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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 813 巨人ファンとアンチ巨人 ②

2023年10月11日 | 1977 年 



3連敗で阪神優勝が確定した。巨人の奇策は奈落の底への兆し。常道阪神に悠々たる余裕。

許してはならぬ巨人が流した罪悪
セ・リーグ前半戦の天王山といわれた甲子園球場での阪神対巨人戦で阪神は3連敗を喫した。阪神ファンにとっては悔しい思いの敗北ばかりだった。大リーグのような球団お抱えのアナウンサーではないのに何故か巨人の好機のみ1オクターブ高い声を張り上げるテレビ・ラジオのアナウンサー。巨人を褒め上げるだけでよい評論家たちは口を揃えて巨人のV2街道邁進ぶりを讃え、巨人系列のスポーツ紙は日本一になったかのような慶賀紙面に飾り立てた。だが私(伴野朗)は違う。決して野球の専門家ではないし諸氏の前に誇れる球歴もない一介のファンに過ぎないが平均的な常識を持った健全な一社会人だと自負している。

私は前々から巨人の横暴を決して許してはならないと考えている人間である。古くは南海・別所投手の引き抜き、国鉄・金田投手の移籍、更に立教大・長嶋選手を南海から横取りした一件。などなど、書いているだけで気分が悪くなる。各球団はおろかテレビ解説陣やスポーツ紙にOBや関係者を配した謀略、何故か巨人に甘い審判団、巨人の全てをバックアップする系列マスコミ勢。巨人がプロ野球界に流してきた罪悪は枚挙に暇がないほどだ。「巨人軍は覇者であらねばならない」という何の根拠もない筋の通らない命題の為にドラフト制実施前の強引きわまりない引き抜き、自分さえ良ければという身勝手さ。巨人の強さは作られた強さである。

巨人系列のマスコミは選手を必要以上に煽て上げる。碌に実績のない新人や移籍選手も例外ではない。エラーをしても敗戦投手になっても巨人系列のマスコミは責めない。乱打されて降板しても「堀内3回で沈む」で済ます。御用マスコミは巨人の強さの虚像を作り上げた。巨人OBの指導下にある他チームはこの虚像に怯え意識過剰の独り相撲を取り自滅し巨人に名を差占める。V9時代の川上巨人はこのように成長したと言ってよいだろう。先日の対阪神3連戦の巨人の強さは見事であった。私もそれは認めよう。では何故その3連戦に巨人の凋落の第一歩を見たのか説明しよう。


お調子野球
今シーズンの巨人の強さは「お調子野球」の強さである。言葉を換えれば「小手先野球」「誤魔化し野球」と言っていい。長嶋監督のお調子がつきについている感じである。先ず初戦の9回表二死後の代走・松本選手の二盗である。御用マスコミは長嶋監督の勝負度胸ともてはやしたが結果論でモノを論じるのはいかがなものか。そして次戦の小林投手の先発起用である。阪神の走塁ミスに助けられて完投したが、対阪神戦に実績のない投手起用に問題はなかったか。野球は確率の競技であり松本選手の盗塁や小林投手の起用は奇策と言える。当たれば戦果が一段と派手に見え、大向こうからの喝采も期待できるが奇策は奇策に過ぎない。

そしてツキはあくまでもツキであり、いつかは落ちる。いや、もう落ちかけている。その時の反動が怖いのである。確かに孫氏は「兵法とは詭道なり」と言った。つまり敵の意表を突くことである。だが間違っては困る。詭道とはしっかりした戦力、つまり常道に裏付けられてこそはじめて詭道となることを。野球における常道とは何か。投手陣である。今の巨人は決して投手力によって戦い、勝っているチーム状況ではない。必ずしっぺ返しが来る。かつて日本軍は劣勢な戦力を補うため対米開戦に真珠湾攻撃という奇襲をかけたが、この奇策の帳尻はすぐさま多大な負債となって帰ってきた事実を考えればよかろう。


3連敗の阪神に一味の違いを見た
私は学生時代にラグビーをやった。ラグビーは意外性はあまりないスポーツだ。実力のあるチームが99%勝つ。正月の日本選手権で早稲田大学は強力な新日鉄釜石のフォワード陣の前に蹂躙された。近年、早稲田大学は小手先のラグビーに走り過ぎているのではと危惧していた。ラグビーの常道はフォワード戦である。華麗なスリークォーターの攻撃は見ていて派手で気持ちが良い。だがフォワードがボールを奪うことこそラグビーの常道であり王道なのだ。賢明な早稲田大学関係者は今回の敗北で改めてフォワード戦の重要性を痛感したことだろう。

3連敗した阪神の優勝を確信した理由がここにある。吉田監督は初戦を落とし次戦も失っても尚且つ常道に徹したところに今年の阪神の余裕を感じた。ムードメーカーの掛布選手を欠き、3戦目にはラインバック選手が退いた。3試合全てあと一歩の詰めを欠いて敗れた。だが注目される阪神巨人戦とはいえまだ序盤戦である。ここで目先の勝利の為に小手先の奇策を弄するようでは今年の阪神に見込みはないと思っていたが、阪神ベンチは最後までチームが持つ常道の戦いに自信を持っているように感じた。3連敗の中に一味違う阪神を見たのだ。「まだ三度戦っただけやおまへんか。巨人さん入れ込んでましたなぁ」と吉田監督の独り言が聞こえてくるようである。

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