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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 577 ペナントレース総括・南海ホークス

2019年04月03日 | 1985 年 



無念の最下位。だが若手の活躍に光
なんと三塁手が年間9人も
杉浦新監督は就任早々、ドカベン香川選手の三塁コンバートを発表し、秋季キャンプではミットをグラブに替えて練習に明け暮れた。正捕手の座を吉田選手に奪われた香川の打棒をベンチに置いておくのは勿体ないと判断してのコンバートだったが、それはつまり南海の三塁手の人材不足を物語っていた。今季の南海は三塁手に9人の選手を起用した。しかし " 帯に短し襷に長し " で池之上選手の73試合が最多。以下、中尾65・山村52・立石13・藤本博6・河埜5・定岡4・小川2・ナイマン1と規定試合数(86試合)に達した選手はいなかった。しかも24失策はリーグ最多で踏んだり蹴ったりだった。

左腕投手不足に泣かされ続けて今季は遂に0勝に終わる
左腕不足は今季も続いた。過去5年の左腕投手の成績は昭和55年・5勝1敗、56年・1勝2敗、57年・1勝3敗、58年・2勝3敗、59年・2勝4敗、今年は遂に0勝2敗に終わった。今季は巨人から移籍した中条投手やオープン戦で3勝したプロ8年目の竹口投手に今季こそは左腕不足解消かと期待したが本番では勝てなかった。竹口は4月10日の近鉄戦に先発したが2回、5月5日のロッテ戦は初回で、いずれもKOされた。また中条は10月12日の阪急戦に先発したが初回4人の打者に4連続安打されてワンアウトも取れず降板した。

名門・南海の復活は新鋭の台頭にある!
打撃10傑を見ても南海の選手の名前は見当たらない。ようやく17位に打率.285 でナイマン選手が現れる。門田選手も打率.272・23本塁打と往年の姿からは見る影もない。だが穴吹前監督がベテラン選手に見切りをつけて、結果を度外視して若手選手を起用し続けてきた成果がようやく出始めてきた。規定打席不足ながらも5年目の山田選手は打率.296 、2年目の佐々木選手は打率.291 、同じく2年目の岸川選手は初めてのスタメン出場で初本塁打を放つなど結果を出した。また新人の湯上谷選手は遊撃手として打率.262 をマークした。彼ら若手が順調に育てば南海の復活も見えてくる。

番記者が選ぶベストゲーム
4月18日、対西武3回戦(西武)。先発は山内孝投手と西武が郭投手。山内はスライダー、シュートを駆使して左右を揺さぶり打たせて取り、一方の郭は持ち前の快速球でグイグイ攻めてお互いに相手打線を抑えて0対0のまま試合は9回へと進んだ。9回表、南海が二死満塁のチャンスで打者は高柳選手。しかし捕ゴロで無得点。その裏、山内は西武の攻撃を三者凡退に抑えて9回時間切れで引き分けとなった。山内は127球、郭は137球と両者譲らず投手戦にピリオドが打たれた。試合後「生涯最高のピッチング」と山内が晴れ晴れとした表情で語ったのが印象に残る試合だった。

ドジで呑気で慌て者。加藤クンは本当に困った若殿様
周囲から若殿と呼ばれている加藤投手。端正なマスクで時代劇を演じさせたら万事に有能な若侍役がピッタリと似合いそう。しかし実際の加藤は意外とドジなのである。7月7日の日ハム戦(後楽園)に先発した加藤は矢野投手の救援を仰いだが8回1/3を12安打・6失点ながら4勝目をマークした。実はこの試合で加藤が履いていたスパイクは打撃投手の川根さんのものだった。宿舎を出る際に自分のスパイクを忘れてきたのだ。試合前のウォームアップはスパイクは履かないので気がついたのはブルペンに入ってからだった。用具係の金岡さんに宿舎まで取りに行ってもらったが試合開始には間に合わず、自分のスパイクを履けたのは2回裏のマウンドからだった。

他にもベンチ裏にグローブを置き忘れて河村投手コーチに「商売道具を粗末にする奴は大成しないゾ」と叱責された事も二度三度。スミマセン…と謝るが反省しているとは思えない。またベンチ前で円陣を組んでミーティングをするのが試合前の決め事なのだが、加藤はノンビリとトイレで用を足していた。ミーティングが終わる頃に何食わぬ顔で円陣に加わり事なきを得た。だがこの世の中、いつも上手くいく訳ではない。7月5日、ロッテ戦のため大分への移動中に体調が悪くなった。数日前から風邪気味で加えて飛行機嫌いもあって胃炎になってしまった。このロッテ戦で登板する予定だったので首脳陣に報告しなければならず、恐る恐る穴吹監督に体調不良を告げると大目玉を喰らってしまった。

「お前はプロ野球選手としての自覚がなってない。体調の維持管理は我々の基本中の基本だ」と一喝され先発を剥奪された。そして次の登板機会が前述の日ハム戦だったのだが、その試合でも失態を演じてしまったのだ。その後も悪いことが重なる。初めてオールスター戦に選ばれ、良い所を見せようと普段以上に力を入れて投げたのが原因で右肩を痛めてしまった。周囲の心配をヨソに本人はそれほど深刻なものではないと楽観視していたが、球宴明けから日にちが経っても右肩痛は癒えず勝ち星は伸びなくなった。結局、今季は9勝11敗1S・防御率4.09 で高卒プロ2年目にすれば充分合格点だが、右肩さえ痛めなければもっと勝てた筈である。本物のお殿様になるにはもう少ししっかりしてもらわないと困ります。

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