「ゆれてるよ、
ゆれてる…お父さん!
ゆれてるよ」
リューゴは,
もう夢中で歓声を上げています。
お父さんはリューゴを振り返ると、
ニヤリと笑いました。
「お父さん、
今度はリューゴの番だよ。
ちゃんと約束してたんだからね」
「ああ」
お父さんは,
大きく頷きました。
そうなんです。
お父さんは,
去年の夏に約束してくれたのです。
「リューゴが一年生になったら、
『ゆるぎ岩』を思いっきり押させてやるぞ!
でも、
ちゃんといい子にならないと、
この岩は絶対に揺れてくれないからな。
よーく覚えておけよ、
忘れないように」
だから、
リューゴは一生懸命に優しいいい子になろうと,
頑張って来たのです。
「この『ゆるぎ岩』には、
お父さんがまだ子どもだったころよりズーッとズーッと,
昔から不思議な言い伝えがあるんだ」
約束をした日、
お父さんは,
こう話しだしました。
リューゴはお父さんの目を見つめて、
真剣に聞きました。
「もう何千年も昔のことだ。
とても偉いお坊さんがこの村にやって来たんだ。
空海ってお坊さんだけどな、
この村にとても不思議な力で、
すごい奇跡をいろいろ与えてくれたんだ」
「へえ、
不思議な力?
奇跡って?
どんな?」
リューゴは目を真ん丸に見開いて、
お父さんをジーッと見つめたまま尋ねました。
お父さんは嬉しそうに説明してくれました。
「お坊さんは村の人たちにこう言ったんだ。
この岩は、
いい心の持ち主ならば、
ちょっと押すだけで揺れるが、
悪い心の持ち主は、
どんなに力をこめて押そうとも、
決して揺れない。
びくともしないだろうってね」
「フーン。
不思議な力なんだ」
「そうなんだ。
だから、
村の人たちはいつ押しても、
岩がちゃんと揺れてくれるように、
いつも心がきれいで優しくいられたんだってさ。
おしまい」
お父さんの話は、
リューゴの心の中にしっかりと残りました。
それで、
いつも優しくきれいな心でいようと、
努力をしてきたのです。
だから『ゆるぎ岩』は揺れてくれるはずです。
でも、
実はリューゴには不安もあります。
だって、
お母さんのお手伝いをしなかったり、
駄々をこねて困らせてみたりと、
悪い子の時の方が多かった気がします。
(もしも『ゆるぎ岩』が揺れなかったら、
どうしよう?)
リューゴは、
小さな胸をドキドキさせました。
(つづく)
ゆれてる…お父さん!
ゆれてるよ」
リューゴは,
もう夢中で歓声を上げています。
お父さんはリューゴを振り返ると、
ニヤリと笑いました。
「お父さん、
今度はリューゴの番だよ。
ちゃんと約束してたんだからね」
「ああ」
お父さんは,
大きく頷きました。
そうなんです。
お父さんは,
去年の夏に約束してくれたのです。
「リューゴが一年生になったら、
『ゆるぎ岩』を思いっきり押させてやるぞ!
でも、
ちゃんといい子にならないと、
この岩は絶対に揺れてくれないからな。
よーく覚えておけよ、
忘れないように」
だから、
リューゴは一生懸命に優しいいい子になろうと,
頑張って来たのです。
「この『ゆるぎ岩』には、
お父さんがまだ子どもだったころよりズーッとズーッと,
昔から不思議な言い伝えがあるんだ」
約束をした日、
お父さんは,
こう話しだしました。
リューゴはお父さんの目を見つめて、
真剣に聞きました。
「もう何千年も昔のことだ。
とても偉いお坊さんがこの村にやって来たんだ。
空海ってお坊さんだけどな、
この村にとても不思議な力で、
すごい奇跡をいろいろ与えてくれたんだ」
「へえ、
不思議な力?
奇跡って?
どんな?」
リューゴは目を真ん丸に見開いて、
お父さんをジーッと見つめたまま尋ねました。
お父さんは嬉しそうに説明してくれました。
「お坊さんは村の人たちにこう言ったんだ。
この岩は、
いい心の持ち主ならば、
ちょっと押すだけで揺れるが、
悪い心の持ち主は、
どんなに力をこめて押そうとも、
決して揺れない。
びくともしないだろうってね」
「フーン。
不思議な力なんだ」
「そうなんだ。
だから、
村の人たちはいつ押しても、
岩がちゃんと揺れてくれるように、
いつも心がきれいで優しくいられたんだってさ。
おしまい」
お父さんの話は、
リューゴの心の中にしっかりと残りました。
それで、
いつも優しくきれいな心でいようと、
努力をしてきたのです。
だから『ゆるぎ岩』は揺れてくれるはずです。
でも、
実はリューゴには不安もあります。
だって、
お母さんのお手伝いをしなかったり、
駄々をこねて困らせてみたりと、
悪い子の時の方が多かった気がします。
(もしも『ゆるぎ岩』が揺れなかったら、
どうしよう?)
リューゴは、
小さな胸をドキドキさせました。
(つづく)