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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 619 週間リポート・近鉄バファローズ

2020年01月22日 | 1976 年 



あと3勝、いや4勝せなあ
2年連続20勝と通算200勝へ意欲的な鈴木
エース・鈴木投手が快調に白星を重ねている。目下6連勝中の17勝。2年連続20勝が目前であるが17勝目の対太平洋戦は冷や汗ものだった。打線の援護で7点のリードを貰って気が抜けたのか後半に崩れて5失点し、完投目前の9回に柳田投手の救援でどうにか白星を手にした。普段は立て板に水の鈴木もこの日は「あんな無様な投球をしてたら20勝なんて無理。球にキレがなかったしコントロールもバラバラ。打線の援護が無かったらとっくにマウンドを降りていた。情けないわな」とボソボソ声で反省しきり。このところ投球内容が良かっただけにショックも大きい。「柳田に迷惑をかけた。彼にはいつか借りを返さなくちゃね」と柳田に気を遣う。

鈴木は入団2年目の昭和42年に21勝をマークして以来、翌年以降も23・24・21・21勝と5年連続で20勝投手になった。だが昭和47年から急激に勝てなくなった。特に昭和48年は11勝とエースの称号に相応しくない成績で限界説まで囁かれた。それまでの力投型から多彩な変化球を駆使する技巧派への転向に成功し、昭和50年には22勝を上げ4年ぶりに20勝投手に返り咲いた。それだけに今季は2年連続の20勝投手を目標にしている。「昨年の成績が本物かどうか懐疑的な周りの目を意識している。何としても達成したい」と執念を燃やしている。20勝の壁を越えれば今季中にも通算200勝に手が届く。

今季21勝目が通算200勝となり個人的には大きな目標達成となるが、チームのことを考えると心が痛む。現在のパ・リーグ後期のペナントレースは首位争いが混沌としていて目が離せない。ロッテ、阪急、南海が横一線で並び日替わりで首位が入れ替わる。エースとしてその争いに加われない悔しさが鈴木にはあるのだ。「後期のスタートで勝てなかったのが本当に悔やまれる。僕自身あの時に今のようなペースで勝てていればウチも首位争いに加わっていた筈だ。あの時の足踏みが無ければ…」とエースとしての責任を痛感している。全ては後の祭りだが個人記録の20勝と通算200勝の目標は残っている。「あと3つ、いや4つ勝つだけです。例え消化試合と言われても力の限り投げ続けたい」と語気を強めた。



自信あるのはフロントだけ?
ファンも小首かしげる地味なドラフト指名
「6番目のクジ順にしてはまあまあの選手が指名できたと思っています」と中島スカウト部長は満足そうに話すが、ここ最近のドラフトは地味な選手の指名が続いている。かつては甲子園のアイドル・太田幸司や春のセンバツ優勝投手の仲根正広などを指名して話題となった近鉄だが、一昨年は福井(松下電器)、昨年が中野(東海大二)、そして今年も久保(柳川商)と1位指名にしては地味だ。フロント陣は「ネームバリューよりも実力派を狙った」と言うがファンにしてみればそう楽観はしていられない。「福井の時だって球団は自信満々だったのにまるで使い物にならんでしょ。中野なんて今どこで何をしているのやら」と呆れ顔。そこでフロント陣が自信を持って?指名した6人を紹介すると
 
   ①久保康生(18)投手 柳川商
   ②石原修治(18)遊撃 我孫子
   ③応武篤良(18)捕手 崇 徳
   ④渡辺麿央(20)投手 日鉱佐賀関
   ⑤山本和範(19)投手 戸畑商
   ⑥市川和正(18)捕手 国 府

なんとも地味な顔ぶれである。しかも1位に指名された久保は近鉄に対して好印象を持っていない。「巨人か広島に行きたかった。近鉄?好きも嫌いもありません。ここが好き、ここが嫌いという判断材料が無い。興味が無いんです(久保)」と何とも素っ気ない。また久保の父・義行さんも「こんなことを言ったら失礼ですけどセ・リーグの球団に指名されたら万々歳だったんですけどね」と落胆を隠さない。だが久保はプロ一本に絞り進学や就職の準備をしていなかったので近鉄入りはほぼ確実だ。

一方で中島スカウト部長が今回のドラフトで最も期待しているのが2位指名の石原だ。中央球界では無名の千葉県我孫子高で走攻守三拍子揃った大型遊撃手。この選手の話になると中島スカウトは「素晴らしい選手ですよ。直ぐに一軍で活躍できる逸材です」と目を細める。この石原も入団はほぼ間違いない。だが3位指名の応武と5位指名の山本は進学を希望している為に交渉は難航が予想される。ただし今現在は各選手とも指名の挨拶程度で本格的な交渉には至っていないので今後の条件提示など具体的な交渉が始まると情勢は変わる可能性は残っている。11月下旬には中島部長らスカウト陣が東奔西走に明け暮れるようになる。



トレード話はもうお断り
古傷治し来季に汚名返上を期す神部
「古傷を徹底的に治してすっきりしたよ。もう再発する心配はないよ」と神部投手は大分・別府にある帯刀マッサージ治療院で10日間による施術を終えて帰阪した。神部といえば腰痛や肘痛を思い浮かべるほど怪我に悩まされている。好投手と評価されながら肝心なところで怪我で満足な投球が出来ない悲運に泣かされてきた。そんな神部にトレード話が幾つも寄せられた。「治療は勿論だけどトレードの話題を聞かされるのが嫌で大阪を離れたんだ」と九州行きの理由を語った。神部は西本監督の信頼厚く2年連続で開幕投手を任された。しかし結果はいずれも無残なKO。

「トレード話が出るのは成績を残していないからでしょう。勝てていればそんな話も来なくなると思います。モノは考えようでトレード話はあるのは他球団は自分を評価してくれている証拠でもあると前向きに考えていきたい。でもやっぱり来季は好成績を残してトレード話は封印したいですね」と、治療の効果に意を強くしている神部。来季の目標を問われると「リーグ優勝をして日本シリーズに出ること。個人的には防御率2点台、15勝を目指します」と明言した。期待されながらその期待に応えられなかった今季の神部。来季こそその真価が問われる時である。

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