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■中川裕孝展 (1月23日まで)

2011年01月10日 21時40分56秒 | 展覧会の紹介-現代美術
Hirotaka Nakagawa exhibition in Abashiri Museum of Art
from 2010 November 20 to 2011 January 23
9:00am-5:00pm
holiday:every Monday,National holiday,December 31~January 5

Hirotaka Nakagawa's "Girl Friend"series are made by denim clothes,but they look like photograph.
Images that seeing from far between from near are surprise us.

He was born in 1962,Kanagawa,Japan.
He studied textile in Musashino art university.
He uses machine for home handmade when makes his works.
(つたない英語で失礼しました)

 中川裕孝さんの作品のうち、デニムを使った「Girlfriend」シリーズと「SUNDAY」シリーズ計30点を並べた展覧会。
 遠くからだと水着姿の若い女性の写真に見え、近づいてみると、濃淡のあるデニム地が縫い合わせてある布に見える。こんなに布の存在感があらわなのに、どうして離れてみると写真みたいなんだろう? 誰にでも不思議に感じられる作品だと思う。




 こんなに写真みたいに見えるのだから、さぞかし細かくグラデーションをつけているのだろうと思いきや、大きな作品でもせいぜい、濃い藍色の布から白っぽい布まで10種ほど。小品だと、濃い色と薄い色の2種類の布しか使っていないものもある。
 しかも、赤く細い糸があちこちにほつれていたり、ジーンズの金属ボタンがついていたりする作品もあって、離れて見たら写真っぽく感じられるのが、不思議でしかたがない。
 作者の言葉に

「近づいてみたときの布の物質性(触覚)と離れて見た時の写真のようなリアリティー(視覚)を楽しんで頂けたらと思います。」


とある。

 武蔵野美大でテキスタイルを学んだ作者は、これらの作品を、業務用ではなく、一般の家庭用ミシンで制作しているという。

 …と、ここで終わってもいいのだが、気のついた点をあとふたつばかり挙げておこう。

 ひとつは題材。
 ビキニの水着や下着姿の若い女性ばかりである。
 「いやらしい」というほどではなく、グラビアアイドル的にはむしろ「健康的」と形容されそうな姿ではあるが、あまり美術館ではお目にかかる機会の多くないタイプのイメージだと思う。

 西洋美術の歴史では、裸婦像はおびただしく描かれてきたし、いまでも西洋画の習得課程の一つとして位置づけられているだろう。
 そのことの意義、是非、政治性は、ここではふれないことにする。
 ただ、いかにも油絵らしいストロークで描かれた裸婦だと(たとえばルノアール)、いやらしさがなくて、美術館にふさわしい感じがするのに、どうして、水着のグラビアアイドルだと美術館の壁面にふさわしくないような気がするんだろう。

 20世紀後半以降、おもにポップアートの台頭により、ファインアートと大衆芸術の差はかなり接近してきた。
 ファインアートが大衆芸術のイメージを次々と取り入れ、その領野を拡張してきたからだ。
 しかしなお、両者の間には、なんとなく隔たりがあるんだな~と気づかせるのも、中川さんの作品の意義なのかもしれないと思ったりする。

 もうひとつ。
 「SUNDAY」シリーズは、丸か四角の形状をしている。丸い作品は、学芸員の方のお話によると、のぞき穴から見たようなイメージらしい。なるほど。
 しかし、Girlfriendシリーズは、人物を切り抜いたような形をしている。
(裏側にマジックテープがついていて、それをガンタッカーで壁に固定している由。ガンタッカーはホチキスの親玉みたいなやつです)
 人間を描写するのに、人間の形をした作品というのは、彫刻ではきわめて普通のことだが(例外はレリーフ)、平面作品、絵画では、めったにない。
 大半の絵画は正方形か長方形の支持体に描かれているのだ(たまにひし形や円形などがあるけれど)。

 人物の形に切り抜かれた平面作品を見ていると、学校の卒業アルバムとかPTA広報のグラビアページで、ピースサインで写っている生徒たちの写真を思い出す。
 逆に言えば、写真展の出品作や新聞・雑誌に載っている写真で、人の形をした写真というのはほとんどないわけで、いかにわたしたちが、旧来のしきたりにとらわれているかの証左ではないかと思うのだ。 


2010年11月20日(土)~11年1月23日(日)9:00~5:00 月曜・祝日・年末年始(12月31日~1月5日)休み
網走市立美術館(網走市南6西1)
高校生以上200円、小中学生100円(いずれも常設展観覧料込み)。市内の小中学生は土曜無料



・JR網走駅から1.2キロ、徒歩16分
・網走バスターミナルから330メートル、徒歩5分

□武蔵野美大テキスタイルデザインのページ http://www.musabi.ac.jp/koude/textile/staff/nakagawa/top.html

輪島進一展(2007年)=前回の網走市立美術館行き 


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
光るモダニズム (根保孝栄石塚邦男)
2011-02-22 21:08:10
いいセンスの作家ですね。洗練されたインターナショナルが心に落ちてきます。
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若い才能後押しを (根保孝栄石塚邦男)
2011-02-26 13:20:13
二十年前まで二十年、新聞で美術批評、文芸批評やってまして、札幌の公募展中心に観て回ってまして、今の七十以上の画家、美術関係者は皆知ってますが、批評止めてから20年美術関係一切観てきませんでした。でも、インターネットで覗くようになって、新しい才能に触れますと、また見歩きたくなっています。20代、30代でキラキラした才能出てますね。後押ししたくなりました。
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根保孝栄石塚邦男さんこんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2011-02-26 21:31:03
そうですか~、どうりでお詳しいわけですね。
わたしが展覧会を見始めたのは1996年からで、まだまだわからないことだらけです。
今後ともよろしくお願いします。
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