「さあ替わろうか。
こっちへ来てごらん」
お父さんは、
『ゆるぎ岩』から手を離して、
言いました。
リューゴは緊張してコチコチになりました。
だから「うん」と返事をしたつもりなのに、
実際は声が出ていません。
「うん?
リューゴ、
どうかしたのか」
お父さんも、
リューゴの様子がいつもと違うのに、
気がついたようです。
「……お、
お父さん…?」
やっと声が出ました。
「ぼく……もう押さなくていいから……」
「あんなに楽しみにして、
待っていたじゃないか」
「で…でも……きょうはいいんだ、
もう」
お父さんは、
「ハハーン」と気が付きました。
「リューゴ、
怖いんだろ?
もし揺れなかったら、
悪い子だってばれちゃうって」
「怖くなんかないよー!
ぼく、
一年生なんだぞ。
それに…それに、
ぼく、
悪い子じゃないからね」
リューゴはむきになって、
言い返しました。
「そうだそうだ。
リューゴはもう一年生だもんな。
それに、
そんなに悪い子じゃない」
いい子っていうところを、
お父さんは少しふざけて言いました。
そして急に真面目な顔になりました。
「実はな、
リューゴ。
お父さんも子供の頃、
そうだ、
ちょうどリューゴと同じ一年生だった。
初めて『ゆるぎ岩』に連れて来て貰ったんだ。
『ゆるぎ岩』を前にしたら、
なぜかブルブル震えだして、
手がだせなくなってしまったんだ」
「ほんとう?」
「ほんとうさ。
いまにも倒れてきそうな気がしたし、
押しつぶされたらどうしようって思ったんだ。
足元だって、
崖になってて、
なんか目がクラクラしてさ……」
リューゴはがっかりしました。
(ボクが怖いのは、
いくら懸命に押しても、
『ゆるぎ岩』がびくともしなかったらって、
……動いてくれなかったら、
ぼくは悪い子になっちゃうんだぞ)
「よーし!
お父さんがリューゴの身体を、
支えといてやるから大丈夫だ、
な。
さあ安心して、
思い切り押してみろよ」
お父さんはリューゴの肩に、
そーっと手を置きました。
仕方ありません。
こうなったらやるしかないようです。
リューゴは勇気を出して、
一歩前に足を踏み出しました。
目の前にゴツゴツした岩肌が迫ります。
思わずリューゴは目をつぶりました。
「よし!
さあいくぞー!
お父さんはリューゴの腰に手を当てました。
お父さんの力強さが伝わってきます。
リューゴは目を開けました。
もう覚悟は出来ました。
両手を岩肌に向けて突き出しました。
岩肌の感触が……!
「いいぞ。
よしよし、
いいか岩肌にペンキで書いてある手形に、
掌を合わせてごらん」
リューゴにもう迷いはありません。
『ゆるぎ岩』は、
絶対に揺れてくれるんだと信じました。
あんなに頑張っていい子になってきたんだ。
『ゆるぎ岩』はきっと知ってくれているはずです。
偉いお坊さんがプレゼントしてくれた、
奇跡の御神体なのだから。
リューゴは、
手を前に突き出しました。
こっちへ来てごらん」
お父さんは、
『ゆるぎ岩』から手を離して、
言いました。
リューゴは緊張してコチコチになりました。
だから「うん」と返事をしたつもりなのに、
実際は声が出ていません。
「うん?
リューゴ、
どうかしたのか」
お父さんも、
リューゴの様子がいつもと違うのに、
気がついたようです。
「……お、
お父さん…?」
やっと声が出ました。
「ぼく……もう押さなくていいから……」
「あんなに楽しみにして、
待っていたじゃないか」
「で…でも……きょうはいいんだ、
もう」
お父さんは、
「ハハーン」と気が付きました。
「リューゴ、
怖いんだろ?
もし揺れなかったら、
悪い子だってばれちゃうって」
「怖くなんかないよー!
ぼく、
一年生なんだぞ。
それに…それに、
ぼく、
悪い子じゃないからね」
リューゴはむきになって、
言い返しました。
「そうだそうだ。
リューゴはもう一年生だもんな。
それに、
そんなに悪い子じゃない」
いい子っていうところを、
お父さんは少しふざけて言いました。
そして急に真面目な顔になりました。
「実はな、
リューゴ。
お父さんも子供の頃、
そうだ、
ちょうどリューゴと同じ一年生だった。
初めて『ゆるぎ岩』に連れて来て貰ったんだ。
『ゆるぎ岩』を前にしたら、
なぜかブルブル震えだして、
手がだせなくなってしまったんだ」
「ほんとう?」
「ほんとうさ。
いまにも倒れてきそうな気がしたし、
押しつぶされたらどうしようって思ったんだ。
足元だって、
崖になってて、
なんか目がクラクラしてさ……」
リューゴはがっかりしました。
(ボクが怖いのは、
いくら懸命に押しても、
『ゆるぎ岩』がびくともしなかったらって、
……動いてくれなかったら、
ぼくは悪い子になっちゃうんだぞ)
「よーし!
お父さんがリューゴの身体を、
支えといてやるから大丈夫だ、
な。
さあ安心して、
思い切り押してみろよ」
お父さんはリューゴの肩に、
そーっと手を置きました。
仕方ありません。
こうなったらやるしかないようです。
リューゴは勇気を出して、
一歩前に足を踏み出しました。
目の前にゴツゴツした岩肌が迫ります。
思わずリューゴは目をつぶりました。
「よし!
さあいくぞー!
お父さんはリューゴの腰に手を当てました。
お父さんの力強さが伝わってきます。
リューゴは目を開けました。
もう覚悟は出来ました。
両手を岩肌に向けて突き出しました。
岩肌の感触が……!
「いいぞ。
よしよし、
いいか岩肌にペンキで書いてある手形に、
掌を合わせてごらん」
リューゴにもう迷いはありません。
『ゆるぎ岩』は、
絶対に揺れてくれるんだと信じました。
あんなに頑張っていい子になってきたんだ。
『ゆるぎ岩』はきっと知ってくれているはずです。
偉いお坊さんがプレゼントしてくれた、
奇跡の御神体なのだから。
リューゴは、
手を前に突き出しました。