関西地区の球団なら引越しをしなくて済む事で少しでも選手や家族の負担を軽くしようと配慮したのだ。結果、山内新(南海)と稲葉(阪急)の両投手の獲得に漕ぎ着けた。実は今回のトレードには裏話がある。阪急、近鉄、南海の3球団間には「阪神とはトレードしない」という不文律が存在していた。阪神に移籍したからと言って成績が急に向上する訳ではない。なのに関西のマスコミは1試合に活躍しただけで大騒ぎをしてスター選手扱いをする。それを見たファンに「何であんな良い選手を放出したんだ」と文句を言われる。そんな不条理に在阪球団の各フロントは嫌気が差していたのである。

「山内や稲葉のトレードが決まった時、阪神の実情が分かったと思いましたね。だって3球団の不文律は我々も知っていましたし、その内の2球団が無償トレードで放出した訳でしょ?つまり2人がいかに余剰戦力なのか、ハッキリ言えば使い物にならないガラクタって事ですよ。そのガラクタを獲らなくてはならない程に阪神は選手が足らないという事です」と某セ・リーグ球団関係者は言う。マウイ、安芸と続いているキャンプで山内・稲葉・太田はそれなりに順調に調整をしている。3投手に弘田を加えた移籍選手達は最後の一花を咲かせようと頑張ってはいるが、どうもチーム内には彼らを " 面白くない存在 " と見る雰囲気が広まりつつある。理由は至って簡単で補強を焦るがあまり彼らの年俸が全て現状維持のまま契約した事。例えば稲葉は昨季、2試合・7イニングに登板しただけで普通なら減俸が当たり前だが年俸は1千5百万円のまま。阪神では池内と同額で防御率のタイトルを獲得した福間と3百万円しか違わない。

これでは今まで阪神一筋でやってきた生え抜きから不満が噴出するのも当然で思わぬ形で不協和音が表面化した。「さすがに阪神も年俸ダウンを相手球団に打診したが『それならトレードはしない』と言われて泣く泣く現状維持で契約したそうですよ。とにかく頭数を揃えて体裁を整えたかったんでしょうね。後々困るのは目に見えているのに、それだけ焦っていた証拠です(某パ・リーグ球団関係者)」・・しかし一連の補強を " 廃品回収 " と揶揄出来ない。昨年も同様にベテラン投手の野村を大洋から加藤博との交換で獲得した時も使い物にならないと批判されたが終わって見れば小林に次ぐ12勝を挙げる活躍だった。出血を伴わない無償トレードで今回まさに " 二匹目のドジョウ " ならぬ三・四・五匹目のドジョウを目論んでいるという訳。ただ本来なら球団は長期ビジョンに立ってチーム作りをしなければならずベテラン選手に偏ったチーム編成は歪みを生じる。阪神の将来を考えると今回の補強は決してプラスにはならないであろう。

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