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# 744 極狭球場 Part 2

2022年06月15日 | 1977 年 



本塁打が乱舞する今年のセ・リーグで開幕から38イニングも被本塁打がなかった江本投手(阪神)だったが、4月29日の大洋戦で遂に2本塁打を浴びると試合後「セ・リーグはこんな狭い球場でやっているから野球が上手くならないんだ」と吐き捨てた。

" 日本製 " 本塁打はアメリカでは?
川崎球場は両翼まで88.4 m しかないうえに膨らみがないので右左中間まで103.6 m しかない。これが阪神の本拠地・甲子園球場だと同 91m・118m もあるのだから川崎球場が狭く感じるのも無理はない。あれほど公平に作られている野球規則なのに唯一の、そして最大の例外として球場の広さに関する規定は曖昧のままだ。野球規則【1-04】には「本塁よりフェアグラウンドにあるフェンス、或いはスタンドまたはプレーの妨げになる施設までの距離は 250 ft (76.2m) 以上を必要とするが、両翼は320 ft (97.5m) 以上、中堅は 400 ft (121.9m) 以上あることを理想とする」としか記されておらず、あくまでも " 理想 " なのだ。

しかも付記として
【a】1958年6月1日以降に建造される球場は両翼まで 325 ft (99.1m) ・中堅は 400 ft 【b】1958年6月1日以降に球場を改造する場合には両翼・中堅までの距離を前述の距離以下にすることは出来ない、と明記してある。それなのに1962年6月に完成した東京スタジアムは両翼まで90mしかなかった。規則違反が堂々とまかり通るのが日本のプロ野球界だ。東京スタジアムがお手本としたのはSF・ジャイアンツが本拠地としているキャンドルスティックパークで両翼102.1m と東京スタジアムより10m以上も長い。しかしこれがアメリカの球場の標準である。両翼が一番短い球場でもBAL・オリオールズのメモリアルパークスタジアムの94.2mだ。

さらにフェンスの高さにも日米で差がある。日本では一部を除いてせいぜい高さ2mくらいだがアメリカでは3m を超す球場も珍しくない。C・カブスの本拠地・リグレーフィールドは両翼108.2m に加えてフェンスの高さは4.6mだ。これがB・レッドソックスのフェンウェイパークだと左翼フェンスは11.3mにもなる。これだけ日米で差があると日本の球場で放った本塁打の何本がアメリカで柵越えになるのか興味がある。現在パ・リーグのホームランダービートップのリー選手(ロッテ)に記者団から「これまでの本塁打でアメリカの球場でも本塁打になるのは何本か?」と意地の悪い質問が飛んだがリー選手は答えなかった。確実に何本かは外野飛球程度だったようだ。


" 大阪球場ホームラン " のその後
球場の広さが本塁打数に大きな影響を与える例として大阪球場がある。改装前の大阪球場の両翼は84mだった。南海の野村選手と本塁打王を争ったスペンサー選手(阪急)は「ノムラは狭い球場を本拠地にしているからラッキーボーイだ」としばしば皮肉を言っていた。その大阪球場が昭和47年の開幕前に拡張された。親会社の南海電鉄・難波駅改修工事に伴い大阪球場の左翼スタンドをプラットホーム上に移動させる必要があり、左翼フェンスを後方に7.62mずらし、ポール際に高さ5.5mのフェンスを設けることになった。これにより " 大阪球場ホームラン " と揶揄されていた短距離本塁打は姿を消すこととなった。

前年の昭和46年には65試合で166本(1試合平均 2.6本)だったのが110本に減少した。その後も大阪球場の本塁打数は年々少なくなっている。昭和48年・81本、49年・98本、50年・70本(各65試合)、51年は61試合で61本。これは1試合平均1本となり改修前の半減になった。野村選手の本塁打数が改修後に35本➡28本➡12本➡28本➡10本と減っていったのも年齢による衰えもあろうが、球場が広くなったのも要因として大きいのではないか。だが野村本人は「打者野村にはマイナス要因だが、捕手野村にとっては球場が広くなったのはプラスの方が大きい」と。確かに改修前後の被本塁打数は179本➡116本、チーム防御率も4.27➡3.48と改善した。


多産型川崎球場の本塁打収支決算
それでは最も本塁打が出やすい球場はどこなのか?それは江本投手が初被弾された川崎球場である。昨年は1試合平均3.4本。今年も現在まで3.1本と本拠地球場第1位である。川崎球場で本塁打が出ない試合は少ない。今季これまで21試合が消化されたが本塁打ゼロだったのは4月15日の大洋中日戦と5月16日のロッテ近鉄戦の2試合だけである。逆に1試合に6本塁打が飛び交ったゲームが4試合もある。極めつけは4月5日から7日までの大洋巨人3連戦で、両軍合わせて何と16本塁打だった。

そんなことから大洋の選手に本塁打が多いのも頷ける。5月31日現在、セ・リーグのホームランダービートップは18本塁打で田代選手(大洋)とブリーデン選手(阪神)が並んでいる。川崎球場で7本塁打の田代に対しブリーデンは2本。甲子園球場では6本塁打のブリーデンに対し田代は0本だ。チーム本塁打も大洋は76本で近鉄やクラウンの37本の2倍以上。「阪神が200発打線ならウチは250発打線だ」と別当監督が豪語する程である。今のペースを保てば250発は無理でも200発を超えるのは難しくない。ただし大洋の本塁打量産を本拠地球場の狭さだけに結びつけるのは失礼なのかもしれない。

大洋は川崎球場で消化した19試合で32本塁打(1試合平均1.7本)だが、他球場でも25試合で44本塁打(同1.8本)と遜色ない。今季セ・リーグの本拠地球場で一番本塁打生産率が低い甲子園球場でも大洋は6本塁打している。神宮球場では4試合を消化して11本塁打。対戦相手のヤクルトは5本しか打っていないのだから大洋打線は場所を問わず猛打を発揮していると言える。福嶋選手のように本拠地の川崎球場では僅か2本なのに他球場では9本を放っている選手もいる。またヤクルトの大杉選手や広島のギャレット選手のような他球団の主力選手でも川崎球場で1本も打っていない選手もいる。選手によって球場に対する相性の良し悪しがあるのであろう。

他球団の選手にとっては川崎球場が本塁打の稼ぎ場所になっているのは否定できない。巨人などは6試合で14本塁打である。王選手が4本打っているのを筆頭に張本選手は8本塁打中3本。柴田選手も6本塁打中2本を川崎球場で稼いでいる。大洋では松原選手が11本塁打中4本、シピン選手が10本塁打中4本、山下大選手が9本塁打中6本を川崎球場で打っている。川崎球場での大洋の収支は32本塁打を打っているのに対して相手球団に33本塁打を許しており赤字決算である。いくら自軍が打っても相手にそれ以上打たれていたのでは地の利を生かしているとは言えない。



#136 本塁打が乱舞する極狭球場 - Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

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