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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#155 江夏⇔高橋直 トレードの泥沼化 ②

2011年02月09日 | 1981 年 
  


一方の高橋も日ハムと揉めていました。高橋はシーズン中に球団批判をして罰金10万円を課せられ
周囲ではトレード要員と噂されていましたが10月19日に大沢監督と話し合い、残留が決定しました。
11月5日には翌年用のチームカレンダーの撮影も済ませて、高橋の移籍騒動は決着したはずでした。
ところが11月11日の午前9時、横浜市日吉の自宅で球団から広島へのトレードを電話で告げられて
「裏切られた」が最初の感想だったそうだが、かねてよりセ・リーグ移籍を希望していたので「望まれて
行くのなら」とトレード自体は了承していたのでしたが・・・

表面的には報道されていないが、トレードされる選手へ密かに裏金が支給されている事を他チームの
選手から聞かされていた高橋は「自分はチーム生え抜きのエースとして尽くしてきた」というプライドも
あり、広島へ行くにあたって当然『功労金』が出ると思っていたが野球協約には功労金の事など一言も
触れておらず、もし球団が公然と金を出したら協約違反である。日ハムは高橋との下交渉で功労金の
支給には言及しなかった。

心の整理がついた11月22日、「納得できる条件を出してくれるのなら」と球団の出頭要請に応じた
高橋は 「功労金は幾ら出すのか」 「コーチとして将来復帰できる約束を」 と切り出したが球団側の
答えは「全く考えてない」とにべもないものだった。逆に「協約によりトレード通告には選手は100%
従わざるをえない」とルール(野球協約)の絶対性を主張し両者の対立内容が表沙汰になりました。



聞き手  もつれた理由は何ですか?
高 橋  一言で言ったら担当の小島さん(球団取締役)が日本の球界の実態が分かっていないという事だろうね
      全て大リーグ式にやろうとするでしょう?日本とアメリカでは違うという事が分かってない

聞き手  具体的には?
高 橋  トレード通告を受けた時に「条件は?」と聞いたら「そんなものは何もない」そして「協約・協約」の一点張り
      下交渉なら電話で済むのに「球団事務所まで来い」と高圧的。日本ではビジネスライクな対応は無理ですよ

聞き手  高橋さんの言う条件とはズバリ功労金ですか?
高 橋  僕の場合は他のトレードとは違う 「江夏がどうしても欲しい。江夏と釣り合うのは高橋直しかいない。チームの為に
      広島へ行ってくれ」 いわば一種の迷惑料ですよ。12年もエースとしてやってきた選手と2軍の選手とでは扱いが
      自ずと違って当たり前でしょ。交渉を何度か重ねるうちに「200万円」という具体的な額が初めて提示されたんです
      最初は引っ越し代も出さないと言っていたんですよ

聞き手  野球協約には功労金などという規則は無いですけど?
高 橋  協約が万全でない事は江川問題でハッキリしたでしょ。契約更改でタイトル料なんて項目は無いけど現実にはまかり
      通っているじゃないですか。大物トレードには常に裏金が動いてますよ、協約はあくまでも目安であって現実とは違う
      なんて事はプロ野球選手全員が知っていますよ

聞き手  お金にこだわり過ぎると高橋投手のイメージが悪くなるのでは?
高 橋  現実的に関東から広島へ移るには相当なお金がかかりますよ。横浜の自宅も手放すわけにはいかないから、たまに
      上京して手入れをしないとけない。僕が要求しているのは当然貰っていいお金だと思っています。日ハムから広島へ
      戻った佐伯投手が「日ハムへトレードされた時はカープが引っ越し代を出してくれたし、今回のカープへの出戻りでも
      カープが費用を出してくれた」と言っていましたよ

聞き手  明るい展望はないですか?
高 橋  中途半端に歩み寄っても自分のプライドが傷付くだけだし僕にも意地があるから、とことんやるつもりです。でも野球を
      辞める気は全く無いですよ、スッキリした気持ちで広島へ行きたいですね



年が明けて両者は何度か交渉を重ねて日ハムは「引っ越し代50万円を含めて餞別として250万円」を
提示したが高橋の答えは「NO」 「1千万円はプロの世界でいう誠意だ」と一歩も引かなかった。江夏の
入団発表会見を1月10日に開くと告知していた日ハムは事態解決に焦り出し、1月7日に再交渉をして
「250万円に若干の色をつける」と譲歩したが高橋は折れず1月10日現在、両者の対立を緩和させる
材料は全く無い。野球協約上、リーグ会長に調停を申請できるのは契約問題に限られておりトレードの
紛糾に関する規定条項は無く、さらに日ハムは野球協約の絶対性を盾にしているだけにリーグ会長に
解決を委ねるわけにもいかず手詰まり状態なのである。  ・・・つづく 




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